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第2章:シエルの捜索
2-9.水浴び
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*****
一夜明けて。
シエルが目を覚ますと、すぐ目と鼻の先に女の白い顔があった。
アメジストの瞳がシエルの顔をじっと見つめている。
「うわぁあぁ……っ!」
驚いたシエルが思わず跳ね起きると、そんな彼の様子を見た女が面白そうにニコリと笑った。
「よく眠れましたか?」
「あぁ、ぐっすり眠らせてもらったよ。ありがとう」
昨日、一日中歩き回って疲れ果てていたシエルの身体も、充分な睡眠でだいぶ回復していた。
「そうですか。それは良かった」
「……この小屋で一度たりとも目を覚ますことなく、熟睡した男の人は初めてです」
「朝ごはん、召し上がってください」
朝ごはんも肉だった。
干し肉と木の実が入った濃厚なスープ。
昨日の味付けにも感じたが、胡椒のようなスパイスが効いていて非常に食欲をそそられる。何杯でも食べられそうだ。
肉も美味い。
脂は程よく乗っているが、変にギトギトしていないせいか、口の中にしつこい後味が残らない。食感も最高で、口の中でホロホロと柔らかく繊維がほぐれていき、食べやすかった。
昨夜のウサギ肉とは違うようだが、シエルが今まで食べたことのない肉だった。スープに使われているスパイスとの相性も抜群だ。
「これは、何の肉だ?」
シエルが尋ねると、女が満面の笑みを浮かべて答えた。
「内緒です。……でも、私の一番好きな肉です」
朝食を済ませたシエルが戸外に出ると、昨日とは打って変わって気温が上がっていた。
「暑いな……」
額にじっとりと浮かぶ汗を拭う。
森の中では、生い茂る木立に阻まれて太陽の光はほとんど届かない。それにも関わらず、森全体が湿度の高い籠もった熱気に覆われており、まるで蒸し風呂のような熱さだ。
今日もレオポルトを捜す。
レオポルトを連れて帰らなければ……それが叶わなくとも、せめて遺体を見つけ、形見の一つも持って帰らないことには、サーシャを救うことはできないだろう。
「よしっ!」
シエルは気合いを入れるために自分の両頬を叩いた。
「それにしても暑い……。それでも夜になると、また昨夜みたいに冷え込むのか?」
シエルの住む村からそれほど離れていないというのに、全く勝手の違う気候に戸惑ってしまう。
これも森の恐ろしさの一つなのだろうか?
「そうだ。今のうちに」
シエルは泉の前まで行くと、汚れた服を脱ぎ捨てて、裸になった。そのまま、水の中へと足を入れる。
チャポン……。
冷たい。
大気はじっとりとした熱気に満ちているというのに、泉の水はしんから冷たく、澄んでいた。
シエルの足先に無数の小さな魚たちがまとわりついてくる。水底のそんな様子もはっきりと見えた。
泉の中央へと足を進めると、だんだんと深さが増していく。
シエルは腰が隠れるほどの場所まで来ると、身体を洗った。
森を彷徨っているうちに自分でも気づかない細かな傷があちこちできていたらしく、冷たい水が染みて、その度にシエルの顔が歪んだ。
シエルが傷を避けながら、水浴びをしていると――
「お背中、お拭きしましょうか」
ふいに背後から声をかけられ、シエルは慌てて振り返る。
そこには女が立っていた。
ニコニコと嬉しそうに笑っている。
「いつのまに……!?」
水の中を歩いてくれば、音もするし、水も揺れるはずだ。
なのに、シエルは女がこんなに近くまで来ていたことに、まったく気づかなかった。目の前で笑う女を不思議な思いでまじまじと見つめると、女が顔を赤らめた。
女は白い肌着一枚しか身につけていないようだった。それが水に濡れて、ぴたりと身体に張りついている。女は臍まで水に浸かっていたが、滑らかな身体の曲線がありありと浮かび上がっていた。胸の先の薄い紅色まで透けている。
シエルは慌てて女から目を逸らした。
背を向けたシエルの肩に、女の手が触れる。
「あ……」
シエルの身体から力が抜けていく。
女は布を浸して水を含ませると、シエルの背中に当てた。
サワサワと羽のように優しく撫でたかと思うと、今度は筋肉を揉み込むように強く摩られる。
痒いところに手が届くように、女はシエルの触ってほしいところを的確にほぐしていく。
「あぁ……」
あまりの心地良さに、シエルの口から恍惚の声が漏れる。
たまに女の湿った呼気が背中に首筋に触れて、シエルはザワザワと自分の血が騒ぎ立つのを感じずにはいられなかった。
「傷だらけじゃありませんか……。今日はゆっくり休まれてはいかがですか?」
女はそう言いながら、ゆっくりと手を下ろすと、水に浸かっているシエルの尻をムギュムギュと揉みほぐしていく。引き締まった尻肉が女の手によって弛緩する。
「んぁ……あ、そこは……」
肛門の入口にまで女の指先が入り込んできた。そんなところ、今まで他人に触れられたことなんて一度もなかった。
シエルは初めての感覚を前にどうしていいか分からない。
しかし、こんなことをしている場合でないのだ。
頭の隅で警鐘が鳴る。
この森に来た目的は何だった?
早くレオポルトを捜しにいかなくては……。
シエルは今までに感じたことのない快感に流されそうになる自分を叱咤する。
自分を奮い立たせるために、シエルの帰りを待っているであろうサーシャの姿を思い浮かべた。
しかしそれは逆効果だった。
女から受ける刺激とサーシャへの思慕が相まって、シエルの股間が膨張していく。
一夜明けて。
シエルが目を覚ますと、すぐ目と鼻の先に女の白い顔があった。
アメジストの瞳がシエルの顔をじっと見つめている。
「うわぁあぁ……っ!」
驚いたシエルが思わず跳ね起きると、そんな彼の様子を見た女が面白そうにニコリと笑った。
「よく眠れましたか?」
「あぁ、ぐっすり眠らせてもらったよ。ありがとう」
昨日、一日中歩き回って疲れ果てていたシエルの身体も、充分な睡眠でだいぶ回復していた。
「そうですか。それは良かった」
「……この小屋で一度たりとも目を覚ますことなく、熟睡した男の人は初めてです」
「朝ごはん、召し上がってください」
朝ごはんも肉だった。
干し肉と木の実が入った濃厚なスープ。
昨日の味付けにも感じたが、胡椒のようなスパイスが効いていて非常に食欲をそそられる。何杯でも食べられそうだ。
肉も美味い。
脂は程よく乗っているが、変にギトギトしていないせいか、口の中にしつこい後味が残らない。食感も最高で、口の中でホロホロと柔らかく繊維がほぐれていき、食べやすかった。
昨夜のウサギ肉とは違うようだが、シエルが今まで食べたことのない肉だった。スープに使われているスパイスとの相性も抜群だ。
「これは、何の肉だ?」
シエルが尋ねると、女が満面の笑みを浮かべて答えた。
「内緒です。……でも、私の一番好きな肉です」
朝食を済ませたシエルが戸外に出ると、昨日とは打って変わって気温が上がっていた。
「暑いな……」
額にじっとりと浮かぶ汗を拭う。
森の中では、生い茂る木立に阻まれて太陽の光はほとんど届かない。それにも関わらず、森全体が湿度の高い籠もった熱気に覆われており、まるで蒸し風呂のような熱さだ。
今日もレオポルトを捜す。
レオポルトを連れて帰らなければ……それが叶わなくとも、せめて遺体を見つけ、形見の一つも持って帰らないことには、サーシャを救うことはできないだろう。
「よしっ!」
シエルは気合いを入れるために自分の両頬を叩いた。
「それにしても暑い……。それでも夜になると、また昨夜みたいに冷え込むのか?」
シエルの住む村からそれほど離れていないというのに、全く勝手の違う気候に戸惑ってしまう。
これも森の恐ろしさの一つなのだろうか?
「そうだ。今のうちに」
シエルは泉の前まで行くと、汚れた服を脱ぎ捨てて、裸になった。そのまま、水の中へと足を入れる。
チャポン……。
冷たい。
大気はじっとりとした熱気に満ちているというのに、泉の水はしんから冷たく、澄んでいた。
シエルの足先に無数の小さな魚たちがまとわりついてくる。水底のそんな様子もはっきりと見えた。
泉の中央へと足を進めると、だんだんと深さが増していく。
シエルは腰が隠れるほどの場所まで来ると、身体を洗った。
森を彷徨っているうちに自分でも気づかない細かな傷があちこちできていたらしく、冷たい水が染みて、その度にシエルの顔が歪んだ。
シエルが傷を避けながら、水浴びをしていると――
「お背中、お拭きしましょうか」
ふいに背後から声をかけられ、シエルは慌てて振り返る。
そこには女が立っていた。
ニコニコと嬉しそうに笑っている。
「いつのまに……!?」
水の中を歩いてくれば、音もするし、水も揺れるはずだ。
なのに、シエルは女がこんなに近くまで来ていたことに、まったく気づかなかった。目の前で笑う女を不思議な思いでまじまじと見つめると、女が顔を赤らめた。
女は白い肌着一枚しか身につけていないようだった。それが水に濡れて、ぴたりと身体に張りついている。女は臍まで水に浸かっていたが、滑らかな身体の曲線がありありと浮かび上がっていた。胸の先の薄い紅色まで透けている。
シエルは慌てて女から目を逸らした。
背を向けたシエルの肩に、女の手が触れる。
「あ……」
シエルの身体から力が抜けていく。
女は布を浸して水を含ませると、シエルの背中に当てた。
サワサワと羽のように優しく撫でたかと思うと、今度は筋肉を揉み込むように強く摩られる。
痒いところに手が届くように、女はシエルの触ってほしいところを的確にほぐしていく。
「あぁ……」
あまりの心地良さに、シエルの口から恍惚の声が漏れる。
たまに女の湿った呼気が背中に首筋に触れて、シエルはザワザワと自分の血が騒ぎ立つのを感じずにはいられなかった。
「傷だらけじゃありませんか……。今日はゆっくり休まれてはいかがですか?」
女はそう言いながら、ゆっくりと手を下ろすと、水に浸かっているシエルの尻をムギュムギュと揉みほぐしていく。引き締まった尻肉が女の手によって弛緩する。
「んぁ……あ、そこは……」
肛門の入口にまで女の指先が入り込んできた。そんなところ、今まで他人に触れられたことなんて一度もなかった。
シエルは初めての感覚を前にどうしていいか分からない。
しかし、こんなことをしている場合でないのだ。
頭の隅で警鐘が鳴る。
この森に来た目的は何だった?
早くレオポルトを捜しにいかなくては……。
シエルは今までに感じたことのない快感に流されそうになる自分を叱咤する。
自分を奮い立たせるために、シエルの帰りを待っているであろうサーシャの姿を思い浮かべた。
しかしそれは逆効果だった。
女から受ける刺激とサーシャへの思慕が相まって、シエルの股間が膨張していく。
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