Words of love 〜αとΩ番の誓い〜

浅葱

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新たな生活

新しい1日の始まり③

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僕の挨拶で、救命救急でのカンファレンスは終了となった。
参加していたスタッフは、蜘蛛の子を散らすようにフロアに散開して行った。

「このまま、救命の案内をしたいところだけどタイムリミットが近いみたいだから、外科の医局まで送っていくよ。」

と奏先生に言われ、カンファレンスルームを後にした。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

医局は、病院の別館の後方に建っている。
別館と医局の建物の5階部分までは繋がっていて、その1階と2階部分が丁度救命救急センターとHCUになっていた。
因みに外科の医局は、医局の建物の中でも最上階に当たる10階にあった。
各フロアには2~3つの科の医局があるらしいが、外科だけは10階を丸々ワンフロア使っていると、奏先生が教えてくれた。
ただし例外があって、救命救急の医局だけはセンターの上、さっき僕がお邪魔した奏先生の部屋の近くにあると教えてくれた。使うのは、殆ど出勤時と退勤時、少しゆっくり食事がとれる時くらいだけど…って、奏先生は言ってたけど、それだけ救命救急は多忙な場所なのだ。
他の科も、そう大差はないと思うけど…。

目的の部屋の前に着き、ドアをノックと同時にガチャりと開けた奏先生。

「兄貴、大事な真琴先生をお連れしましたよ。」

と言い捨てたかと思うと、

「真琴先生、無線ちゃんとスイッチ入れといてね。じゃ、また後で!」

と後ろ手で手をヒラヒラとさせてきた道を颯爽と戻って行った。

「随分と早い出勤ですね。20分以上早いですが…。」

理先生が不思議そうに聞いてくる。
奏先生に説明したように、甥の送迎ついでに姉に送ってもらった事を伝え、少し早過ぎたのでカフェでお茶してたら奏先生を見かけたので声をかけたら、そのまま病院に来てしまい、救命救急のカンファレンスにも参加していた事を素直に話した。

「では、兼任の件は既に奏から聞いているんですね。申し訳ない。心臓血管外科の業務だけに専念出来る様に配慮するつもりだったんだが、金曜の処置のオペレコを見た院長からも是非救命との兼任を頼んで欲しいと要請があってね。本人の意思を尊重すると、返事はしておいたのだが…。」

と申し訳なさそうに話す理先生。僕は、

「そうだったんですか。最初聞いた時はビックリしましたけど、頑張ってみようかと思います。」

と答え、手に持っていた小さな紙袋を手にして、

「理先生、これ、金曜のお礼と着任のご挨拶がわりです。大したものでは無いのですが、僕が好きな焼き菓子です。召し上がってください。」

と手渡した。そして、大きい紙袋を差し出して、

「こちらは医局の皆さんへのお礼とご挨拶がわりになります。」

と半ば押し付けるように手渡した。
その時だ、金曜に見た理先生と雰囲気が違うことに気づいたのは…。
ドクターコート(白衣)を着ているが、その下がYシャツにネクタイではなく奏先生と同じくスクラブでハイネックの服を身につけていたのだった。
僕は恐る恐る、

「あのぉ~、理先生。まさかと思うんですけど、そのハイネックにスクラブって…」

と言ったところ、

「あぁ、奏で曰く、お揃いってヤツだな。久々にOpe以外でスクラブを着たがYシャツよりも動きやすくていいかも知れないな…。」

と返された。
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