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第十一章 四天王ジャダーカ
到着
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「戦況はどうなっている!?」
最終防衛線に到着するやいなや、門番にトラヴィスが問いただす。
門番も、すぐに相手が少将であることに気付いたようで、ビシッと姿勢を正す。
「はっ。現在の所は膠着状態です。魔族の、ジャダーカという男が奥に隠れて魔法を放ってこない今のうちに倒す、と殿下……元帥閣下が総攻撃を仕掛けると……」
その言葉に、トラヴィスは僅かに顔をしかめる。
「勇者一行がこちらに向かうという早馬は、到着しているか?」
「はい。ですが、いつ到着するか分からぬ者を待てないと。魔法を使ってこない今がチャンスだと、そう仰いまして……」
舌打ちをしたくなる。防御して耐えて待て、と言いたい。
だが、自分が勇者一行と行動を共にしているからこそ思う事であって、もしこちらに残っていたなら、ルベルトスと同じ考えに至ることは、容易に想像できた。
「このまま通るぞ」
門番に言って、馬車はそのまま中へと入っていった。
※ ※ ※
馬車の中から外を見ていたアレクとバル、ユーリも、僅かに顔をしかめていた。
「アレク、防衛線の構築に使われている石は……」
「ああ。あの灰色の石……ドールス・ラピスだな」
「これを、魔法の一撃で壊したんですか?」
口々に言う三人に、残ったリィカと暁斗、泰基も外を見る。
灰色の、背が高く厚い壁が、延々と続いている。
少し離れた所に見える、周りの壁より少し背の高い建物は砦だろう。
「この防衛線に使われているドールス・ラピスって石は、強度と耐久性が一番強い、とされている石だ」
アレクが解説を始めた。
その声も表情も苦々しい。
「普通に魔法や剣技で攻撃しただけでは、傷もつかない。だからこそ、こうして防衛線の構築にも使われているんだろうが……」
「でも、ジャダーカは魔法の一撃で破壊したって……」
「普通に魔法を放っただけでは、絶対にできませんよ」
リィカの言葉に答えたのはユーリだった。
表情は険しい。
「おそらく、リィカの《水蒸気爆発》も耐えるでしょうね。それでも、何発も打ち込めば穴を開けるくらいはできるかもしれませんが、一発で壊すなど無理な話です」
リィカの表情も険しくなる。
ここに至るまでに混成魔法を色々編み出してきたが、その中でも《水蒸気爆発》は威力が強い魔法だ。
それでも無理と言われれば、リィカにはジャダーカと同じ事はできないと言う事になる。
散々勝てないと言われ続けてきたことを、否が応でも思い出してしまう。
近づいてくる喧噪に、リィカは大きく深呼吸した。
※ ※ ※
一行が馬車から降り立ったそこは、すでに戦場だった。
大勢の人間と魔族がぶつかり合っている。
「ジャダーカは……」
見渡すが、リィカも誰もジャダーカの顔を知っているわけではない。
見たところで分かるはずもなかった。
「殿下!!!」
悲鳴のような声が響いて、そちらに視線を向ける。
後ろ姿だけで顔は見えないが、長大な剣を持っている人物が、地面に座り込んで動かない。
「ルベルトス殿下!」
トラヴィスが、バスティアンが叫んで、それで後ろ姿の男性が誰なのか分かった。
その男性に向けて、魔法が放たれた。
(《水蒸気爆発》だ!)
リィカはすぐにそれを察した。
そして、その人物の正面にいるのは、魔族だ。
長い耳、白い肌。白い髪は短く、精悍な顔つきをしている。
(きっと、あいつがジャダーカだ!)
何の理由もなく、リィカはそれを確信する。
右手を前に出し、魔法を放った。
「《水蒸気爆発》!」
魔族の男が放った魔法めがけて放ったリィカの魔法は、狙い違わず命中する。
爆発が起こって、ルベルトスが吹き飛ばされたのは分かったが、おそらく命に別状はないはず。
リィカは、ルベルトスに視線すら向けなかった。
魔族の男を真っ直ぐに見据える。
目が合った魔族の男は、目を見開いた。
最終防衛線に到着するやいなや、門番にトラヴィスが問いただす。
門番も、すぐに相手が少将であることに気付いたようで、ビシッと姿勢を正す。
「はっ。現在の所は膠着状態です。魔族の、ジャダーカという男が奥に隠れて魔法を放ってこない今のうちに倒す、と殿下……元帥閣下が総攻撃を仕掛けると……」
その言葉に、トラヴィスは僅かに顔をしかめる。
「勇者一行がこちらに向かうという早馬は、到着しているか?」
「はい。ですが、いつ到着するか分からぬ者を待てないと。魔法を使ってこない今がチャンスだと、そう仰いまして……」
舌打ちをしたくなる。防御して耐えて待て、と言いたい。
だが、自分が勇者一行と行動を共にしているからこそ思う事であって、もしこちらに残っていたなら、ルベルトスと同じ考えに至ることは、容易に想像できた。
「このまま通るぞ」
門番に言って、馬車はそのまま中へと入っていった。
※ ※ ※
馬車の中から外を見ていたアレクとバル、ユーリも、僅かに顔をしかめていた。
「アレク、防衛線の構築に使われている石は……」
「ああ。あの灰色の石……ドールス・ラピスだな」
「これを、魔法の一撃で壊したんですか?」
口々に言う三人に、残ったリィカと暁斗、泰基も外を見る。
灰色の、背が高く厚い壁が、延々と続いている。
少し離れた所に見える、周りの壁より少し背の高い建物は砦だろう。
「この防衛線に使われているドールス・ラピスって石は、強度と耐久性が一番強い、とされている石だ」
アレクが解説を始めた。
その声も表情も苦々しい。
「普通に魔法や剣技で攻撃しただけでは、傷もつかない。だからこそ、こうして防衛線の構築にも使われているんだろうが……」
「でも、ジャダーカは魔法の一撃で破壊したって……」
「普通に魔法を放っただけでは、絶対にできませんよ」
リィカの言葉に答えたのはユーリだった。
表情は険しい。
「おそらく、リィカの《水蒸気爆発》も耐えるでしょうね。それでも、何発も打ち込めば穴を開けるくらいはできるかもしれませんが、一発で壊すなど無理な話です」
リィカの表情も険しくなる。
ここに至るまでに混成魔法を色々編み出してきたが、その中でも《水蒸気爆発》は威力が強い魔法だ。
それでも無理と言われれば、リィカにはジャダーカと同じ事はできないと言う事になる。
散々勝てないと言われ続けてきたことを、否が応でも思い出してしまう。
近づいてくる喧噪に、リィカは大きく深呼吸した。
※ ※ ※
一行が馬車から降り立ったそこは、すでに戦場だった。
大勢の人間と魔族がぶつかり合っている。
「ジャダーカは……」
見渡すが、リィカも誰もジャダーカの顔を知っているわけではない。
見たところで分かるはずもなかった。
「殿下!!!」
悲鳴のような声が響いて、そちらに視線を向ける。
後ろ姿だけで顔は見えないが、長大な剣を持っている人物が、地面に座り込んで動かない。
「ルベルトス殿下!」
トラヴィスが、バスティアンが叫んで、それで後ろ姿の男性が誰なのか分かった。
その男性に向けて、魔法が放たれた。
(《水蒸気爆発》だ!)
リィカはすぐにそれを察した。
そして、その人物の正面にいるのは、魔族だ。
長い耳、白い肌。白い髪は短く、精悍な顔つきをしている。
(きっと、あいつがジャダーカだ!)
何の理由もなく、リィカはそれを確信する。
右手を前に出し、魔法を放った。
「《水蒸気爆発》!」
魔族の男が放った魔法めがけて放ったリィカの魔法は、狙い違わず命中する。
爆発が起こって、ルベルトスが吹き飛ばされたのは分かったが、おそらく命に別状はないはず。
リィカは、ルベルトスに視線すら向けなかった。
魔族の男を真っ直ぐに見据える。
目が合った魔族の男は、目を見開いた。
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