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トラブル発生
招致の案内
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学会から帰宅して、ラフな格好に着替えてから、ホテルのショーケースにあったケーキを幾つか買った箱とSaegusa medicalのブースで貰った資料たちを携えて隣の部屋を久々に尋ねた僕。
インターフォンを押せば、
「どうぞ」
とオートロックがガチャリと外れた音がした。
合鍵のカードキーを貰っているのだから、勝手に入ってもいいのかも知れないけど、そこは礼儀というものもある。
「お邪魔しまーす」
ドアを開けながら声をかけると、玄関には数足の靴が並んでいた。
ケーキ、多めに買ってて良かった…と、ちょっとホッとした僕。
靴を脱いで向きを変えてきちんと揃えてからリビングに向かうと、リビングのソファーにはいつものメンバーが首を揃えていた。
いつものメンバーとは、奏先生に舞先生だ。
「珍しいですね。救命のお二人が揃ってお休みとは…」
僕が声をかけると、
「この間、休日出勤して休暇取れそうな日が今日しかなかったから、若い子に任せて休んだんだ。でも、コレだけど…」
奏先生はスマホを僕にプラプラさせて見せる。
判断がつかなかったり、人手がどうしても足りない時用のオンコール当番の様だ。
「御愁傷様です。脳神経外科学会でキャッスルホテルに行ったので、ホテルの美味しいケーキ買って来たので食べませんか?それと、企業展示のSaegusa medicalのパンフレットとボールペンです。脳外メインのパンフみたいですけど、外科とかの物も少し載ってましたよ?」
と、言えば舞先生がケーキの箱に飛びつき、奏先生はパンフレットなどが入った紙袋に飛びついた。
「真琴先生が提示してくれていた論文たちの読み込みが、やっと目処がつきそうな所まで来たんだよ…。もう、当分英語は見たくねぇ~。」
奏先生がぼやく。
「え?論文完成させるまでに、最後のキャロライン教授の論文を読み込まなきゃならないですから、まだ終わりじゃないですよ!やっと、承認がおりたみたいですから…。」
奏先生たちにとって、爆弾とも言える発言を落とした僕…。
「マジかよ…。真琴先生、日本語に訳しておいてよ…。もう英語はしばらくご馳走様だよ…。」
奏先生は本当に英語でお腹いっぱいになっている様子で、うなだれながらパンフレットをペラペラとめくっている。
舞先生は、ケーキの箱を開けながら理先生に、
「お皿と飲み物!」
と催促している。
理先生の手伝いをしようと、アイランドキッチンに向かった僕。
「そうだ、理先生、今日東部医科大の菱沼教授にお会いしまして、よろしくお伝えくださいと言付かりました。それと、後日東部医科大学で僕に講義に来て欲しいと打診されました。なので、ひょっとしたら近いうちに招致の連絡が先方から来るかも知れませんので、合わせてお伝えしておきます。」
と伝えると、
「菱沼先生か…。キャロライン教授の知り合いって、世界的権威か…。流石、権威は人脈も凄いな。東部医大からの講義打診とは、真琴先生もすごい名誉な事だな。院長にも明日伝えておこう。いいチャンスになるよ。」
自分のことの様に喜んでくれた理先生…。
本当は、それは付随したもので後ろめたさが僕にはあり、正直、胸が痛んだ。
お皿とフォークにカップの準備をし、トレーに乗せてソファーに向かえば4台のノートパソコンがテーブルを占領していた。
奏先生の、置けない!とボヤけば、ノートパソコンをパタパタと閉じてスリープモードにし纏めてテーブルの下に重ねて置いてスペースを確保してくれた。
舞先生は、箱を開けてどれにしようか?って物色している。
「しかし、真琴先生が東部医科大に講義に招致されるとなると、しばらく論文の方は俺たちで頑張るしかなくなるな…」
理先生が、ミルクと砂糖、サイフォンの下ボールをトレーに乗せて持って来ながらボヤく。
「招致と言っても、長くても1週間ほどだと思いますよ。そうそう講義ばかりもできませんし、空いた時間で病院の見学とかさせて頂けたら良いかなって思ってたりしますし…。それに、論文がそう簡単に書ける物でもありませんから、zoomやSkypeとかで離れててもディスカッションは出来ますから!」
気休めに僕が提案すると、コーヒーをカップに注ぎながら、
「それもそうだな…。そう簡単に論文が書けたら、苦労はしないもんな。」
と理先生も開き直った。
コーヒーとケーキでブレイクタイムを取った後、再び論文の読み込みを再開した3人。
僕は、一度部屋に戻って自分のノートパソコンとUSBなどを持って出戻って、論文の読み込みの手伝いと、頼まれるであろう東部医科大の講義の資料作成に着手した。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
明けて、翌日の朝一に理先生が院長に早速東部医科大の講義に僕が招致される連絡が入る可能性を伝えてくれた。
その日の夜には、僕のメールアドレスに、菱沼教授から正式に招致の打診を送ることになった連絡が入った。
インターフォンを押せば、
「どうぞ」
とオートロックがガチャリと外れた音がした。
合鍵のカードキーを貰っているのだから、勝手に入ってもいいのかも知れないけど、そこは礼儀というものもある。
「お邪魔しまーす」
ドアを開けながら声をかけると、玄関には数足の靴が並んでいた。
ケーキ、多めに買ってて良かった…と、ちょっとホッとした僕。
靴を脱いで向きを変えてきちんと揃えてからリビングに向かうと、リビングのソファーにはいつものメンバーが首を揃えていた。
いつものメンバーとは、奏先生に舞先生だ。
「珍しいですね。救命のお二人が揃ってお休みとは…」
僕が声をかけると、
「この間、休日出勤して休暇取れそうな日が今日しかなかったから、若い子に任せて休んだんだ。でも、コレだけど…」
奏先生はスマホを僕にプラプラさせて見せる。
判断がつかなかったり、人手がどうしても足りない時用のオンコール当番の様だ。
「御愁傷様です。脳神経外科学会でキャッスルホテルに行ったので、ホテルの美味しいケーキ買って来たので食べませんか?それと、企業展示のSaegusa medicalのパンフレットとボールペンです。脳外メインのパンフみたいですけど、外科とかの物も少し載ってましたよ?」
と、言えば舞先生がケーキの箱に飛びつき、奏先生はパンフレットなどが入った紙袋に飛びついた。
「真琴先生が提示してくれていた論文たちの読み込みが、やっと目処がつきそうな所まで来たんだよ…。もう、当分英語は見たくねぇ~。」
奏先生がぼやく。
「え?論文完成させるまでに、最後のキャロライン教授の論文を読み込まなきゃならないですから、まだ終わりじゃないですよ!やっと、承認がおりたみたいですから…。」
奏先生たちにとって、爆弾とも言える発言を落とした僕…。
「マジかよ…。真琴先生、日本語に訳しておいてよ…。もう英語はしばらくご馳走様だよ…。」
奏先生は本当に英語でお腹いっぱいになっている様子で、うなだれながらパンフレットをペラペラとめくっている。
舞先生は、ケーキの箱を開けながら理先生に、
「お皿と飲み物!」
と催促している。
理先生の手伝いをしようと、アイランドキッチンに向かった僕。
「そうだ、理先生、今日東部医科大の菱沼教授にお会いしまして、よろしくお伝えくださいと言付かりました。それと、後日東部医科大学で僕に講義に来て欲しいと打診されました。なので、ひょっとしたら近いうちに招致の連絡が先方から来るかも知れませんので、合わせてお伝えしておきます。」
と伝えると、
「菱沼先生か…。キャロライン教授の知り合いって、世界的権威か…。流石、権威は人脈も凄いな。東部医大からの講義打診とは、真琴先生もすごい名誉な事だな。院長にも明日伝えておこう。いいチャンスになるよ。」
自分のことの様に喜んでくれた理先生…。
本当は、それは付随したもので後ろめたさが僕にはあり、正直、胸が痛んだ。
お皿とフォークにカップの準備をし、トレーに乗せてソファーに向かえば4台のノートパソコンがテーブルを占領していた。
奏先生の、置けない!とボヤけば、ノートパソコンをパタパタと閉じてスリープモードにし纏めてテーブルの下に重ねて置いてスペースを確保してくれた。
舞先生は、箱を開けてどれにしようか?って物色している。
「しかし、真琴先生が東部医科大に講義に招致されるとなると、しばらく論文の方は俺たちで頑張るしかなくなるな…」
理先生が、ミルクと砂糖、サイフォンの下ボールをトレーに乗せて持って来ながらボヤく。
「招致と言っても、長くても1週間ほどだと思いますよ。そうそう講義ばかりもできませんし、空いた時間で病院の見学とかさせて頂けたら良いかなって思ってたりしますし…。それに、論文がそう簡単に書ける物でもありませんから、zoomやSkypeとかで離れててもディスカッションは出来ますから!」
気休めに僕が提案すると、コーヒーをカップに注ぎながら、
「それもそうだな…。そう簡単に論文が書けたら、苦労はしないもんな。」
と理先生も開き直った。
コーヒーとケーキでブレイクタイムを取った後、再び論文の読み込みを再開した3人。
僕は、一度部屋に戻って自分のノートパソコンとUSBなどを持って出戻って、論文の読み込みの手伝いと、頼まれるであろう東部医科大の講義の資料作成に着手した。
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明けて、翌日の朝一に理先生が院長に早速東部医科大の講義に僕が招致される連絡が入る可能性を伝えてくれた。
その日の夜には、僕のメールアドレスに、菱沼教授から正式に招致の打診を送ることになった連絡が入った。
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