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わたしからひとことって……
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「副侍女長、みなさんにひとことをお願いします」
驚くべきことに、侍女長がわたしに場を譲った。
彼女のきつい顔立ちには、わたしの前の人生のときよりずっとずっとやさしく友好的な表情を浮かんでいる。
「あ、いえ、わたしなど……」
それでなくても混乱と動揺の際にあるのに、ひとことどころかみんなの前で立っている余裕さえない。
「副侍女長っ、是非ともおねがいします」
「副侍女長の言葉で元気がでるのです」
「そうです。あなたの言葉でヤル気がみなぎります」
(まさか、みんなわたしに言っているの? というか、これって夢なの? それともやはり罠かなにか?)
わたしにたいして好意的な言葉の数々。
前の人生とは真逆すぎる。
(ど、どうしよう……)
わたし自身、前の人生での扱いしか知らない。侍女長を始め、みんなのこんな扱いは完全に想定外である。
みんなのわたしへの期待に押され、なんとか震える足でみんなの前に立った。
心身ともにビビりまくっている。
多くの人たち。多くの視線。多くの関心。
みんながわたしに注目している。わたしの言葉を待っている。
「おはようございます」
意外にも口から挨拶の言葉が出ていた。
その声は、自分でも驚くほど明るく大きくしっかりしていた。
「昨日のことは、わたしひとりの力ではありません」
(って、わたしなにを言っているの? 昨日のことって、なんのことかもわからないのに?)
スラスラと出てくる自分の言葉をきき、さらに混乱する。
「これもひとえに、侍女長を始めみなさんの協力があってのことです。みなさんの力添えのお蔭です。ひとりひとりのスキルと能力の成果です。みなさん個々人のスキルや能力も高いですが、協力や連携によってますます高まった結果なのです。わたしたちはもちろんのこと、ひとりだけではなにも出来ません。みなさんで力をあわせてこそ、です。これからもこのまま協力と連携をお願いします。そして、侍女長の指導の下力をあわせてがんばりましょう」
言葉は、スラスラとよどみなく出てくる。
前世で読んだ小説の中に出てきた台詞ばかり。
具体的には、王宮の侍女をヒロインにした恋愛物や下級侍女が上級侍女へとのぼりつめる小説で述べられていた台詞である。
そういった創作の世界での台詞が、勝手に口から飛び出していた。
「副侍女長、さすがです」
「感動しました」
「副侍女長の言う通りだわ。力をあわせましょう」
食堂内がワッと湧いた。
侍女長も含め、朝一番からみんなに感動を与えたみたい。
今回は、前世で読んだ小説の台詞を真似て事なきを得た。
(いまのわたしはいったいどうなっているの?)
わたしへ讃辞を送るみんなには笑ってお礼を言いつつも、この状況に困惑しまくっていた。
驚くべきことに、侍女長がわたしに場を譲った。
彼女のきつい顔立ちには、わたしの前の人生のときよりずっとずっとやさしく友好的な表情を浮かんでいる。
「あ、いえ、わたしなど……」
それでなくても混乱と動揺の際にあるのに、ひとことどころかみんなの前で立っている余裕さえない。
「副侍女長っ、是非ともおねがいします」
「副侍女長の言葉で元気がでるのです」
「そうです。あなたの言葉でヤル気がみなぎります」
(まさか、みんなわたしに言っているの? というか、これって夢なの? それともやはり罠かなにか?)
わたしにたいして好意的な言葉の数々。
前の人生とは真逆すぎる。
(ど、どうしよう……)
わたし自身、前の人生での扱いしか知らない。侍女長を始め、みんなのこんな扱いは完全に想定外である。
みんなのわたしへの期待に押され、なんとか震える足でみんなの前に立った。
心身ともにビビりまくっている。
多くの人たち。多くの視線。多くの関心。
みんながわたしに注目している。わたしの言葉を待っている。
「おはようございます」
意外にも口から挨拶の言葉が出ていた。
その声は、自分でも驚くほど明るく大きくしっかりしていた。
「昨日のことは、わたしひとりの力ではありません」
(って、わたしなにを言っているの? 昨日のことって、なんのことかもわからないのに?)
スラスラと出てくる自分の言葉をきき、さらに混乱する。
「これもひとえに、侍女長を始めみなさんの協力があってのことです。みなさんの力添えのお蔭です。ひとりひとりのスキルと能力の成果です。みなさん個々人のスキルや能力も高いですが、協力や連携によってますます高まった結果なのです。わたしたちはもちろんのこと、ひとりだけではなにも出来ません。みなさんで力をあわせてこそ、です。これからもこのまま協力と連携をお願いします。そして、侍女長の指導の下力をあわせてがんばりましょう」
言葉は、スラスラとよどみなく出てくる。
前世で読んだ小説の中に出てきた台詞ばかり。
具体的には、王宮の侍女をヒロインにした恋愛物や下級侍女が上級侍女へとのぼりつめる小説で述べられていた台詞である。
そういった創作の世界での台詞が、勝手に口から飛び出していた。
「副侍女長、さすがです」
「感動しました」
「副侍女長の言う通りだわ。力をあわせましょう」
食堂内がワッと湧いた。
侍女長も含め、朝一番からみんなに感動を与えたみたい。
今回は、前世で読んだ小説の台詞を真似て事なきを得た。
(いまのわたしはいったいどうなっているの?)
わたしへ讃辞を送るみんなには笑ってお礼を言いつつも、この状況に困惑しまくっていた。
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