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採取イベントは華やか方がいい
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タージェリアからズーリエへ帰ると日常の日々が戻ってきた。
ルナさんは街の代表としての仕事に戻り、ノノちゃんはカレン商店の手伝いをしているようで今じゃ看板娘になって、テッドは勇者ケインの情報を集めるために街を翻弄している。
そして俺は⋯⋯特にやることがなく自宅待機をしていた。
リリナディアの護衛と言ってもとりあえず側にいればいいだけだから手持ち無沙汰だった。
1度気分転換に街に出ようかリリナディアを誘ってみたが、人混みが苦手のようで拒否されてしまった。
一瞬俺のことが嫌いだから出掛けたくないだけじゃと頭に過ったが、本当だったらショックを受けてしまうので考えないようにする。
だけどせっかく自由になれたのだから外の世界を楽しんでもらいたいな。
う~ん⋯⋯何かリリナディアの興味があるような物は⋯⋯と言っても俺はリリナディアのことは何も知らない。強いて言うなら食べる物が人族と同じって所か。
リリナディアは食事をしている時は俺への警戒心が薄れているような気がする。それなら⋯⋯。
「リリナディア、ちょっと果物を取りに行こうと思っているんだけど」
「くだ⋯⋯もの?」
「ああ、シャインアップルって言うんだけど知ってるか?」
「昔住んでいた所にあったよ。とっても美味しかった」
「一緒に取りに行かないか?」
食べ物で釣ることしかできないけど美味しい物を食べてもらい、もう少しリリナディアと仲良くなりたいものだ。
「でも⋯⋯」
リリナディアは何故か顔を赤らめて迷いの言葉を発している。様子を見る限り完全に嫌がっている感じはしないのでこれはもう一押しで一緒に行ってくれるかもしれない。
「お兄ちゃん私も行きたいな」
俺はリリナディアの返答を待っていると突然カレン商店の方から声が聞こえ、ノノちゃんと母さんがこちらに向かってきた。
「いいよ。ノノちゃんも一緒に行こうか」
「本当? リリナディアお姉ちゃんも一緒に行こうよ」
「⋯⋯うん。わかった」
ノノちゃんのお願いによりリリナディアはシャインアップル採取に行くことを了承してくれた。
ノノちゃんも後で誘おうと思っていたからちょうど良かったな。元気に振る舞っているように見えるけど今日のノノちゃんは少し疲れているように感じたからたまにはカレン商店の手伝いを休んで気分転換をしてもらった方がいいだろう。
「母さん、ノノちゃんも連れて行ってもいいかな?」
「いいわよ。これで今日の夜のデザートは決まりね」
そして母さんからノノちゃんを連れていく許可も得たので俺達は準備をして南門からシャインアップルがある森へと向かうのであった。
「シャインアップル取るの楽しみだね」
「そ、そうだね」
「リリナディアお姉ちゃんはどんな食べ物が好きなの?」
「わ、私は――」
おとなしいリリナディアに対してノノちゃんはぐいぐいと攻めて質問をしていく。そのためかリリナディアは俺と話す時より会話が進んでいるようだ。
この積極性⋯⋯俺も見習わないと。
そして2人が話をしている中、ノノちゃんが少し変わった質問を投げ掛ける。
「リリナディアお姉ちゃんはお兄ちゃんみたいに強いの?」
既に家族にはリリナディアの境遇は説明してある。後々魔族で魔王の卵だったなんて知られるより最初から話しておいた方がいいと思ったからだ。それに俺の家族なら世間に出回っている情報より目の前のリリナディアを見て判断してくれる。
「リ、リックさんがどれくらい強いかわからないけど⋯⋯私は勝てないと思う」
「そうなの? でもリリナディアお姉ちゃんはやっぱり強いんだ」
今のリリナディアは普通の人には余裕で勝てると思うけど魔王化したハインツクラスの相手はかなり厳しいといった所かな。
「いいなあ。私もお兄ちゃんやお姉ちゃんの役に立ちたいなあ」
「ノノは⋯⋯強くなりたいの?」
「うん」
リリナディアの問いかけにノノちゃんは即答で答える。ノノちゃんは何かを決心しているような力強い目をしており、思いつきで口にしたようには見えない。
「お兄ちゃんはルナお姉ちゃんのレベルを上げるためにコーチしてたんだよね?」
「そうだよ」
「ノノも⋯⋯ノノもお兄ちゃんにコーチしてもらいたいけどダメ⋯⋯かな」
もしかしてノノちゃんは今まで過酷な貧民街で暮らしていていたから食べるために、生きていくために何度も自分の力不足を感じていたのかもしれないな。中途半端な力を持つことが1番危ないという話は聞くけどこの世界では力を持たない方が危険だ。
それにノノちゃんなら強さを手に入れてもどこかの元皇子のように性格が変わることはないだろう。
「わかった。だけど一人前と認めるまでは俺の指示には絶対に従うこと。いい?」
「うん! お兄ちゃんありがとう!」
ノノちゃん嬉しかったのか可愛らしい笑顔を見せて俺の胸に飛び込んでくる。
すると先日と同じ様に、小さいけど確かに感じることができる柔らかいふくらみを認識してしまう。
こらこらやめなさい。そんなことされたらいつまでもロリコンの称号がなくならないじゃないか。
「それじゃあさっそく今日からレベル上げをしようか」
「けどノノは武器を持ってないし、魔法を使うこともできないよ」
「大丈夫。それは俺が用意するよ」
「本当!」
実はあのアイテムをもらった時から1つ考えていた武器があり、創造創聖魔法で前の世界の本を取り寄せて構造を学んでいたものがある。
「今から作るからちょっと待ってて」
そして俺は探知スキルで周囲に人がいないことを確認し、魔力を集め創聖魔法を唱えるのであった。
ルナさんは街の代表としての仕事に戻り、ノノちゃんはカレン商店の手伝いをしているようで今じゃ看板娘になって、テッドは勇者ケインの情報を集めるために街を翻弄している。
そして俺は⋯⋯特にやることがなく自宅待機をしていた。
リリナディアの護衛と言ってもとりあえず側にいればいいだけだから手持ち無沙汰だった。
1度気分転換に街に出ようかリリナディアを誘ってみたが、人混みが苦手のようで拒否されてしまった。
一瞬俺のことが嫌いだから出掛けたくないだけじゃと頭に過ったが、本当だったらショックを受けてしまうので考えないようにする。
だけどせっかく自由になれたのだから外の世界を楽しんでもらいたいな。
う~ん⋯⋯何かリリナディアの興味があるような物は⋯⋯と言っても俺はリリナディアのことは何も知らない。強いて言うなら食べる物が人族と同じって所か。
リリナディアは食事をしている時は俺への警戒心が薄れているような気がする。それなら⋯⋯。
「リリナディア、ちょっと果物を取りに行こうと思っているんだけど」
「くだ⋯⋯もの?」
「ああ、シャインアップルって言うんだけど知ってるか?」
「昔住んでいた所にあったよ。とっても美味しかった」
「一緒に取りに行かないか?」
食べ物で釣ることしかできないけど美味しい物を食べてもらい、もう少しリリナディアと仲良くなりたいものだ。
「でも⋯⋯」
リリナディアは何故か顔を赤らめて迷いの言葉を発している。様子を見る限り完全に嫌がっている感じはしないのでこれはもう一押しで一緒に行ってくれるかもしれない。
「お兄ちゃん私も行きたいな」
俺はリリナディアの返答を待っていると突然カレン商店の方から声が聞こえ、ノノちゃんと母さんがこちらに向かってきた。
「いいよ。ノノちゃんも一緒に行こうか」
「本当? リリナディアお姉ちゃんも一緒に行こうよ」
「⋯⋯うん。わかった」
ノノちゃんのお願いによりリリナディアはシャインアップル採取に行くことを了承してくれた。
ノノちゃんも後で誘おうと思っていたからちょうど良かったな。元気に振る舞っているように見えるけど今日のノノちゃんは少し疲れているように感じたからたまにはカレン商店の手伝いを休んで気分転換をしてもらった方がいいだろう。
「母さん、ノノちゃんも連れて行ってもいいかな?」
「いいわよ。これで今日の夜のデザートは決まりね」
そして母さんからノノちゃんを連れていく許可も得たので俺達は準備をして南門からシャインアップルがある森へと向かうのであった。
「シャインアップル取るの楽しみだね」
「そ、そうだね」
「リリナディアお姉ちゃんはどんな食べ物が好きなの?」
「わ、私は――」
おとなしいリリナディアに対してノノちゃんはぐいぐいと攻めて質問をしていく。そのためかリリナディアは俺と話す時より会話が進んでいるようだ。
この積極性⋯⋯俺も見習わないと。
そして2人が話をしている中、ノノちゃんが少し変わった質問を投げ掛ける。
「リリナディアお姉ちゃんはお兄ちゃんみたいに強いの?」
既に家族にはリリナディアの境遇は説明してある。後々魔族で魔王の卵だったなんて知られるより最初から話しておいた方がいいと思ったからだ。それに俺の家族なら世間に出回っている情報より目の前のリリナディアを見て判断してくれる。
「リ、リックさんがどれくらい強いかわからないけど⋯⋯私は勝てないと思う」
「そうなの? でもリリナディアお姉ちゃんはやっぱり強いんだ」
今のリリナディアは普通の人には余裕で勝てると思うけど魔王化したハインツクラスの相手はかなり厳しいといった所かな。
「いいなあ。私もお兄ちゃんやお姉ちゃんの役に立ちたいなあ」
「ノノは⋯⋯強くなりたいの?」
「うん」
リリナディアの問いかけにノノちゃんは即答で答える。ノノちゃんは何かを決心しているような力強い目をしており、思いつきで口にしたようには見えない。
「お兄ちゃんはルナお姉ちゃんのレベルを上げるためにコーチしてたんだよね?」
「そうだよ」
「ノノも⋯⋯ノノもお兄ちゃんにコーチしてもらいたいけどダメ⋯⋯かな」
もしかしてノノちゃんは今まで過酷な貧民街で暮らしていていたから食べるために、生きていくために何度も自分の力不足を感じていたのかもしれないな。中途半端な力を持つことが1番危ないという話は聞くけどこの世界では力を持たない方が危険だ。
それにノノちゃんなら強さを手に入れてもどこかの元皇子のように性格が変わることはないだろう。
「わかった。だけど一人前と認めるまでは俺の指示には絶対に従うこと。いい?」
「うん! お兄ちゃんありがとう!」
ノノちゃん嬉しかったのか可愛らしい笑顔を見せて俺の胸に飛び込んでくる。
すると先日と同じ様に、小さいけど確かに感じることができる柔らかいふくらみを認識してしまう。
こらこらやめなさい。そんなことされたらいつまでもロリコンの称号がなくならないじゃないか。
「それじゃあさっそく今日からレベル上げをしようか」
「けどノノは武器を持ってないし、魔法を使うこともできないよ」
「大丈夫。それは俺が用意するよ」
「本当!」
実はあのアイテムをもらった時から1つ考えていた武器があり、創造創聖魔法で前の世界の本を取り寄せて構造を学んでいたものがある。
「今から作るからちょっと待ってて」
そして俺は探知スキルで周囲に人がいないことを確認し、魔力を集め創聖魔法を唱えるのであった。
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