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第2章
012 仕返し
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パッドが着信音を立てた。
「私です」
黒服を着た男が写っている。
「なによ。朝から」
アリシアは寝起きで機嫌が悪い。
男は秘匿回路を作動させた。
「猫開発公社にいらん事を吹き込んだ奴が割れました。うちの貴族です。なんでも首謀者は王様を拉致した仲間と立てこもったが、爆発事故で死んだそうです。貴女を宇宙に放り出した奴はグランデサラム帝国の者だと分かりました。300年前ですから生きているか分かりません。調査中です」
パッドで黒服は言った。組織である彼らは御方が欲する情報は、確実に掴んでくる。どんなことでも探し依頼を達成する。プリサンド王国の闇であった。
「そう」
アリシアはつまらない風に言った。爆発事故で死亡か明らかになったと言うことは、これ以上の責を問えないと言うことだ。グランデサラム帝国は宇宙船を打ち出す時から邪魔をしていた。実行犯がわかればいいのだが。
「猫開発公社の関係者はわかっています。貴族に尻尾を振る男です」
「そうね。事故で亡き者にしますか。グランデサラム帝国もよろしくね」
アリシアは王女の顔で言うと、お菓子を口に運んだ。パッドの黒服は頭を下げると消えた。
「また宇宙船の事故だ。あの会社だ。なんか疫病神がついているな。へえ、入港時の接触ねえ。俺も注意せんとな」
事故はありふれた物だった。混み合うプラットフォームで同じ会社の貨物船が接触したのだ。幸い死亡者はいない。宇宙局は無理な配送計画を立てたとして、本部の配送主任を処分にしたとある。
スミスはニュースでプラットフォームの事故を知った。会社員だった頃を思い出す。
期日を切られ、めしの時間も犠牲にして運んだ日々を思い出す。
あの頃は電子脳の自動運転もなかった。だから宇宙船を眠気を堪えて操縦しなければならなかった。どうかしたら、めしも食わずに休みも取らずに働くこともあった。
「今、楽になったよなあ」
独白する。宇宙は24時間で動いている。人の生活を同じにするために、ご飯の時間は同じように摂るようにしている。だから宇宙は同じ時間として宇宙標準時を設定している。
「ああ7時か。腹が減ったなあ」
この宇宙船も時計は宇宙標準時だ。
操縦席で伸びをする。宇宙船は休みなく動いている。電子脳の目が宙航士に代わって一晩航路を監視しているが、何か起こった時に備えて宙航士は操縦席で寝る事が当たり前になっている。今日は地球に行く宇宙船の護衛だ。
「さて今日は何かな?」
今日の献立を思い出す。この空域の宙賊は刈り取っていない。
「ああパンとサラダだな」
宇宙船にはそんなものは載っていない。濃い藻のようなものを固めたフードパックがあるだけだ。これをパックを破いてスプーンで掬う…ではない。フードプロセッサー、専門の電子脳のような物を通すとリクエストにあった物を作り出すのだ。フードパックは原材料なのだ。見た目は藻だ。そのまま食べる奴はいない。
「軽く食べておこう」
アリスに食事をテーブルに出すよう言ってアリシアが起きて来ないのに気づいた。
「ほんと子供に適応してるみたいだ」
一応、王女であるので乱入はせず、部屋のドアを叩く。
「食事だ」
すぐに返事がある。どうやら起きていたらしい。
「今朝はパンとサラダ」
「お菓子は?」
「お菓子を食べすぎたら悪い。子供の体で大人並みのカロリーを摂ったら糖尿病になるぞ」
「うー」
「アリスが用意をしたから早く来い」
「はあい」
どうかすると王女というのを忘れてしまう。見た目が変わると言葉も変わる。また王女様も自分が王女ということを忘れている風をするから始末が悪い。
「アリス。朝食を減らしていいから、お菓子を追加して」
「はい。王女様」
結局、朝からお菓子を食べるアリシアだった。
「アリス、船を頼む。護衛は問題なく継続中。警戒を怠るな」
「了解」
本部の配送主任が自殺をしたとニュースが言っていた。何でも次元エンジンの不調で、配送が遅れた航宙士を首にしたという事だった。宇宙局の調べでは、阿漕な処分は配送主任が勝手にしたらしく、本部の上部のものは知らなかったそうだ。首になった航宙士は船から冥王星のプラットフォームに下されて行方はわからず、それを問題に思った革新勢力から厳しい追求をされ、社長の進退まで問題は広がり、責任を感じた主任は命を絶ったらしい。
プリサンド王国で貴族制度がなくなったと言うニュースに霞んで、自殺のニュースは小さく配信された。
「貴族制度は、あなたがきっかけで、なくなったようなものね。更地のスミスさん」
アリシアは言った。
「妙な二つ名がついたものだ。しかし、あの爆弾2260は王女様の手によるもの。更地のアリシア王女が相応しいのでは?」
「私は、死んでいることになってるんだから、更地はあなたよ、スミス」
アリシアは笑った。その笑顔は魅力的だった。
思わず抱きしめる。
「ダメよ。この体は子供なんだから」
アリシアは拒んだ。スミスは無理強いしなかった。王女に遠慮したのだ。船は今アリスが見ている。
食事は2人が向かい合って静かに始まった。アリシアの朝食はひどく少ない。
「ん?食べないと体に悪い」
「トータルで足りているから大丈夫」
袋菓子の袋からお菓子を口に放り込んで言う。
口からお菓子のかけらをこぼしながらお菓子を噛み砕く。
「ほらほら、口からこぼれている」
子供相手の食事だな。スミスはそんなことを思った。
宇宙船はアリス2だけが降下して、備蓄基地のアリス3は地球の軌道の外に停泊した。宇宙船が地上の宙港に着くまでが仕事だ。
「停泊よし。宇宙船ギャラクシー07、これで護衛は終わりだ」
パットに護衛終了の様式が出る。
「ありがとう。宙賊は現れなかった。無事に宙港についたよ」
「了解」
スミスはほっとして通信を切った。
「ねえ、地球に着いたら時間がある?」
アリシアがパッドに示された、ぬいぐるみの店を示して言う。
「ここに行きたい」
目をキラキラさせている様子はまるっきり子供だ。
「ああ、わかった」
俺はおじさまになったようだ。スミスはため息を出す。
さあ、王女様の言うぬいぐるみの店を攻略しなくては。駐機場に降りる。呼吸できる大気があるのはいい。ここはグランデサラム帝国。電子脳に入国の申請をした。
「じゃあ行くよ。」
アリス2の昇降口で振り返る。
「ここは空気が無尽蔵にあるのね」
アリシアが興味深そうに言う。そういえば火星のプリサンド王国には大気を防護壁で包んで中にあるのが一般だった。
店は大きな通りにあった。アリシアは嬉々として店に向けて走っていく。スミスはその様子を微笑ましく見ていた。
「きゃっ」
男の横を走り過ぎようとした時、いきなり男がアリシアを横抱きにして走り出した。いつも付いている警備の黒服たちが王女を追う。男は狭い通りに飛び込む。
「なんだっ」
スミスは男の後を追った。
「アリシア様を狙っていたようです」
アリス2が彼女の位置を掴んでいるようだ。パッドに通信が入る。
狭い道の角で黒服が立ちすくんでいる。
「アリシアはどっちだ?」
「不明です」
「アリス2、黒服に位置を教えろ」
「はい。パッドに送信済みです。緊急時につき指示はありませんが離陸しました。爆弾226を投下できます」
「指示があるまで追跡だ。ここはプリサンドじゃない。王様に厄介ごとを持っていくな」
「アリス了解」
「警備からスミス様、王女を拉致した男は確保しました。王女は無事です」
さすが黒服だ。男は黒服に縛られていた。ちょっと腕の方向がおかしいのと顔が青いあざで彩られている以外は特におかしいところはない。どうやら手ひどく扱ったようだ。
「アリシア、大丈夫か?」
アリシアはちょっと青い顔をしている。子供にするように頭を撫でる。アリシアはちょっとびっくりしたようだが、大人しく撫でられている。
「大丈夫よ。ちょっと驚いただけ」
「おい男の目的を吐かせろ」
スミスはアリシアの頭を撫でていたが、いきなり黒服に話を持っていく。
「目的を吐かせる、了解です」
黒服は上着のポケットから消音銃を取り出した。
「殺せ。王女の事など俺は何も知らん」」
「ふうん。それを知っているとは。アリス3が聞きたがっている。ちょっと御足労願いましょうか?」
「誰の前に連れて行こうと俺は喋らん」
「喋りますよ」
「…」
男は断言されたので黙った。
アリシアとアリス3は思念波で会話しているようだ。
「アリシア、アリス3とも思念波で会話できるので?」
「まあ私の複製だし、話すことは可能よ。プリサンドの科学者には秘密だけどね」
「まるで虫の女王だな。で殺すと後がまずい。うまく情報だけを吐かせてくれ」
「そう?ではアリス3が知りたがっているから、あとはアリス3に任せましょうか」
さらっと言うがアリス3は地球の軌道の外に停泊している。
「アリス2が行きます。男を連れて行くだけであれば大した事はありません」
アリス2がパッドを通じて話に割り込んで来る。
「無人の宇宙船が飛んでいるのは分からないようにな」
「了解です」
スミスたちの上に来たアリス2は、吸引ビームを照射して男を回収すると中空に飛び去って行った
「お店に行くよ」
男から拉致されかけたアリシアは、アリスが男を持って行ったので元気になった。
「きゃあ、ぬいぐるみがいっぱい!」
広いフロアにぬいぐるみが溢れている。その中で身長と同じくらいの大きさのをゲットしてアリシアは笑顔満開だった。
「アリスです」
幸せな時間はアリスからの連絡で中断された。思念波ではなく、パットを用いているのは、プリサンド王国の黒服に聞かれる事を前提にしているのだろう。
「男が吐きました。王女を宇宙空間に300年の放浪させたのは、グランデサラム帝国であると。今回の拉致はプリサンド王国と戦争のきっかけを作るためだったと言う事です。初めに宇宙空間に王女を放浪させた当人は、ベルクランゼ。細胞活性化手術で今も生きています。王女を放浪させた事で、グランデサラム帝国の宰相に昇格したそうです」
「そう。生きているのね」
アリシアの目が残忍さを帯びる。
「で私を放逐して出世したのね。今回の拉致は我が国との戦争のためね。でベルクランゼの位置は分かる?」
「宮殿です。位置は把握しています」
「そう、アリス。来て頂戴」
この日、グランデサラム帝国は宰相がいる宮殿は更地になってしまった。爆発の原因は分からない。帝国軍が誤って爆弾を爆発させたとも、帝国の宇宙船が落ちたとも言われている。帝王と宰相は巻き添えで死亡した。
「しかし良く襲撃者が口を割ったものですね」
「複製を作ると言えば何でも喋るわ」
「しかし適性がなければ、死ぬんじゃないですか?」
「そうよ。だから複製装置に固定して尋問すれば何でも喋るわ。適性は滅多にないですから」
それは死よりも怖い事だとスミスは思った。
「しかし跡が分かるような事はしない方がいい」
「だって、私は世界で1番のおひめさま。それを宇宙に放逐するなんてあんまりよ。グランデサラム帝国はプリサンド王国の王女に手を出した事で、痛い目を見たということね。まあ宮殿が更地になれば、実力者もいなくなって手を出そうとは思わないでしょうが」
グランデサラム帝国は大混乱になった。誰とは無しに更地のスミスに逆らったから、帝都が更地になったと言う噂が立ったが、グランデサラム帝国はそれを否定した。
帝国は共和国に国名を変更した。今までの勢力が一掃されたので穏健派が台頭したらしい。
「ほう」
スミスは唸った。
「私です」
黒服を着た男が写っている。
「なによ。朝から」
アリシアは寝起きで機嫌が悪い。
男は秘匿回路を作動させた。
「猫開発公社にいらん事を吹き込んだ奴が割れました。うちの貴族です。なんでも首謀者は王様を拉致した仲間と立てこもったが、爆発事故で死んだそうです。貴女を宇宙に放り出した奴はグランデサラム帝国の者だと分かりました。300年前ですから生きているか分かりません。調査中です」
パッドで黒服は言った。組織である彼らは御方が欲する情報は、確実に掴んでくる。どんなことでも探し依頼を達成する。プリサンド王国の闇であった。
「そう」
アリシアはつまらない風に言った。爆発事故で死亡か明らかになったと言うことは、これ以上の責を問えないと言うことだ。グランデサラム帝国は宇宙船を打ち出す時から邪魔をしていた。実行犯がわかればいいのだが。
「猫開発公社の関係者はわかっています。貴族に尻尾を振る男です」
「そうね。事故で亡き者にしますか。グランデサラム帝国もよろしくね」
アリシアは王女の顔で言うと、お菓子を口に運んだ。パッドの黒服は頭を下げると消えた。
「また宇宙船の事故だ。あの会社だ。なんか疫病神がついているな。へえ、入港時の接触ねえ。俺も注意せんとな」
事故はありふれた物だった。混み合うプラットフォームで同じ会社の貨物船が接触したのだ。幸い死亡者はいない。宇宙局は無理な配送計画を立てたとして、本部の配送主任を処分にしたとある。
スミスはニュースでプラットフォームの事故を知った。会社員だった頃を思い出す。
期日を切られ、めしの時間も犠牲にして運んだ日々を思い出す。
あの頃は電子脳の自動運転もなかった。だから宇宙船を眠気を堪えて操縦しなければならなかった。どうかしたら、めしも食わずに休みも取らずに働くこともあった。
「今、楽になったよなあ」
独白する。宇宙は24時間で動いている。人の生活を同じにするために、ご飯の時間は同じように摂るようにしている。だから宇宙は同じ時間として宇宙標準時を設定している。
「ああ7時か。腹が減ったなあ」
この宇宙船も時計は宇宙標準時だ。
操縦席で伸びをする。宇宙船は休みなく動いている。電子脳の目が宙航士に代わって一晩航路を監視しているが、何か起こった時に備えて宙航士は操縦席で寝る事が当たり前になっている。今日は地球に行く宇宙船の護衛だ。
「さて今日は何かな?」
今日の献立を思い出す。この空域の宙賊は刈り取っていない。
「ああパンとサラダだな」
宇宙船にはそんなものは載っていない。濃い藻のようなものを固めたフードパックがあるだけだ。これをパックを破いてスプーンで掬う…ではない。フードプロセッサー、専門の電子脳のような物を通すとリクエストにあった物を作り出すのだ。フードパックは原材料なのだ。見た目は藻だ。そのまま食べる奴はいない。
「軽く食べておこう」
アリスに食事をテーブルに出すよう言ってアリシアが起きて来ないのに気づいた。
「ほんと子供に適応してるみたいだ」
一応、王女であるので乱入はせず、部屋のドアを叩く。
「食事だ」
すぐに返事がある。どうやら起きていたらしい。
「今朝はパンとサラダ」
「お菓子は?」
「お菓子を食べすぎたら悪い。子供の体で大人並みのカロリーを摂ったら糖尿病になるぞ」
「うー」
「アリスが用意をしたから早く来い」
「はあい」
どうかすると王女というのを忘れてしまう。見た目が変わると言葉も変わる。また王女様も自分が王女ということを忘れている風をするから始末が悪い。
「アリス。朝食を減らしていいから、お菓子を追加して」
「はい。王女様」
結局、朝からお菓子を食べるアリシアだった。
「アリス、船を頼む。護衛は問題なく継続中。警戒を怠るな」
「了解」
本部の配送主任が自殺をしたとニュースが言っていた。何でも次元エンジンの不調で、配送が遅れた航宙士を首にしたという事だった。宇宙局の調べでは、阿漕な処分は配送主任が勝手にしたらしく、本部の上部のものは知らなかったそうだ。首になった航宙士は船から冥王星のプラットフォームに下されて行方はわからず、それを問題に思った革新勢力から厳しい追求をされ、社長の進退まで問題は広がり、責任を感じた主任は命を絶ったらしい。
プリサンド王国で貴族制度がなくなったと言うニュースに霞んで、自殺のニュースは小さく配信された。
「貴族制度は、あなたがきっかけで、なくなったようなものね。更地のスミスさん」
アリシアは言った。
「妙な二つ名がついたものだ。しかし、あの爆弾2260は王女様の手によるもの。更地のアリシア王女が相応しいのでは?」
「私は、死んでいることになってるんだから、更地はあなたよ、スミス」
アリシアは笑った。その笑顔は魅力的だった。
思わず抱きしめる。
「ダメよ。この体は子供なんだから」
アリシアは拒んだ。スミスは無理強いしなかった。王女に遠慮したのだ。船は今アリスが見ている。
食事は2人が向かい合って静かに始まった。アリシアの朝食はひどく少ない。
「ん?食べないと体に悪い」
「トータルで足りているから大丈夫」
袋菓子の袋からお菓子を口に放り込んで言う。
口からお菓子のかけらをこぼしながらお菓子を噛み砕く。
「ほらほら、口からこぼれている」
子供相手の食事だな。スミスはそんなことを思った。
宇宙船はアリス2だけが降下して、備蓄基地のアリス3は地球の軌道の外に停泊した。宇宙船が地上の宙港に着くまでが仕事だ。
「停泊よし。宇宙船ギャラクシー07、これで護衛は終わりだ」
パットに護衛終了の様式が出る。
「ありがとう。宙賊は現れなかった。無事に宙港についたよ」
「了解」
スミスはほっとして通信を切った。
「ねえ、地球に着いたら時間がある?」
アリシアがパッドに示された、ぬいぐるみの店を示して言う。
「ここに行きたい」
目をキラキラさせている様子はまるっきり子供だ。
「ああ、わかった」
俺はおじさまになったようだ。スミスはため息を出す。
さあ、王女様の言うぬいぐるみの店を攻略しなくては。駐機場に降りる。呼吸できる大気があるのはいい。ここはグランデサラム帝国。電子脳に入国の申請をした。
「じゃあ行くよ。」
アリス2の昇降口で振り返る。
「ここは空気が無尽蔵にあるのね」
アリシアが興味深そうに言う。そういえば火星のプリサンド王国には大気を防護壁で包んで中にあるのが一般だった。
店は大きな通りにあった。アリシアは嬉々として店に向けて走っていく。スミスはその様子を微笑ましく見ていた。
「きゃっ」
男の横を走り過ぎようとした時、いきなり男がアリシアを横抱きにして走り出した。いつも付いている警備の黒服たちが王女を追う。男は狭い通りに飛び込む。
「なんだっ」
スミスは男の後を追った。
「アリシア様を狙っていたようです」
アリス2が彼女の位置を掴んでいるようだ。パッドに通信が入る。
狭い道の角で黒服が立ちすくんでいる。
「アリシアはどっちだ?」
「不明です」
「アリス2、黒服に位置を教えろ」
「はい。パッドに送信済みです。緊急時につき指示はありませんが離陸しました。爆弾226を投下できます」
「指示があるまで追跡だ。ここはプリサンドじゃない。王様に厄介ごとを持っていくな」
「アリス了解」
「警備からスミス様、王女を拉致した男は確保しました。王女は無事です」
さすが黒服だ。男は黒服に縛られていた。ちょっと腕の方向がおかしいのと顔が青いあざで彩られている以外は特におかしいところはない。どうやら手ひどく扱ったようだ。
「アリシア、大丈夫か?」
アリシアはちょっと青い顔をしている。子供にするように頭を撫でる。アリシアはちょっとびっくりしたようだが、大人しく撫でられている。
「大丈夫よ。ちょっと驚いただけ」
「おい男の目的を吐かせろ」
スミスはアリシアの頭を撫でていたが、いきなり黒服に話を持っていく。
「目的を吐かせる、了解です」
黒服は上着のポケットから消音銃を取り出した。
「殺せ。王女の事など俺は何も知らん」」
「ふうん。それを知っているとは。アリス3が聞きたがっている。ちょっと御足労願いましょうか?」
「誰の前に連れて行こうと俺は喋らん」
「喋りますよ」
「…」
男は断言されたので黙った。
アリシアとアリス3は思念波で会話しているようだ。
「アリシア、アリス3とも思念波で会話できるので?」
「まあ私の複製だし、話すことは可能よ。プリサンドの科学者には秘密だけどね」
「まるで虫の女王だな。で殺すと後がまずい。うまく情報だけを吐かせてくれ」
「そう?ではアリス3が知りたがっているから、あとはアリス3に任せましょうか」
さらっと言うがアリス3は地球の軌道の外に停泊している。
「アリス2が行きます。男を連れて行くだけであれば大した事はありません」
アリス2がパッドを通じて話に割り込んで来る。
「無人の宇宙船が飛んでいるのは分からないようにな」
「了解です」
スミスたちの上に来たアリス2は、吸引ビームを照射して男を回収すると中空に飛び去って行った
「お店に行くよ」
男から拉致されかけたアリシアは、アリスが男を持って行ったので元気になった。
「きゃあ、ぬいぐるみがいっぱい!」
広いフロアにぬいぐるみが溢れている。その中で身長と同じくらいの大きさのをゲットしてアリシアは笑顔満開だった。
「アリスです」
幸せな時間はアリスからの連絡で中断された。思念波ではなく、パットを用いているのは、プリサンド王国の黒服に聞かれる事を前提にしているのだろう。
「男が吐きました。王女を宇宙空間に300年の放浪させたのは、グランデサラム帝国であると。今回の拉致はプリサンド王国と戦争のきっかけを作るためだったと言う事です。初めに宇宙空間に王女を放浪させた当人は、ベルクランゼ。細胞活性化手術で今も生きています。王女を放浪させた事で、グランデサラム帝国の宰相に昇格したそうです」
「そう。生きているのね」
アリシアの目が残忍さを帯びる。
「で私を放逐して出世したのね。今回の拉致は我が国との戦争のためね。でベルクランゼの位置は分かる?」
「宮殿です。位置は把握しています」
「そう、アリス。来て頂戴」
この日、グランデサラム帝国は宰相がいる宮殿は更地になってしまった。爆発の原因は分からない。帝国軍が誤って爆弾を爆発させたとも、帝国の宇宙船が落ちたとも言われている。帝王と宰相は巻き添えで死亡した。
「しかし良く襲撃者が口を割ったものですね」
「複製を作ると言えば何でも喋るわ」
「しかし適性がなければ、死ぬんじゃないですか?」
「そうよ。だから複製装置に固定して尋問すれば何でも喋るわ。適性は滅多にないですから」
それは死よりも怖い事だとスミスは思った。
「しかし跡が分かるような事はしない方がいい」
「だって、私は世界で1番のおひめさま。それを宇宙に放逐するなんてあんまりよ。グランデサラム帝国はプリサンド王国の王女に手を出した事で、痛い目を見たということね。まあ宮殿が更地になれば、実力者もいなくなって手を出そうとは思わないでしょうが」
グランデサラム帝国は大混乱になった。誰とは無しに更地のスミスに逆らったから、帝都が更地になったと言う噂が立ったが、グランデサラム帝国はそれを否定した。
帝国は共和国に国名を変更した。今までの勢力が一掃されたので穏健派が台頭したらしい。
「ほう」
スミスは唸った。
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