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第十一章 四天王ジャダーカ
直球の告白
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「うわあああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!?」
「え?」
目が合ったと思ったら、ジャダーカと思われる男は、突然悲鳴を上げて逃げ出した。
リィカが一言疑問をつぶやく中、後方にいた魔族の背中に隠れるように、その体を縮めている。
「……………………えーと……」
さすがにその反応は予想外だ。
困っていると、呆れた声が聞こえた。
「ジャダーカ様、なぜ私の後ろに隠れるのでしょうか?」
「い、いや、だって、クナム……、あ、あれ……」
「そうですね、リィカですね。良かったじゃないですか。恋い焦がれた人にやっと会えて」
「こいっ……!? って、クナム! 彼女の前で変な事言うな!」
「変な事も何も、事実じゃないですか」
あー、と声には出ず、リィカは唸る。
完全に忘れてたのが悪かったのだろうが。
(そういえば、一目惚れがどうだとか、言ってたよね……)
勝てない、と言われ続けた事の方が頭に残っていて、そちらは完全に意識の外だった。
真っ赤な顔で、ムキになって言い返しているジャダーカらしい魔族の男……、名前を呼ばれていたし、もうジャダーカでいいか、と顔半分だけ出している男を見る。
目が合うと「うひゃっ」とつぶやいて、顔が隠れた。
ますます、どうしていいか分からない。
少し前まで緊張していたのに、完全にどこかになくなった。
「ほら、ジャダーカ様。彼女が困ってますよ。さっさと告白して、玉砕したらどうですか?」
「こ………っ……!?」
顔は見えないが、悲鳴のような声だけは聞こえる。
困ってると言ってくれるなら、告白もしないで欲しい。
玉砕する、と決めつけているのは面白いが。
「あ、あ、あ、会ったばかりだぞ……。い、い、いきなり、こ、こ、こく……なんか、か、軽い男だと、思われ……」
告白という言葉を言えないらしいジャダーカに、クナムと呼ばれていた男は、遠慮がない。
「今さら何を。アルテミとか、ヤクシャ様やヤクシニー様も、ジャダーカ様がリィカに一目惚れしたことを、ご本人に話してしまってるじゃないですか」
「なぁっ!?」
「あれ? ご存じなかったですか? 言ってませんでしたっけ?」
クナムと呼ばれている男の方が、首を傾げているのを見つつ、リィカは思った。
(これ、いつまで続くのかな)
こんな会話を、いつまで聞いてなければダメなのか。
他人事なら面白いのだろうが、自分のことだと思うと楽しめない。
(もういいから攻撃しちゃおうかな。どうせ戦うんだし)
そんな思考に偏りかけたが、「よぉし」といういささか裏返った声が、リィカの思考にストップをかけた。
ジャダーカが前に出た。
リィカに向けて、一歩ずつ前に出ている。
本来なら警戒しなければ駄目なのだろうが、真っ赤な顔と、手と足が左右同時に前に出ているぎこちない歩き方に、警戒心が湧いてこない。
ジャダーカはきっかり二メートルほど離れて止まると、腰を九十度に折り曲げた。
「リィカ、好きだ! 付き合ってくれ! ……じゃなくて、付き合って下さい!」
「……………………」
何なんだろう。
恋愛漫画のワンシーンのような、この状況は。
正直、ここまでストレートに告白されるとは思わなかった。
ちょっと、ときめいてしまう。
このまま断ってしまうのは申し訳ないと思うような、純真さだ。
「断る」
「え?」
低い声で断ったのは、リィカではない。
ザッと足音を立てて、アレクがリィカの前に立つ。
「リィカは俺の恋人だ。お前の出る幕じゃない。用がそれだけなら、さっさと帰れ」
「え、ちょ、アレク!?」
リィカを押しのけて前に出てきたアレクが、堂々と言い放ったのだった。
「え?」
目が合ったと思ったら、ジャダーカと思われる男は、突然悲鳴を上げて逃げ出した。
リィカが一言疑問をつぶやく中、後方にいた魔族の背中に隠れるように、その体を縮めている。
「……………………えーと……」
さすがにその反応は予想外だ。
困っていると、呆れた声が聞こえた。
「ジャダーカ様、なぜ私の後ろに隠れるのでしょうか?」
「い、いや、だって、クナム……、あ、あれ……」
「そうですね、リィカですね。良かったじゃないですか。恋い焦がれた人にやっと会えて」
「こいっ……!? って、クナム! 彼女の前で変な事言うな!」
「変な事も何も、事実じゃないですか」
あー、と声には出ず、リィカは唸る。
完全に忘れてたのが悪かったのだろうが。
(そういえば、一目惚れがどうだとか、言ってたよね……)
勝てない、と言われ続けた事の方が頭に残っていて、そちらは完全に意識の外だった。
真っ赤な顔で、ムキになって言い返しているジャダーカらしい魔族の男……、名前を呼ばれていたし、もうジャダーカでいいか、と顔半分だけ出している男を見る。
目が合うと「うひゃっ」とつぶやいて、顔が隠れた。
ますます、どうしていいか分からない。
少し前まで緊張していたのに、完全にどこかになくなった。
「ほら、ジャダーカ様。彼女が困ってますよ。さっさと告白して、玉砕したらどうですか?」
「こ………っ……!?」
顔は見えないが、悲鳴のような声だけは聞こえる。
困ってると言ってくれるなら、告白もしないで欲しい。
玉砕する、と決めつけているのは面白いが。
「あ、あ、あ、会ったばかりだぞ……。い、い、いきなり、こ、こ、こく……なんか、か、軽い男だと、思われ……」
告白という言葉を言えないらしいジャダーカに、クナムと呼ばれていた男は、遠慮がない。
「今さら何を。アルテミとか、ヤクシャ様やヤクシニー様も、ジャダーカ様がリィカに一目惚れしたことを、ご本人に話してしまってるじゃないですか」
「なぁっ!?」
「あれ? ご存じなかったですか? 言ってませんでしたっけ?」
クナムと呼ばれている男の方が、首を傾げているのを見つつ、リィカは思った。
(これ、いつまで続くのかな)
こんな会話を、いつまで聞いてなければダメなのか。
他人事なら面白いのだろうが、自分のことだと思うと楽しめない。
(もういいから攻撃しちゃおうかな。どうせ戦うんだし)
そんな思考に偏りかけたが、「よぉし」といういささか裏返った声が、リィカの思考にストップをかけた。
ジャダーカが前に出た。
リィカに向けて、一歩ずつ前に出ている。
本来なら警戒しなければ駄目なのだろうが、真っ赤な顔と、手と足が左右同時に前に出ているぎこちない歩き方に、警戒心が湧いてこない。
ジャダーカはきっかり二メートルほど離れて止まると、腰を九十度に折り曲げた。
「リィカ、好きだ! 付き合ってくれ! ……じゃなくて、付き合って下さい!」
「……………………」
何なんだろう。
恋愛漫画のワンシーンのような、この状況は。
正直、ここまでストレートに告白されるとは思わなかった。
ちょっと、ときめいてしまう。
このまま断ってしまうのは申し訳ないと思うような、純真さだ。
「断る」
「え?」
低い声で断ったのは、リィカではない。
ザッと足音を立てて、アレクがリィカの前に立つ。
「リィカは俺の恋人だ。お前の出る幕じゃない。用がそれだけなら、さっさと帰れ」
「え、ちょ、アレク!?」
リィカを押しのけて前に出てきたアレクが、堂々と言い放ったのだった。
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