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いろんなことが違っている?
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前の人生のときと違うのは、アレックス王子や朝礼のことだけではない。
ほとんどすべてが違っている。
登場人物は同じだけれど、違うストーリー展開になっている。
違う作家によって描かれている世界になっている。
いまのこの世界では、わたしはどうやら「役立たず」ではなく「できる」侍女らしい。しかも明るく前向きで行動力があり、やさしく気遣い抜群でと非のうちどころのない「スーパー侍女」という設定になっている。
それだけではない。この度のあっていない古めかしいメガネを外すと、「驚くほどの美貌」だというからさらに驚きである。
その噂を耳にした瞬間、おもわず笑ってしまった。
だれもがその噂を信じている。
この世界では、わたしは人気者で期待されていてだれもがわたしを頼りにし、慕っている。王族だけでなく、政治家たちや貴人たちからの信認が厚い。
この世界でのわたしは、悲劇のヒロインではない。みすぼらしく哀れな存在でもない。
だれもがうらやみ、尊敬されるヒロイン。いまはもう存在しない聖女とか聖母とか、尊ばれている扱いを受けている。
以前とは真逆の扱い。
(重すぎるわ。それから、窮屈すぎる)
いまの扱いの方がよほどいいにきまっている。ふつうならそう思うはず。
が、そうではない。
さまざまな意味で疲れる。慣れていないせいかもしれない。だぶん、そうなのだろう。
だけど、そのような扱いにもしばらくすると慣れてきた。
驚くべきことに、周囲に注目されたり期待されたり頼られたりするとヤル気がみなぎる。元気が出るし、使命感に燃える。
(もしかして、これがほんとうのわたしなのかしら?)
この生活に慣れてくると、死に戻ったあたらしいわたし自身のことをしだいにそう思い始めた。
前の人生で死ぬまでのわたしは、嘘やごまかしで塗り固めた作り物のわたしだったのかもしれないとも考えた。
とはいえ、いまはいまで前の人生とは違う意味で大変である。
もしかすると、みんなからの期待や信頼が重すぎ、プレッシャーをかけられて心身ともに疲弊しているのかもしれない。
一方でそんな大変で疲れる状態に、満足したり楽しんだりしていることも確かである。
いまのわたしは、この副侍女長の職務を心から愛している。職務だけではない。
侍女長を始め、周囲の人たちのことも愛している。なにより、死に戻ってあたらくなったわたし自身を愛している。
わたしがみんなを愛するから、みんなもわたしのことを愛してくれる。
(いいえ。そうではないわね)
みんなが愛してくれるからこそ、わたしも周囲のみんなのことを愛せるのかもしれない。
厳密には、それも違うかもしれない。
とはいえ、鳥と卵の関係同様どちらが先でもかまわない。
とにかく、どのようなことでも結局は自分に返ってくることは確かなこと。
それをあらためて学んだ気がする。
ほとんどすべてが違っている。
登場人物は同じだけれど、違うストーリー展開になっている。
違う作家によって描かれている世界になっている。
いまのこの世界では、わたしはどうやら「役立たず」ではなく「できる」侍女らしい。しかも明るく前向きで行動力があり、やさしく気遣い抜群でと非のうちどころのない「スーパー侍女」という設定になっている。
それだけではない。この度のあっていない古めかしいメガネを外すと、「驚くほどの美貌」だというからさらに驚きである。
その噂を耳にした瞬間、おもわず笑ってしまった。
だれもがその噂を信じている。
この世界では、わたしは人気者で期待されていてだれもがわたしを頼りにし、慕っている。王族だけでなく、政治家たちや貴人たちからの信認が厚い。
この世界でのわたしは、悲劇のヒロインではない。みすぼらしく哀れな存在でもない。
だれもがうらやみ、尊敬されるヒロイン。いまはもう存在しない聖女とか聖母とか、尊ばれている扱いを受けている。
以前とは真逆の扱い。
(重すぎるわ。それから、窮屈すぎる)
いまの扱いの方がよほどいいにきまっている。ふつうならそう思うはず。
が、そうではない。
さまざまな意味で疲れる。慣れていないせいかもしれない。だぶん、そうなのだろう。
だけど、そのような扱いにもしばらくすると慣れてきた。
驚くべきことに、周囲に注目されたり期待されたり頼られたりするとヤル気がみなぎる。元気が出るし、使命感に燃える。
(もしかして、これがほんとうのわたしなのかしら?)
この生活に慣れてくると、死に戻ったあたらしいわたし自身のことをしだいにそう思い始めた。
前の人生で死ぬまでのわたしは、嘘やごまかしで塗り固めた作り物のわたしだったのかもしれないとも考えた。
とはいえ、いまはいまで前の人生とは違う意味で大変である。
もしかすると、みんなからの期待や信頼が重すぎ、プレッシャーをかけられて心身ともに疲弊しているのかもしれない。
一方でそんな大変で疲れる状態に、満足したり楽しんだりしていることも確かである。
いまのわたしは、この副侍女長の職務を心から愛している。職務だけではない。
侍女長を始め、周囲の人たちのことも愛している。なにより、死に戻ってあたらくなったわたし自身を愛している。
わたしがみんなを愛するから、みんなもわたしのことを愛してくれる。
(いいえ。そうではないわね)
みんなが愛してくれるからこそ、わたしも周囲のみんなのことを愛せるのかもしれない。
厳密には、それも違うかもしれない。
とはいえ、鳥と卵の関係同様どちらが先でもかまわない。
とにかく、どのようなことでも結局は自分に返ってくることは確かなこと。
それをあらためて学んだ気がする。
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