黒豹拾いました

おーか

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初っ端からやらかしている俺達だが、気を取り直して騎士団の団長や分隊長たちと顔合わせを行った。コクヨウの牽制のお陰か馬鹿にしてくるような者は居なかったのは有り難い。

「改めてタカミだ、こっちはコクヨウ。」

「俺は騎士団長をしているクロードだ。あんた等強そうだし、是非手合わせ願いたいな。」

「まぁ時間があればな。」

「やったぜ!!」

「クロード団長、彼らは恩人であることも忘れないように。団長が無理を言って申し訳ありません。私は騎士団副団長ネルと申します。」

「第一分隊長、セルトです。」

「第二分隊長のエメルです。」

「第三分隊長テレスです。」

「おう、よろしく。最初に聞いておきたいんだが、魔物との戦闘経験はどれくらいだ?」

「俺はそこそこ倒してるぜ?まぁ冒険者と比べちゃあ少ねぇと思うが。」

「私もクロード隊長について回っていますから…それなりに。しかし平の団員はおそらくDランクを倒すのがやっと…でしょうかね。」

「D…か。そりゃなかなか厳しいな。んー、やっぱりまずは魔物の知識学んでもらうとするか。なんか勉強出来る場所あるか?」

「ご用意いたしましょう。暫しお待ちを。」

「お!んじゃその間に俺と手合わせしようぜ!な?」

「クロード団長…」

「まぁ、構わねぇよ。けど、対人戦はそんなに強くねぇぜ?」

「僕がやろうか?」

「コクヨウが?んー、そうだな。んじゃ任せる。」

「じゃあタカミはネルとな!」

「わかったよ。ネルさん、お手柔らかに。」

場所を抑えてもらう間に俺達の実力を知ってもらうのものだけ兼ねて皆の前で手合わせを行う。訓練場に結界を張って、その周りを騎士たちが囲う。先に俺とネルさんの試合で、次にコクヨウとクロード団長だ。

「タカミ、頑張ってね!」

「おう」

「ネル、騎士団の意地見せろよ!」

「はい、タカミさんよろしくお願いします。」

「ああ、よろしく。誰が審判やる?」

「僭越ながら私が勤めさせていただきます。」

「ああ、よろしくミシェルさん」

「はい、それでは準備は宜しいですね。…構え…はじめ!!」

覇気のある声で戦いの開始が宣言される。向かい合っていたネルさんの姿がブレる。咄嗟に剣で背後をガードする。途端に剣がぶつかり合う音が響く。あー…スピードに振ってるタイプか。あまり相性はよくなさそうだが、恋人も見てる前で情けない姿見せられないからな。

「…まさかガードされるとは…」

「流石に初撃でやられる訳にはいかねぇよ!」

速さのある剣を受け流しつつ無詠唱魔法も駆使して、どうにかこうにか勝ちをもぎ取った。副団長だけあって流石の実力だな。次やったら多分負ける。こっちの手の内ももう見せちまってるし。

「タカミ様の勝利です。」

「ふぅ…負けました。後で無詠唱のコツ教えていただけますか?」

「ああ、勿論だ。講師として来てるんだからな。ネルさん強えな。」

「ありがとうございます。」

「はっはっはっ!ネルが負けるかよ!すげぇなタカミ!」

「ははっ…どーも…」

「流石タカミ!僕は勝つと思ってたよ。」

「おう、ありがとな。コクヨウ」

「うん!」

「次はお前だな。頑張れよ。」

「うん、頑張ってのちゅーして?そしたら絶対に勝つから。」

「コクヨウ?本気で言ってんのか?」

「うん、勿論」

「……」

「あー…僕怪我しちゃうかもなぁ…?」

「ちっ…人目あるとこではしねぇ。こっち来い。」

建物の影に引っ張り込んで、さっと口付ける。唇が触れるだけのキスだったが、コクヨウはそれでも満足したらしい。満面の笑みを浮かべて、クロード団長と向かい合う。

ミシェルさんが開始を宣言した直後、クロード団長の背後に回り込んだコクヨウが首筋に剣を突きつける。瞬殺かよ…。

「そこまで!」

「…まじかよ…ここまでとはな…」

「タカミ!勝ったよ。」

「おう、よく頑張ったな。コクヨウ」

「うん!」

「わははは!Sランクってのはすげぇな!こんな瞬殺されたの初めてだぜ!」

「クロード団長を相手にここまでの実力差があるとは…」

見学していた騎士団の面々も驚愕しているのがわかる。まぁ、そりゃそうなる。Aランクの俺はどのくらいの実力なのか分かったし、見応えのある試合で盛り上がっていたが、Sランクのコクヨウとなった途端、動きを目で追うことさえ出来なくなり訳がわからないだろうな。

冒険者のランクでSとAの間には果てしないほどの差があるのだ。普通の冒険者で突出した実力を持つものでもAランク。異次元にも思える程の実力がある者だけがSランクに上がるのだ。故にSランクの希少性はとても高い。




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