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尋問

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「こ、こんな所で何をしているんだ⋯⋯」
「ま、まさか魔法を使う気なのか」

 俺の行動に初めてリスティヒが動揺を見せた。

「そういえば言ってなかったけど、俺はやられたことに対しては倍以上で返さないと気が済まないんだ。フレスヴェルグを使って俺を殺そうとしたことを忘れてないからな」
「何を言って⋯⋯」

 これ以上話をすると魔力を集めることに失敗してしまうので、魔法を放つことに集中する。
 高密度の魔力を集めているため両手が輝き始めた。そして更に魔力を集めるため詠唱を口する。

「女神セレスティアの名の元にユートが命ずる⋯⋯我が身我が手に集い⋯⋯」
「ちち、父上! これはフレスヴェルグに放った魔法だ!」
「なんだと!」
「フレスヴェルグでさえ一撃で消滅したんだ。このまま魔法を食らえば私達は⋯⋯」

 リスティヒとグラザムは何とかこの場から離れようとするが、ここは牢獄の中。逃げ場所などどこにもなかった。
 だが二人の思いとは裏腹に、詠唱は続いていく。

「神の一撃を持って⋯⋯」

 ユートの口から発せられる言葉が、二人に取っては死のカウントダウンに聞こえていた。
 そして二人は自分の力ではユートを止めることは出来ないと判断し、他者の力を乞うことにする。

「リズリット! 囚人に対してこのような暴挙が許されるのか! 早くあの小僧を止めろ」

 リスティヒは必死の形相で語りかけるが、リズは澄ました顔で答える。

「女神セレスティア様は仰いました。王国を破滅に追い込み、民に圧政を敷いた愚か者には、天罰が下るでしょうと」
「な、なんだと! それならレッケ! 貴様が止めろ!」
「あ~なんだっけか。女神セレスティア様は言った。国王陛下に逆らった馬鹿者には死が似合っていると」

 リズとレッケさんの言葉を聞いて二人は絶望する。もうこの場には俺を止める者など一人もいない。このまま魔法が完成すれば、二人を待っているのは死だけだ。

「わかった喋る! 喋るから魔法を止めてくれ!」
「なっ! グラザム貴様黙らんか!」
「我が眼前にいる敵を破壊せよ⋯⋯」
「うるさい! 父上はあの魔法を見ていないからそんなことを言えるんだ! 三十メートルはあったフレスヴェルグが一瞬で消滅したんだぞ! あんなもの人が食らえば骨すら残らない。私は喋る! だから助けてくれ!」

 俺はグラザムの言葉を聞いて、両手に魔力を集めるのをやめた。すると魔力は霧散し、両手の光が消失する。

「今の言葉は本当だな?」
「ほ、本当だ! 全て話す!」
「グラザム! これ以上私を失望させるな」
「父親はこう言ってるがどうする?」
「父親は関係ない! ここで殺されるくらいなら知っていることを話した方がマシだ」

 どうやら脅しが上手くいったな。やはり昨日、グラザムに魔法を見せていたことが大きかったようだ。
 だけどそもそも俺は、本気で魔法を放とうなどと思っていない。詠唱もゆっくり口にしていたし、こんな所で魔法を使えば地下は完全に破壊され、生き埋めになってしまうからだ。
 とにかくこれで後はグラザムに真実を話してもらうだけだ。だけどその前に⋯⋯

「レッケさん、リスティヒを別の所に連れていくことは可能ですか?」
「それは可能だが、どうするつもりだ」
「それは後でお話しします」
「わかった」

 レッケさんの指示の元、兵士達がリスティヒを別室へと連れていく。
 そしてこの場には、グラザムだけとなった。

「さて、これでさっきの質問に答えてもらうけど、ここで話したことをこの後リスティヒにもするから。もし発言の内容が食い違えば⋯⋯わかってるよね」
「は、はい! もちろんです!」

 今さら嘘は言わないとは思うけど、一応釘は刺しておく。
 まあリスティヒは何も喋らない可能性が高い気がするけど、今の恐怖に駆られたグラザムには効果的だったようだ。

「なるほど。部屋を別にしておけば口裏合わせが出来ないと言うわけか。相手が何を話しているかわからないから、嘘を話せばすぐにわかる。グラザムを脅している時も思ったが、ユートは拷問官としてもやって行けそうだな」

 何だか不名誉なことを思われているような気がするが、今はグラザムに集中しよう。

「それでは改めて聞くけど、昨日ローレリアの西側で、元よりこの国は滅びる運命だったって言ってたけど、その言葉の意味を教えてくれないか?」
「そ、それは⋯⋯」
「どうやら魔法を食らいたいようだな」
「ひぃぃぃっ! 話します!」

 最初から素直に話せばいいものを。
 俺達はグラザムに注視する。するとポツリポツリと語り始めた。




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