平凡な私が選ばれるはずがない

ハルイロ

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空間を切り裂き、影の中から現れたミシャは、私達を揶揄うかのように幼い私の姿で現れたものの、姿を消す前より、大分疲弊しているようだった。
いつもある余裕が、今は感じられないのだ。


「忌々しい。青炎の異能に核の一つを潰されるとは。」
ミシャは、怒りを隠す事なく、影から闇の力を溢れさせている。その力が、大地を黒く汚していた。


「魔物の王!お前の不細工なペットは、皆、死んだぞ!さあ、次は、お前の番だ!長きに渡る人類と魔物の戦いに決着をつけよう!」

「お前如きが、我と同等のように振る舞うとはな。ああ、腹立たしい。憎らしい。だが、まあ、いいだろう。青炎の異能者よ、お前は、我がこの手で殺してやろう。フローラの仕置きには丁度良い。お前達は、絶望の中で、苦痛に喘ぎながら死んでいけ!」

ミシャが、ニヤリと口角を上げたのと同時に、ヴェイル様が、剣を抜いて斬りかかる。
その速度が速すぎて、私の目では追えない。ヴェイル様の長剣が、光の軌跡を残しながら何度もミシャに迫った。
そんな中、十歳の少女の姿をしたミシャは、簡易なワンピースの裾を翻し、ヴェイル様の剣筋を避けていた。
暫く、ヴェイル様の攻撃が続いていると、ミシャが頭上に手を翳し、影を集め始めた。その影の塊が、一本の大剣へと姿を変える。そして、次の瞬間には、身の丈以上のそれを、ミシャが振り回し始めた。

ヴェイル様の青炎の剣とミシャの影の剣が、派手にぶつかり、その度に赤い火花を散らす。
その威力は、ぶつかり合う度に激しくなっていった。

その時、ミシャの剣が、ヴェイル様の額を掠った。けれど、ヴェイル様は、何も気にせず地を駆ける。額から流れた血は、ミシャに向かって駆け抜けるヴェイル様の速度に負け、後方に散っていった。

一撃斬り結ぶ度に、一つまた一つと、お互い傷を負っていく。
どちらも致命傷にはならない小傷が増えていく中、先にミシャが動いた。
ミシャが空中に放った大剣が、影に戻って散り散りに四方へ散り、その姿を短剣に変えたのだ。そして、その無数の短剣が、ヴェイル様を狙う。
避ける空間など与えてはくれない残酷な攻撃に、私の足は思わず、ヴェイル様に向かっていた。


「ヴェイル様!」

必死に駆けたところで、私の足では間に合わない。それでも、駆けずにはいられなかった。


駄目!
やめて!

手を伸ばした先に見えたヴェイル様の横顔には、私の心情に反して、余裕の笑みが浮かんでいた。


「油断したな、魔物の王!」

ヴェイル様は、ミシャに向かって青炎を纏った剣を振り下ろした。
青の大火が、ミシャの放った短剣を焼き尽くし、ミシャをも呑み込む。その威力に、湖の水が一気に蒸発し、辺りを霧が包んだ。




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