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しおりを挟むコクヨウの過去のことを知って乱れた感情を整理するには、時間がかかるだろう。あの時、コクヨウの過去を知っていれば、あんな事はしなかったとか、こうしてやれば良かったとか…。後悔ばかりが浮かんでくる。
それは考えたところで、もう既に終わってしまった過去のことであるのに変わりはない。俺が出来ることなんてコクヨウの側にいることくらいだしな…。
騎士団の指南役の仕事は良いタイミングだったな。体動かしてる間はあまり考え過ぎずに済むし。コクヨウの辛い境遇を思うたびに、心がぎゅっと締め付けられる。ポーカーフェイスなど出来ない素直な俺の顔面は、悲しみを全面に出してしまう。
コクヨウに心配かけてるのはわかってる。でもコクヨウが少し嬉しそうなのも知ってる。たぶん俺が自分のこと考えて、頭いっぱいにしてくれてるのが嬉しいとかそんな所だろうな。
「お迎えにあがりました。タカミ様、コクヨウ様」
「おう、行こうコクヨウ」
「うん」
「騎士団員を訓練場に集めております。そこで講師として紹介させていただき、その後指導に移っていただきます。」
「おう」「…」
「何か問題等ありましたら遠慮なくお申し付けくださいませ。我々の恩人にまさか失礼をする者など騎士団には居ないと信じておりますが…万が一ということもあります故」
「…タカミに手出したら、躾けていいの?」
「ええ、勿論でございます。私に申し付けて頂ければこちらで躾けますが…」
「それじゃあ納得出来ないよ…アンタが甘やかすかもしれないでしょ。もう二度と歯向かう気が起きないくらい、徹底的に躾けてやらないと。」
「見くびられては困ります。私はそんなに甘くありませんよ?特に、害ある味方には、ね。」
「そう…なら良いけど。」
いやいやいや…何怖い会話してるんだよ…。しかも平然としてやがる。というか、俺だって教育的指導くらい出来るって。
「いや…俺が自分で何とかするって…」
「駄目だよ」「私にお任せください。」
「…なんだよ二人して…出来るって言ってんだろ。」
「タカミは甘いからなぁ…」
「そうでございますね。お人好しな面がお有りですから…」
「はぁ…見てろ?今にちゃんと出来るって証明してやるから。」
「ふぅん?」
「お手並み拝見致しましょう。」
疑いの目で見やがって…俺だってやれば出来るっての。そもそもコクヨウに初めに剣を教えたのだって魔法教えたのだって俺だぞ?全く…。
訓練場にとやらは、流石に公爵家のものだけあって立派なものだった。そのうえきっちりと並んだ騎士たちの視線が一斉に俺達に向く。流石に圧倒されるというものだ。隣のコクヨウをチラリと見ても平気そうだった。解せぬ…。
「本日から暫し騎士団の指導をお願いするタカミ様とコクヨウ様です。くれぐれも失礼なさいません様にお願いしますね。」
「Aランク冒険者のタカミだ。魔物への対処法なんかを中心に指導する予定だ。よろしく頼む。」
「Sランク、コクヨウ。…タカミに何かしたら殺す。」
わぁお…なんて挑発的な挨拶…。誰がコクヨウにこんなこと教えたのかなぁ?殺気まで飛ばしやがって…。本気の殺気では無いが、騎士団の面々はビビり散らしてる。可哀想に…
「コクヨウ、殺気抑えろ。」
「はぁい。でも最初が肝心でしょ?」
「いや…でもこれは無…」
「素晴らしい挨拶でしたね。流石はコクヨウ様とタカミ様です。」
おい…誰だこんな狂人を執事にしてるのは。執事って常識のある人だと思ってたんだけど…。俺の味方はどこに居るんだよ。騎士団の指導は前途多難だな、こりゃ…。
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