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しおりを挟むさり気なくコクヨウが寝たあと俺は隣のベッドへ移る。そんなことを繰り返したが、結果はいつも同じ。起きた時には不思議と同じベッドで寝ているのだ。
明らかにコクヨウが俺のベッドに入り込んでいるんだが…どうしてここまで一緒に居たがるのか…。そろそろ恋とかそういうお年頃だろ?それとも女の子とかに興味ないのか?女の子と一緒に寝たいとかなら分かるんだがなぁ。
「なぁコクヨウ、お前も大きくなってきたろ?」
「ん?うん」
「だからよ、そろそろ好きな奴とか出来ないのか?」
「好きな人?ずっと前からいるよ。」
「…は?誰だよ!!」
「え?タカミだけど」
「はぁ?それは家族としてだろ?そうじゃなくて!恋愛的な話だ」
「うん、だからそういう話をしてる。」
「……あ?」
「だから、好きだよ。タカミ」
「…そりゃ勘違いだろ…近くに居るのが俺だけだったから…その、家族愛…とかじゃねぇのか?」
「そんなことない。これは勘違いなんかじゃない。」
……これはまたおかしな事になった。
可愛がってきた息子に告白された…。いや今はまだ世界が狭いからそう思うのかもしれねぇ。取り敢えず今はまだ…
「…まぁ取り敢えず…そうだな…お前が大人になってもその気持ちのままなら考えるからよ」
「大人になったら…うん、分かった。でも…僕の気持ちは変わらないよ?」
「お、おう…」
「もう一度…ううん、タカミが信じてくれるまで何回だって言うから。ちゃんと考えておいてね。」
「…分かった」
はぐらかすような形になってしまったが、俺に気持ちを告げるコクヨウの目は真剣で真っ直ぐだった。コクヨウが大人になるまで…まだ時間はある…ある筈だ。その間にどうするのか、きちんと考えないとな。
例えコクヨウの気持ちに応えられなかったとしても、きちんと答えを出さないとならない。
そんなことを思った訳だが…コクヨウの態度は何も変わらなかった。正直俺は拍子抜けした。だが時々コクヨウが俺のことをじっと見ているのが分かる。魔物と退治しているだけあって俺は気配に敏感な方だからな。
段々とその回数も増えてきて、流石に聞いてみることにした。
「どうした?コクヨウ」
「ん、ううん。なんでもない。ただタカミを見ていたいんだ」
「そ、そうか」
「ふふっ照れてるの?タカミ」
「…全く…揶揄うな」
「揶揄ってなんかないよ。好きな人を見ていたいのは当然でしょう?」
「…」
将来有望なイケメン獣人に迫られている。
その上ソイツは可愛い息子だ。…そういう時どうすりゃいいんだ?
恋愛経験だって無いんだ。こんな特殊な状況での事など分かりゃしねぇ。
コクヨウの気持ちが少し嬉しいと思っちまってる…俺は…少しおかしいのかもな。
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