3 / 11
3話 癒しの家族 その2
しおりを挟む
「お、お姉さま! お姉さま~~~~!!」
お父様の私室に入ってくるなり、リーリャは泣き叫びながら私に抱き着いてきた。いえ、とても嬉しいのだけれど……別にリーリャが泣く事態ではないと思う。いえ、感受性の強い彼女からすれば仕方ないのかもしれないけれど……まだ14歳だしね。
それに、私の身に起きたことについてここまで悲しんでくれるのは素直に嬉しいと言える。逆に考えれば、大切な妹であるリーリャを悲しませてしまって申し訳ないのだけれど……。
「ごめんね、リーリャ……悲しませてしまって。私は……自分の不甲斐なさで婚約を破棄されてしまったのよ」
「ち、違いますよお姉さま! お姉さまが間違ってるなんてあり得ないです! これはきっと、相手方が悪いに決まってます!」
「あっ、そ、それは……」
リーリャはまだ14歳で婚約者なども居ないのだけれど、妙に勘の鋭いところがあった。貴族としての立場を強調する場であるはずのパーティーでも彼女は人気者だったから。なんというか……リーリャは貴族としての才能があるのだと思える。貴族としての才能、という言葉自体がおかしなものだとは思うけれど……とにかく才能があるのだ。
「リーリャ……イービス・ラウドネス侯爵様はとても後悔しているようだったわ。幼馴染であるパメラ様のことが好きになってしまったと私におっしゃった時も非常に、後悔しているような表情だった。私はとても彼を責めることが出来なかったわ……」
「そんな……! それは結局のところ、ラウドネス侯爵の我が儘ではありませんか! 幼馴染を好きになったから婚約を破棄してくれって……そんなの勝手過ぎます!!」
「リーリャ……」
「うむ、まあ確かにその通りなのだがな……」
リーリャの言っていることは間違っていない。むしろ完全な正論とも言えるだろう。お父様も彼女の意見には納得しているようだった。私も本音では二人の意見に賛同はしたいと思っている……でも、イービス様のあの謝罪の表情を思い出してしまうと、どうしても……。
私も本音では悲しみに任せて泣き叫びたいのだ……でも、イービス様の気持ちが分からないわけでもない。私は非常に厳しいところに放り出されていた。
「イービス様は慰謝料などについても、私達の言い値で支払うと言ってくれました。その部分の誠意については、信じても良いと思っております」
「なるほど、そうだったか……。確かに、婚約破棄は貴族の間では時々、行われることではあるからな。正当な慰謝料を支払うというのであれば、それ以上は責められないか」
「そ、そんな……! それではお姉さまがあまりにも……!」
「リーリャ、そこまでにしておいて。あなたの気持ちはとても嬉しいけれど……これが大人の対応というものよ」
「そんな……アテナお姉さま……」
私は苦渋の決断だったけれど、リーリャを黙らせる決断を下してしまった。私は家族に非常に恵まれている、そんな想いも抱きながら。大丈夫……今回の婚約は上手くいかなかったけれど、きっと私にも運命の人が現れるわ。そうやって前向きに生きて行こう。
お父様と妹のリーリャの優しさを感じ、私は元気を取り戻していた。
お父様の私室に入ってくるなり、リーリャは泣き叫びながら私に抱き着いてきた。いえ、とても嬉しいのだけれど……別にリーリャが泣く事態ではないと思う。いえ、感受性の強い彼女からすれば仕方ないのかもしれないけれど……まだ14歳だしね。
それに、私の身に起きたことについてここまで悲しんでくれるのは素直に嬉しいと言える。逆に考えれば、大切な妹であるリーリャを悲しませてしまって申し訳ないのだけれど……。
「ごめんね、リーリャ……悲しませてしまって。私は……自分の不甲斐なさで婚約を破棄されてしまったのよ」
「ち、違いますよお姉さま! お姉さまが間違ってるなんてあり得ないです! これはきっと、相手方が悪いに決まってます!」
「あっ、そ、それは……」
リーリャはまだ14歳で婚約者なども居ないのだけれど、妙に勘の鋭いところがあった。貴族としての立場を強調する場であるはずのパーティーでも彼女は人気者だったから。なんというか……リーリャは貴族としての才能があるのだと思える。貴族としての才能、という言葉自体がおかしなものだとは思うけれど……とにかく才能があるのだ。
「リーリャ……イービス・ラウドネス侯爵様はとても後悔しているようだったわ。幼馴染であるパメラ様のことが好きになってしまったと私におっしゃった時も非常に、後悔しているような表情だった。私はとても彼を責めることが出来なかったわ……」
「そんな……! それは結局のところ、ラウドネス侯爵の我が儘ではありませんか! 幼馴染を好きになったから婚約を破棄してくれって……そんなの勝手過ぎます!!」
「リーリャ……」
「うむ、まあ確かにその通りなのだがな……」
リーリャの言っていることは間違っていない。むしろ完全な正論とも言えるだろう。お父様も彼女の意見には納得しているようだった。私も本音では二人の意見に賛同はしたいと思っている……でも、イービス様のあの謝罪の表情を思い出してしまうと、どうしても……。
私も本音では悲しみに任せて泣き叫びたいのだ……でも、イービス様の気持ちが分からないわけでもない。私は非常に厳しいところに放り出されていた。
「イービス様は慰謝料などについても、私達の言い値で支払うと言ってくれました。その部分の誠意については、信じても良いと思っております」
「なるほど、そうだったか……。確かに、婚約破棄は貴族の間では時々、行われることではあるからな。正当な慰謝料を支払うというのであれば、それ以上は責められないか」
「そ、そんな……! それではお姉さまがあまりにも……!」
「リーリャ、そこまでにしておいて。あなたの気持ちはとても嬉しいけれど……これが大人の対応というものよ」
「そんな……アテナお姉さま……」
私は苦渋の決断だったけれど、リーリャを黙らせる決断を下してしまった。私は家族に非常に恵まれている、そんな想いも抱きながら。大丈夫……今回の婚約は上手くいかなかったけれど、きっと私にも運命の人が現れるわ。そうやって前向きに生きて行こう。
お父様と妹のリーリャの優しさを感じ、私は元気を取り戻していた。
0
お気に入りに追加
945
あなたにおすすめの小説
あなたには、この程度のこと、だったのかもしれませんが。
ふまさ
恋愛
楽しみにしていた、パーティー。けれどその場は、信じられないほどに凍り付いていた。
でも。
愉快そうに声を上げて笑う者が、一人、いた。
愛することをやめたら、怒る必要もなくなりました。今さら私を愛する振りなんて、していただかなくても大丈夫です。
石河 翠
恋愛
貴族令嬢でありながら、家族に虐げられて育ったアイビー。彼女は社交界でも人気者の恋多き侯爵エリックに望まれて、彼の妻となった。
ひとなみに愛される生活を夢見たものの、彼が欲していたのは、夫に従順で、家の中を取り仕切る女主人のみ。先妻の子どもと仲良くできない彼女をエリックは疎み、なじる。
それでもエリックを愛し、結婚生活にしがみついていたアイビーだが、彼の子どもに言われたたった一言で心が折れてしまう。ところが、愛することを止めてしまえばその生活は以前よりも穏やかで心地いいものになっていて……。
愛することをやめた途端に愛を囁くようになったヒーローと、その愛をやんわりと拒むヒロインのお話。
この作品は他サイトにも投稿しております。
扉絵は、写真ACよりチョコラテさまの作品(写真ID 179331)をお借りしております。
悪役断罪?そもそも何かしましたか?
SHIN
恋愛
明日から王城に最終王妃教育のために登城する、懇談会パーティーに参加中の私の目の前では多人数の男性に囲まれてちやほやされている少女がいた。
男性はたしか婚約者がいたり妻がいたりするのだけど、良いのかしら。
あら、あそこに居ますのは第二王子では、ないですか。
えっ、婚約破棄?別に構いませんが、怒られますよ。
勘違い王子と企み少女に巻き込まれたある少女の話し。
忘却令嬢〜そう言われましても記憶にございません〜【完】
雪乃
恋愛
ほんの一瞬、躊躇ってしまった手。
誰よりも愛していた彼女なのに傷付けてしまった。
ずっと傷付けていると理解っていたのに、振り払ってしまった。
彼女は深い碧色に絶望を映しながら微笑んだ。
※読んでくださりありがとうございます。
ゆるふわ設定です。タグをころころ変えてます。何でも許せる方向け。
二度目の婚約者には、もう何も期待しません!……そう思っていたのに、待っていたのは年下領主からの溺愛でした。
当麻月菜
恋愛
フェルベラ・ウィステリアは12歳の時に親が決めた婚約者ロジャードに相応しい女性になるため、これまで必死に努力を重ねてきた。
しかし婚約者であるロジャードはあっさり妹に心変わりした。
最後に人間性を疑うような捨て台詞を吐かれたフェルベラは、プツンと何かが切れてロジャードを回し蹴りしをかまして、6年という長い婚約期間に終止符を打った。
それから三ヶ月後。島流し扱いでフェルベラは岩山ばかりの僻地ルグ領の領主の元に嫁ぐ。愛人として。
婚約者に心変わりをされ、若い身空で愛人になるなんて不幸だと泣き崩れるかと思いきや、フェルベラの心は穏やかだった。
だって二度目の婚約者には、もう何も期待していないから。全然平気。
これからの人生は好きにさせてもらおう。そう決めてルグ領の領主に出会った瞬間、期待は良い意味で裏切られた。
【完結】薔薇の花と君と
ここ
恋愛
公爵令嬢フィランヌは、誤解されやすい女の子。甘やかし放題の家族には何もさせてもらえない。この世のものとは思えぬ美貌とあり余る魔力。
なのに引っ込み思案で大人しい。
家族以外からは誤解されて、ワガママ令嬢だと思われている。
そんな彼女の学園生活が始まる。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる