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しおりを挟む予定通りとは行かなかったが充実した休みを過ごした数日後。俺はとある冒険者の獣人に声をかけられていた。どうやら俺に確認?しておきたいことがあるらしい。
内密…というかあまり公衆の面前でしていい話ではないらしいので、食事処の個室を間借りさせてもらっている。どうやらこの街に俺達がやってきた時から、コクヨウが獣人なのもあって気にかけてくれていたらしい。
「突然わりぃな。俺はAランク冒険者のセンリだ。宜しく頼む。因みに獅子の獣人だ。」
「ああ、俺はBランクのタカミだ。よろしく」
「それで早速なんだが…お前、あの獣人の子との関係、どう思ってんだ?」
「ん?どう…って親子だが…何かおかしいか?」
「おかしい!!おかしいんだよお前ら!最初は俺はお前が獣人をいいように使ってんのかと思ってよ、警戒してたんだ。もし何かあるなら解放してやろうって思ってた。」
どうやら同族の好で、コクヨウを心配して俺に目を付けていたらしい。そりゃ人の中には獣人の子供をさらって、無理矢理従えたりする奴も居るらしいからな。疑われるのも無理はない。
「あー、まぁそれはない。俺は家族としてコクヨウをちゃんと愛してるからな。」
「それだ!それ!!お前、あの獣人の恋人とかじゃねぇのか?」
「いや、ただの親代わりだ」
「はぁ?本気で言ってんのか?お前…そんなにアイツの匂いつけられといてそりゃねぇぜ?」
センリが言うには、俺にこれだけの匂いが付いているのは、コクヨウが意図的にマーキングしているのだという。俺にはそんな匂い全く分からないのだが…。
「コクヨウの匂いが俺に移ってるってことだよな?」
「おう」
「それは一緒に寝てるからだと思うぞ。コクヨウは寂しがりで、一人で寝てくれないんだ。」
「は?一緒に?寝てる?」
コクリと頷きながら、酒を流し込む。あり得ないとばかりに顔をしかめられた。そんなにおかしなことなのか?
「そんなまずかったか?」
「…お前、よく襲われないで済んでるな…」
襲われる…?コクヨウに噛まれたりするって意味か?
コクヨウは物凄く大人しい寝相だから心配ないと思うが…。身の危険があるなら本格的にコクヨウが嫌がっても寝床を分けたほうが良いのかもしれないな。
「コクヨウは大人しいが危険なのか?」
「…ある意味あんたの身は危険だろうな…」
「そうか…忠告ありがとう。」
「おう…因みに、獣人の常識を教えといてやるが、耳や尻尾なんかの敏感な部分は恋人や番、配偶者にしか触らせないもんだ。あんたみたいに相手が子供でもある程度育てばそれは変わらねぇよ。」
「そうなのか。だけど俺は親だからな!」
…何故そうも自信満々なのだ?この男は…
親子としての関係値を微塵も疑わないらしいな。タカミは絶対にあの獣人に狙われている。周りだって気付いている…というか周りはカップルだと誤解している者も多い。その為適度な距離を置かれているのにな…。
そもそも手を繋いで、その上、揃いの剣に防具。それを見てカップルだと誤解するなと言う方が難しいというものだ。
毎晩床をともにするなど明らかに貞節の危機だろうよ…。警戒心はどこへ置いてきたのだと問いたいくらいだ。まぁこれ以上口を挟んであの獣人に恨まれたくはないので、このあたりにしておくが。
一応助言も忠告もしてやった。それでもあの獣人を子供として可愛がるというのなら、俺の知ったことではない。明らかに子供が親に向けるものではない視線を向けられているのに、全く気が付かない辺り鈍感な男だ…。
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