【本編完結】異世界再建に召喚されたはずなのになぜか溺愛ルートに入りそうです⁉︎【コミカライズ化決定】

sutera

文字の大きさ
471 / 776
第十九章 聖女が街にやって来た

13

しおりを挟む
この広大なルーシャ国の国境のあちこちを巡り、最後は北の果てのダーヴィゼルド領にまで行って来たと言うシェラさんは、

「たった数日留守にしただけだというのにユーリ様が悩み事を抱えてこんなにもお顔を曇らせているとは思いもしませんでした。やはりオレは騎士を辞めてお側にいる方が良さそうですね。」

と私の頬を撫でた。

心配してくれるその気持ちは嬉しいけど無職になるのはまだ早い。慌てて

「いえ!悩んでるってほどじゃないんです。ただ少し心配っていうか気にかかるってだけで・・・」

と大丈夫だとアピールする。そんなに悩んでいるように見えたかな。

「オレがいない間に何がありましたか?」

シェラさんに促されて木に寄りかかって座り込めば、その隣にシェラさんも腰を下ろす。そこで、

王都に張ってある結界に何か異変があったらしいことやシグウェルさんがその原因を探っているのにまだ分からないこと。

ヘイデス国の聖女様に会った後のシグウェルさんの行動がいつもと違うような気がすること。

なによりいつもなら私の力に・・・

今回は私の張った結界だけど、それに何か変化があったならたとえ原因はまだ分からなくても些細なことだろうとシグウェルさんなら何でも報告に来てくれるはずなのに会いに来ないこと。

それをリオン様に相談してみようと思ってもなかなか会えないこと。

そんなあれこれをぽつぽつと話した。

「なるほど。確かに、何かにつけ魔導士院にすぐ篭っては魔法実験に明け暮れる割にユーリ様の所へは足繁く通うシグウェル魔導士団長が明らかに結界に異変が起きているのにユーリ様へその報告をしに来ないのは不思議ですね。」

「シェラさんもそう思います?」

私に会いに来ないなんておかしいと言ったらどんなうぬぼれだと笑われるかと思ったけど、意外と真剣にシェラさんはふうん、と考え込んだ。

「それにあのリオン殿下がユーリ様に会いに来ず、着替えすら従者を通じて取りに来させる?
あり得ないですねぇ、あの殿下なら例え着替えるための僅かな時間でもユーリ様に会えるのならばここに戻って来るはずです。レジナスから連絡は?」

「レジナスさんからも何も・・・。いえ、ヘイデス国はルーシャ国にとっても大事なお客様だって分かってるんです。
だから私なんかよりそちらを優先してもらって当たり前だって分かってはいるんですけど」

だけど何だか不安になる。

体育座りで膝に手を置いて俯き考えている私に、シェラさんは自分の手をそっと重ねて来た。

「ユーリ様、そんなにお気を落とさないで下さい。何よりもユーリ様を大切に思う彼らが会いに来ないというならば、それはきっと何らかの理由があっての、ユーリ様のためです。
まあ万が一の可能性としてはそのヘイデス国の聖女様とやらが殿下らに何かしたのかも知れませんが・・・」

「ええ⁉︎」

何かって何だ。操るとかそんなこと?

青くなった私にシェラさんはくすりと笑う。

「でもユーリ様、お忘れですか?殿下にはユーリ様が与えられた強力なご加護と祝福があります。
それは例え聖女様がどれほど強い力をお持ちでも敵うものではないでしょう?
そんな者にあの殿下が惑わされるはずがありません。」

聖女は神のしもべ、言うなればイリューディア神様の力を授けられたユーリ様よりも格下ですよ、と笑う。

「シグウェル魔導士団長もそうです。あれほどの傑物が聖女様が相手とは言え、そう簡単に惑わされるはずがありません。
レジナスもです。あの真っ直ぐな堅物がユーリ様以外の者に心を動かされるなど絶対にないですよ。ですからもう少し様子を見てみましょう。」

そう言ってよしよしとするように私の手をさすってくれた。

「まあオレとしてはもし本当に万が一の可能性として殿下方が心変わりされたと言うならば、さっさと伴侶の座を退いていただけると嬉しいですが。
そうすればユーリ様は真実オレだけの女神になりますし。」

そうなったら二人だけで王宮を出てどこかに行ってしまうのもいいですねぇ、いっそ国も出ましょうか?
喜んで養いますよといつものあの色気を自重しない笑顔を向けられた。

励ましてくれてちょっと感動したらすぐこれだ。

「相変わらず考えることが極端ですね、ルーシャ国を出るとか、さすがにそんなことまで考えてないですからね?」

呆れたように言えば嬉しそうに微笑まれる。

「そうそう、そのお顔ですよ。いつものユーリ様に戻られたようで良かったです。」

どうやらシェラさんの手のひらの上で転がされて機嫌を取られたらしい。

単純な自分が恥ずかしいけど・・・でもありがとう。

おかげで少し元気が出た。

そこで気分を変えるように私もわざと明るくシェラさんに尋ねる。

「それにしても随分と急な任務であちこち行っていたんですね?ルーシャ国は広いのに大変だったんじゃないですか?」

ああそれは、とシェラさんが教えてくれる。

「少し前から・・・そうですね、オレ達がファレルの神殿へ出掛けた辺りからでしょうか?
その頃から上がって来ていた報告で、国境に突然変異の獣が現れ地方の傭兵や騎士では対処が難しいというものがあったんです。」

「突然変異の獣?魔物や魔獣じゃなくてですか?」

「頭が二つある大熊やよだれを垂らして見境なく人を襲う猪、肉食ではないのに人を喰らう鹿、足が六本あってどんなに槍を刺されても頭を落とすまで人を角で刺し殺そうとしてくる暴れ牛、尾が二つに分かれた食人虎などです。」

いや、突然変異にもほどがあるんじゃないかな?

シェラさんがつらつらと上げた例はどれも異常という言葉で片付けるのも簡単過ぎるくらい異常だった。

「そ、それでも魔獣じゃないんですか?どう聞いてもヘンなんですけど⁉︎」

そう聞いた私にシェラさんは魔力や魔法を持って攻撃して来ないので分類上は獣ですねと言う。

「まあそれでも最初は数が少なく、人数で当たれば何とか対処出来ていたんですが。
そのため様子を見ていました。ですがオレやユーリ様がリオネルの港町に出かけたあたりでしょうか?
その頃になるとキリウ小隊からも何人か派遣をしなければ手がつけられないほど凶暴化した獣が数を増やして国境のあちこちに現れ始めたんですよ」

ファレルの神殿では私達もヨナスの力を鎮めるために大変だったけど、リオネルへ出掛けていた時は完全にリゾートだ。

いや、結果的にタコ足魔物を討伐する騒ぎになっちゃったけど。

そんな大変なことが起きていたなんて知ってたら、のん気にリゾート気分を味わってなんかいなかったよ⁉︎

そう思ってシェラさんを見れば、

「魔物でもないんですから、その程度はオレがわざわざ出ていかなくても対処出来ませんと。
ですがさすがに国境沿いがこれでは戴冠式のためにやって来る他国の招待客達に支障があるということで、一掃するためにオレにも任務が降りてきました。」

おかげでこの短期間であちこちを駆け回る羽目になりましたよ、となんでもなさそうに首をすくめている。

「だけど今ここにシェラさんがいるっていうことは無事に任務を終えたってことですよね?」

え?キリウ小隊の他の隊員さんを含めてみんなが討伐に苦労したその突然変異の獣を本当に一掃して来ちゃったの?この短期間で?

「ある程度はオレが対処して、後は見極めた弱点やコツを他の者達にも教えそれを覚えてもらえば案外どうにかなるものです。
何よりオレにはユーリ様の身辺を整えるという大事な仕事がありますからね、たかが獣ごときにいつまでも構っていられません。」

私の所へ早く戻るために他の人達にも対処の仕方を教えたというけど短期間で凶暴な獣を全滅させるほど実力をつけさせたなら、それはかなりのスパルタになったんじゃないのかな?

地方や国境沿いの傭兵さんや騎士さん達がシェラさんのスパルタで可哀想な目に遭った気がする。

「お疲れ様です・・・」

シェラさんもだけど何よりも他の人達が。

そう思いながら一応疲れているだろうシェラさんに癒しの力を使う。

話しながら膝に置いた私の手を撫でていたシェラさんの手を取り力を使えば、機嫌の良い猫のように目を細めて

「このようなねぎらいをいただけるなど、イリヤ殿下へ任務完了の報告へ行く前に帰って来てすぐにこちらへ直行して良かったです。」

と嬉しそうにされた。

・・・いや、その気持ちはありがたいけどまずはお仕事完了の報告が第一じゃないかな⁉︎







しおりを挟む
感想 191

あなたにおすすめの小説

異世界で目覚めたら、もふもふ騎士団に保護されてました ~ちびっ子だけど、獣人たちの平穏のためお世話係がんばります!!~

ありぽん
ファンタジー
神のミスで命を落とした芽依は、お詫びとして大好きな異世界へ転生させてもらえることに。だが転生の際、またしても神のミスで、森の奥地に幼女の姿で送られてしまい。転生の反動で眠っていた瞳は、気づかないうちに魔獣たちに囲まれてしまう。 しかしそんな危機的状況の中、森を巡回していた、獣人だけで構成された獣騎士団が駆け付けてくれ、芽依はどうにかこの窮地を切り抜けることができたのだった。 やがて目を覚ました芽依は、初めは混乱したものの、すぐに現状を受け入れ。またその後、同じ種族の人間側で保護する案も出たが、ある事情により、芽依はそのまま獣騎士団の宿舎で暮らすことに。 そこで芽依は、助けてくれた獣騎士たちに恩を返すため、そして日々厳しい任務に向かう獣人たちが少しでも平穏に過ごせるようにと、お世話係を買って出る。 そんな芽依に、当初は不安だった獣人たちだったが、元気で明るい瞳の存在は、次第に獣人たちの力となっていくのだった。 これはちびっ子転生者の芽依が、獣人や魔獣たちのために奮闘し、癒しとなっていく。そんな、ほっこりまったり? な物語。

ネグレクトされていた四歳の末娘は、前世の経理知識で実家の横領を見抜き追放されました。これからはもふもふ聖獣と美食巡りの旅に出ます。

旅する書斎(☆ほしい)
ファンタジー
アークライト子爵家の四歳の末娘リリアは、家族から存在しないものとして扱われていた。食事は厨房の残飯、衣服は兄姉のお下がりを更に継ぎ接ぎしたもの。冷たい床で眠る日々の中、彼女は高熱を出したことをきっかけに前世の記憶を取り戻す。 前世の彼女は、ブラック企業で過労死した経理担当のOLだった。 ある日、父の書斎に忍び込んだリリアは、ずさんな管理の家計簿を発見する。前世の知識でそれを読み解くと、父による悪質な横領と、家の財産がすでに破綻寸前であることが判明した。 「この家は、もうすぐ潰れます」 家族会議の場で、リリアはたった四歳とは思えぬ明瞭な口調で破産の事実を突きつける。激昂した父に「疫病神め!」と罵られ家を追い出されたリリアだったが、それは彼女の望むところだった。 手切れ金代わりの銅貨数枚を握りしめ、自由を手に入れたリリア。これからは誰にも縛られず、前世で夢見た美味しいものをたくさん食べる生活を目指す。

なんか、異世界行ったら愛重めの溺愛してくる奴らに囲われた

いに。
恋愛
"佐久良 麗" これが私の名前。 名前の"麗"(れい)は綺麗に真っ直ぐ育ちますようになんて思いでつけられた、、、らしい。 両親は他界 好きなものも特にない 将来の夢なんてない 好きな人なんてもっといない 本当になにも持っていない。 0(れい)な人間。 これを見越してつけたの?なんてそんなことは言わないがそれ程になにもない人生。 そんな人生だったはずだ。 「ここ、、どこ?」 瞬きをしただけ、ただそれだけで世界が変わってしまった。 _______________.... 「レイ、何をしている早くいくぞ」 「れーいちゃん!僕が抱っこしてあげよっか?」 「いや、れいちゃんは俺と手を繋ぐんだもんねー?」 「、、茶番か。あ、おいそこの段差気をつけろ」 えっと……? なんか気づいたら周り囲まれてるんですけどなにが起こったんだろう? ※ただ主人公が愛でられる物語です ※シリアスたまにあり ※周りめちゃ愛重い溺愛ルート確です ※ど素人作品です、温かい目で見てください どうぞよろしくお願いします。

『処刑されるたびに12歳に戻る悪役令嬢、7回目の人生は「何もせず寝て過ごす」ことに決めたら、なぜか周囲が勝手に勘違いして聖女扱いされています

六角
恋愛
公爵令嬢リリアーナは、18歳の誕生日に必ず断罪・処刑されては12歳に戻るという地獄のループを6回も繰り返していた。 真面目に努力しても、剣を極めても、裏社会を支配しても、結局は殺される運命。 心折れた彼女は、7回目の人生でついに決意する。 「もう頑張らない。どうせ死ぬなら、今回はひたすら寝て過ごそう」と。 しかし、安眠を求めて「うるさい」と敵を黙らせれば『王者の覇気』と恐れられ、寝ぼけて放った魔法は『神の奇跡』と崇められ、枕への異常なこだわりは『深遠なる儀式』と誤解されてしまう。 気がつけば、ストーカー気味のヤンデレ王子、パン屋の元ヒロイン、狂犬の如きライバル令嬢、元部下の暗殺者、そして不眠症の魔王までもが彼女の信者となり、リリアーナは意図せずして国を、そして世界を救う「最強の聖女」へと祭り上げられていく。 「お願いだから、私を寝かせて!」 睡眠欲だけで運命(システム)さえもねじ伏せる、無気力悪役令嬢の痛快勘違いサクセス(?)ストーリー!

転移先で日本語を読めるというだけで最強の男に囚われました

桜あずみ
恋愛
異世界に転移して2年。 言葉も話せなかったこの国で、必死に努力して、やっとこの世界に馴染んできた。 しかし、ただ一つ、抜けなかった癖がある。 ──ふとした瞬間に、日本語でメモを取ってしまうこと。 その一行が、彼の目に留まった。 「この文字を書いたのは、あなたですか?」 美しく、完璧で、どこか現実離れした男。 日本語という未知の文字に強い関心を示した彼は、やがて、少しずつ距離を詰めてくる。 最初はただの好奇心だと思っていた。 けれど、気づけば私は彼の手の中にいた。 彼の正体も、本当の目的も知らないまま。すべてを知ったときには、もう逃げられなかった。 毎日19時に更新予定です。

妹なんだから助けて? お断りします

たくわん
恋愛
美しく聡明な令嬢エリーゼ。だが、母の死後に迎えられた継母マルグリットによって、彼女の人生は一変する。実母が残した財産は継母に奪われ、華やかなドレスは義姉たちに着られ、エリーゼ自身は使用人同然の扱いを受ける。そんなある日――。

気がつけば異世界

蝋梅
恋愛
 芹沢 ゆら(27)は、いつものように事務仕事を終え帰宅してみれば、母に小さい段ボールの箱を渡される。  それは、つい最近亡くなった骨董屋を営んでいた叔父からの品だった。  その段ボールから最後に取り出した小さなオルゴールの箱の中には指輪が1つ。やっと合う小指にはめてみたら、部屋にいたはずが円柱のてっぺんにいた。 これは現実なのだろうか?  私は、まだ事の重大さに気づいていなかった。

身代わりで呪いの公爵に嫁ぎましたが、聖女の力で浄化したら離縁どころか国一番の溺愛妻になりました〜実家が泣きついてももう遅い〜

しょくぱん
恋愛
「お前のような無能は、死神の生贄にでもなっていろ」 魔力なしの無能と蔑まれ、家族に虐げられてきた伯爵令嬢レティシア。 彼女に命じられたのは、近づく者すべてを病ませるという『呪いの公爵』アレクシスへの身代わり結婚だった。 鉄格子の馬車で運ばれ、たどり着いたのは瘴気に満ちた死の城。 恐ろしい怪物のような男に殺される――。 そう覚悟していたレティシアだったが、目の前の光景に絶望よりも先に別の感情が湧き上がる。 (な、何これ……汚すぎるわ! 雑巾とブラシはどこ!?) 実は、彼女が「無能」と言われていたのは、その力が『洗浄』と『浄化』に特化した特殊な聖女の魔力だったから。 レティシアが掃除をすれば、呪いの瘴気は消え去り、枯れた大地には花が咲き、不気味だった公爵城はまたたく間にピカピカの聖域に塗り替えられていく。 さらには、呪いで苦しんでいたアレクシスの素顔は、見惚れるほどの美青年で――。 「レティシア、君は一体何者なんだ……? 体が、こんなに軽いのは初めてだ」 冷酷だったはずの公爵様から、まさかの執着と溺愛。 さらには、呪いが解けたことで領地は国一番の豊かさを取り戻していく。 一方で、レティシアを捨てた実家は、彼女の『浄化』を失ったことで災厄に見舞われ、今さら「戻ってきてくれ」と泣きついてくるが……。 「私は今、お城の掃除と旦那様のお世話で忙しいんです。お引き取りくださいませ」 これは、掃除を愛する薄幸令嬢が、その愛と魔力で死神公爵を救い、最高に幸せな居場所を手に入れるまでのお話。

処理中です...