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2話 癒しの家族 その1
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「そうか……イービス・ラウドネス侯爵とは婚約破棄になってしまったか……」
「はい、お父様……申し訳ありませんでした……」
イービス様も苦渋の決断だったのだと思う……私としても彼を強く責めることは出来なかった。パメラ様という幼馴染の存在……それがイービス様にとっては大きな心の拠り所になってしまったのだろうから。私に残ったのは、メンフィス家当主であるラダト・メンフィス……私のお父様への申し訳なさだけだった。
そんな理由があろうとも、結果的に侯爵家との結婚を成就させることが出来なかったのだから……。その部分に関しての私の罪は非常に重いと思う。だからこそ、お父様へは謝罪以外の言葉が出てこなかった。
「ふむ……メンフィス家としては痛手かもしれんな。多かれ少なかれ、婚約破棄をしてしまったという噂は王国全土……主に貴族間には伝わるだろうからな……」
「はい……お父様」
お父様の言う通り、キルシュタイン王国全土に伝わるのも時間の問題だと思われる。メンフィス家はキルシュタイン王国でもそれなりの歴史を積み重ねている家系だ。その歴史は300年以上になる。伯爵家という上流貴族に属しているのもその家系としての歴史の長さがあってのものだと言われている。
元々は一般家系だったメンフィスという地位……300年前に男爵という地位を獲得して着実にその地位を伸ばしているらしい。最終的にはもっと上の地位まで登れたかもしれないけれど……私の失態でそれも潰えてしまったかもしれないわね。
「だがなアテナよ、まだ17歳のお前がそんなことを気にすることはない。メンフィス家は腐っても伯爵の家系だからな。それに……娘に罪を着せる親がどこの世界に居るのだ? 今回の婚約破棄は確かに残念だが……これもお前の成長の糧になるだろう。そう思えばお釣りが来るレベルとも言えるかもしれないな」
「お、お父様……! あ、ありがとうございます……そのようにおっしゃっていただいて、私はとても幸せです……!」
「気にするな、我が愛娘よ。どこの世界に婚約破棄を娘のせいにする親が居るというのだ……まったく」
ああ……私はお父様の言葉で感動のあまり涙が溢れ出し、とても止めることが出来なくなってしまっていた。妹のリーリャに見られたら、とても恥ずかしい事態かもしれないわね。
「リーリャもお前のことをとても心配していたぞ? 会いに行ってやるといい。おそらくは自室に居るはすだからな」
「左様でございますか……畏まりました。それでは早速、会いにいきたいと思います」
そうか、リーリャにも心配を掛けさせてしまったのね。まったく、姉として失格だわ……まだ、14歳の彼女に心配を掛けさせてしまうなんて。早速、会いにいかなくちゃね。と、そんなことを考えていると……お父様の部屋の扉が激しく開かれた。えっ……? 何事……? あまりの事態にお父様の部屋を守護している執事も身構えるほどだった。
しかし、中へと入って来たのは……。
「お、お姉さま~~~~!!」
「り、リーリャ……!!」
あまりの事態にお父様も執事も驚きを隠せない様子だった。でも、おそらく一番驚いていたのは私自身だ……愛すべき妹のリーリャが、びっくりするくらい取り乱しながら、私の胸に飛び込んで来たのだから……。
これが……ええ、私の愛すべき最高の家族なのです……私は改めてそんなことを思っていた。
「はい、お父様……申し訳ありませんでした……」
イービス様も苦渋の決断だったのだと思う……私としても彼を強く責めることは出来なかった。パメラ様という幼馴染の存在……それがイービス様にとっては大きな心の拠り所になってしまったのだろうから。私に残ったのは、メンフィス家当主であるラダト・メンフィス……私のお父様への申し訳なさだけだった。
そんな理由があろうとも、結果的に侯爵家との結婚を成就させることが出来なかったのだから……。その部分に関しての私の罪は非常に重いと思う。だからこそ、お父様へは謝罪以外の言葉が出てこなかった。
「ふむ……メンフィス家としては痛手かもしれんな。多かれ少なかれ、婚約破棄をしてしまったという噂は王国全土……主に貴族間には伝わるだろうからな……」
「はい……お父様」
お父様の言う通り、キルシュタイン王国全土に伝わるのも時間の問題だと思われる。メンフィス家はキルシュタイン王国でもそれなりの歴史を積み重ねている家系だ。その歴史は300年以上になる。伯爵家という上流貴族に属しているのもその家系としての歴史の長さがあってのものだと言われている。
元々は一般家系だったメンフィスという地位……300年前に男爵という地位を獲得して着実にその地位を伸ばしているらしい。最終的にはもっと上の地位まで登れたかもしれないけれど……私の失態でそれも潰えてしまったかもしれないわね。
「だがなアテナよ、まだ17歳のお前がそんなことを気にすることはない。メンフィス家は腐っても伯爵の家系だからな。それに……娘に罪を着せる親がどこの世界に居るのだ? 今回の婚約破棄は確かに残念だが……これもお前の成長の糧になるだろう。そう思えばお釣りが来るレベルとも言えるかもしれないな」
「お、お父様……! あ、ありがとうございます……そのようにおっしゃっていただいて、私はとても幸せです……!」
「気にするな、我が愛娘よ。どこの世界に婚約破棄を娘のせいにする親が居るというのだ……まったく」
ああ……私はお父様の言葉で感動のあまり涙が溢れ出し、とても止めることが出来なくなってしまっていた。妹のリーリャに見られたら、とても恥ずかしい事態かもしれないわね。
「リーリャもお前のことをとても心配していたぞ? 会いに行ってやるといい。おそらくは自室に居るはすだからな」
「左様でございますか……畏まりました。それでは早速、会いにいきたいと思います」
そうか、リーリャにも心配を掛けさせてしまったのね。まったく、姉として失格だわ……まだ、14歳の彼女に心配を掛けさせてしまうなんて。早速、会いにいかなくちゃね。と、そんなことを考えていると……お父様の部屋の扉が激しく開かれた。えっ……? 何事……? あまりの事態にお父様の部屋を守護している執事も身構えるほどだった。
しかし、中へと入って来たのは……。
「お、お姉さま~~~~!!」
「り、リーリャ……!!」
あまりの事態にお父様も執事も驚きを隠せない様子だった。でも、おそらく一番驚いていたのは私自身だ……愛すべき妹のリーリャが、びっくりするくらい取り乱しながら、私の胸に飛び込んで来たのだから……。
これが……ええ、私の愛すべき最高の家族なのです……私は改めてそんなことを思っていた。
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