36 / 130
36
しおりを挟むセンリが獣人についての常識的な話を教えてくれたが、やはり家族とは言っても俺とコクヨウの距離は近過ぎるのかもしれない。一緒に寝ているのが原因なのだろうか…?匂いがついてる、みたいなことも言われたし。
「なぁコクヨウ、お前俺に匂いつけてたりするか?」
「ん?なんで?」
「あー、いや、今日話した獣人の冒険者がそう言ってたからな…」
「ふーん、気にしなくていいよタカミ。僕、自分の匂いがする方が安心するんだよね。だから匂い移してるけど…やだ?」
「いや、嫌ではねぇけど…普通はあんまりしねぇって聞いたからよ。一応確認しただけだ。」
「そうなんだ。」
安心する、か。それならそれでいいだろう。これからも別に匂いくらい付けてくれてもいい。俺にはどうせ分かんねぇし。それが分かるのは多分獣人くらいなんだろう。
この話題から話を逸らすべく、学校のことを聞いてみた。
「おう…ところで学校はどうだ?クラスの子らとは上手くやれてるか?」
「さぁね。あんまり話したことないし。」
「…少しくらい話してみたらいいだろ?」
「嫌だよ。少し話しただけで勝手に友達面してきたり、恋人だって虚言を言われたりするからね。」
「は?なんだよそれ…実体験か?」
「うん。でも本当に少しの間だけだよ。サク達と友達になってからは三人が守ってくれてたから。」
「聞いてねぇぞ?」
これは思わぬ藪蛇だ…まさかコクヨウがスールエの学校でそんな目に合っていたなんて全く知らなかった…。あっさりと、まるでなんでもない事のように言い放たれた過去。いくらコクヨウが気にしていなくても、俺はそのことに気付いてやることさえ出来なかったらしい。
確かにコクヨウの見た目ならあり得る話だ。その上、あの頃から成長して更に逞しくなったし、美男である。勉強も出来る上、剣も出来る。利用しようと寄ってくる者は跡を絶たないだろう。
「だって言っても心配かけるだけだし」
「…それでも相談くらいしてくれ…俺は親としてそんなに頼りなかったか?」
そう…俺は何よりも悲しいのだ。コクヨウが嫌な目にあった時にそれを話してさえ貰えなかった事が…
「そうじゃない…そうじゃなくて」
「それ以外にどんな理由があるってんだ!!」
ついコクヨウが言い募るのを怒鳴り付けて遮ってしまう。コクヨウは必死に伝えようとしてくれているのに俺は…本当に情けない。
「…僕はただ…僕のこと必死に育ててくれてるタカミの負担を増やしたくなかった…」
「それは頼りないってことだろ?…悪かったな…俺みたいな親でよ…お前はもっと裕福な奴らに引き取られたほうが幸せになれたんだろうな…」
昔から心の片隅で考えていたことがつい、口からこぼれ落ちる。これは言ってはいけないことだ…。でも考えずにはいられなかった。
昔、コクヨウが学校で頭が良い事が分かった時、明らかに上層階級みたいな奴らがコクヨウを引き取りたいと申し出てきたのを俺は…俺のエゴと独断で断ってしまったから。
俺の言葉に悲しげに顔をくしゃりと歪ませたコクヨウが抱き着いてくる。随分大きくなった。そっと抱き締め返し、震えるコクヨウに寄り添う。
「なんで…なんでタカミがそんなこと言うの…?僕はタカミが拾ってくれて良かったって思ってる。大好きだよタカミ。」
「……わりぃ…忘れてくれ。俺もお前といられて幸せだ。愛してるコクヨウ」
「うん…タカミ、ずっと一緒にいてね。それだけで僕、幸せだから」
「おう、俺もだ。」
その日は抱き締めあって眠りについた。本当ならセンリの忠告に従って、ベッドを分けるつもりだったが、俺のせいで泣かせてしまった可愛い息子を無理に離すことは出来なかった。明日こそは…
俺も子離れが必要だろうしな…来る日の別れに備えておかなければいけないと思うのだ。コクヨウだってその内恋人が出来て、結婚して…俺とは別の道を歩むことになるんだからな。
62
あなたにおすすめの小説
売れ残りオメガの従僕なる日々
灰鷹
BL
王弟騎士α(23才)× 地方貴族庶子Ω(18才)
※ 第12回BL大賞では、たくさんの応援をありがとうございました!
ユリウスが暮らすシャマラーン帝国では、平民のオメガは18才になると、宮廷で開かれる選定の儀に参加することが義務付けられている。王族の妾となるオメガを選ぶためのその儀式に参加し、誰にも選ばれずに売れ残ったユリウスは、国王陛下から「第3王弟に謀反の疑いがあるため、身辺を探るように」という密命を受け、オメガ嫌いと噂される第3王弟ラインハルトの従僕になった。
無口で無愛想な彼の優しい一面を知り、任務とは裏腹にラインハルトに惹かれていくユリウスであったが、働き始めて3カ月が過ぎたところで第3王弟殿下が辺境伯令嬢の婿養子になるという噂を聞き、従僕も解雇される。
【完結】王子様たちに狙われています。本気出せばいつでも美しくなれるらしいですが、どうでもいいじゃないですか。
竜鳴躍
BL
同性でも子を成せるようになった世界。ソルト=ペッパーは公爵家の3男で、王宮務めの文官だ。他の兄弟はそれなりに高級官吏になっているが、ソルトは昔からこまごまとした仕事が好きで、下級貴族に混じって働いている。机で物を書いたり、何かを作ったり、仕事や趣味に没頭するあまり、物心がついてからは身だしなみもおざなりになった。だが、本当はソルトはものすごく美しかったのだ。
自分に無頓着な美人と彼に恋する王子と騎士の話。
番外編はおまけです。
特に番外編2はある意味蛇足です。
竜の生贄になった僕だけど、甘やかされて幸せすぎっ!【完結】
ぬこまる
BL
竜の獣人はスパダリの超絶イケメン!主人公は女の子と間違うほどの美少年。この物語は勘違いから始まるBLです。2人の視点が交互に読めてハラハラドキドキ!面白いと思います。ぜひご覧くださいませ。感想お待ちしております。
美貌の騎士候補生は、愛する人を快楽漬けにして飼い慣らす〜僕から逃げないで愛させて〜
飛鷹
BL
騎士養成学校に在席しているパスティには秘密がある。
でも、それを誰かに言うつもりはなく、目的を達成したら静かに自国に戻るつもりだった。
しかし美貌の騎士候補生に捕まり、快楽漬けにされ、甘く喘がされてしまう。
秘密を抱えたまま、パスティは幸せになれるのか。
美貌の騎士候補生のカーディアスは何を考えてパスティに付きまとうのか……。
秘密を抱えた二人が幸せになるまでのお話。
【完結】国に売られた僕は変態皇帝に育てられ寵妃になった
cyan
BL
陛下が町娘に手を出して生まれたのが僕。後宮で虐げられて生活していた僕は、とうとう他国に売られることになった。
一途なシオンと、皇帝のお話。
※どんどん変態度が増すので苦手な方はお気を付けください。
【本編完結】最強S級冒険者が俺にだけ過保護すぎる!
天宮叶
BL
前世の世界で亡くなった主人公は、突然知らない世界で知らない人物、クリスの身体へと転生してしまう。クリスが眠っていた屋敷の主であるダリウスに、思い切って事情を説明した主人公。しかし事情を聞いたダリウスは突然「結婚しようか」と主人公に求婚してくる。
なんとかその求婚を断り、ダリウスと共に屋敷の外へと出た主人公は、自分が転生した世界が魔法やモンスターの存在するファンタジー世界だと気がつき冒険者を目指すことにするが____
過保護すぎる大型犬系最強S級冒険者攻めに振り回されていると思いきや、自由奔放で強気な性格を発揮して無自覚に振り回し返す元気な受けのドタバタオメガバースラブコメディの予定
要所要所シリアスが入ります。
魔王の求める白い冬
猫宮乾
BL
僕は交通事故に遭い、別の世界に魔王として転生した。最強の力を貰って。だから何度勇者が訪れても、僕は死なない。その内に、魔王はやはり勇者に倒されるべきだと思うようになる。初めはそうではなかった、僕は現代知識で内政をし、魔族の国を治めていた。けれど皆、今は亡い。早く僕は倒されたい。そう考えていたある日、今回もまた勇者パーティがやってきたのだが、聖剣を抜いたその青年は、同胞に騙されていた。※異世界ファンタジーBLです。全85話、完結まで書いてあるものを、確認しながら投稿します。勇者×魔王です。
転移先で辺境伯の跡継ぎとなる予定の第四王子様に愛される
Hazuki
BL
五歳で父親が無くなり、七歳の時新しい父親が出来た。
中1の雨の日熱を出した。
義父は大工なので雨の日はほぼ休み、パートに行く母の代わりに俺の看病をしてくれた。
それだけなら良かったのだが、義父は俺を犯した、何日も。
晴れた日にやっと解放された俺は散歩に出掛けた。
連日の性交で身体は疲れていたようで道を渡っているときにふらつき、車に轢かれて、、、。
目覚めたら豪華な部屋!?
異世界転移して森に倒れていた俺を助けてくれた次期辺境伯の第四王子に愛される、そんな話、にする予定。
⚠️最初から義父に犯されます。
嫌な方はお戻りくださいませ。
久しぶりに書きました。
続きはぼちぼち書いていきます。
不定期更新で、すみません。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる