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心得2.「客のことを詮索しない」

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カイは、最近のモヤモヤの原因がわかった。
ヒューゴに彼女ができた。それはいい。ただ、惚気を聞かされるのは胃がもたれる。
ヒューゴもカイに感謝してるので、仕事は順調だ。仕事は。
仕事を終えて最愛の彼女に会いに行こうとする友人の変貌ぶりに、なんかこうモヤモヤする。前なら飲みに行ったりしてたからか。
別に自分も恋人が欲しいというわけではないし、羨ましいというよりは面倒くさそうだなと思う。

カイは東洋にルーツのある家系で、騎士団では小柄なほうだ。長い黒髪を一つの三つ編みにして垂らしている。
素早さにおいてはヒューゴが駆け出して剣を使うのは一番早い。
カイは、音もなく間合いに入り体術で相手を仕留める。人混みのなかで犯人を捕まえるのならカイの方が早い。
狭い隙間も通れる。
「あ、こうやって関節を外して、ずらして、ほら」

レクチャーされた騎士団員は、酸っぱいものを食べたような表情になった。
教えてもらっても出来ることとできないことがある。
そんなと特殊体質のこともあり、間諜や潜伏任務を主にしている。
独自のコミュニティもあり、情報を集めるのにも適している。表情は細い目のせいもあり、なかなか読み取らせない。いつも笑っているように見える。

髪型のせいか、隙間をすり抜ける細い柔らかい身体のせいか、感情の変化や温度を感じさせないせいか、

いつしか、蛇のような男と呼ばれるようになっていた。

本人はしつこくないつもりだが、陰湿な感じがある。
ヒューゴも無口で孤高の存在だったので、二人は少し浮いていた。
なので、どちらからともなくつるむようになり、酒を飲んだり娼館にいくような仲になった。

あ、久しぶりに行こう

そういえば最近娼館に行ってなかった。、このモヤモヤを晴らそうと思った。

ヒューゴは律儀なので娼館に菓子折りを持っていったらしい。のし紙の『お世話になりました』の文字を見て女将さんや娼婦たちがほっこり癒されていた。
菓子折りもらったのは初めてよ、と。しかも珍しい高級菓子だったらしい。
意外と弟みたいに可愛がられるキャラだったんだな、あいつ。実際に姉がいるって言ってたっけ。

俺も年上が好みかな、楽だし。
今日は年上の色っぽい人に癒してもらおう。

そんなことを思いながら足を運んだ。
なのに。

何で頭のおかしいガキに絡まれてんのかなオレ。

以前、ヒューゴに聞かれたことがある。
「カイは普段あまり東方のイントネーション出さないんだな。酔ったら時々でるけど」

「そうだな。無意識に切り替わるみたいだ。酔った時と、キレた時と、女を抱く時に出てるみたいだな。俺自身覚えてない時もある」

ーーーーーー
あ、今のオレどれかな、と一瞬思った。

「カイさんですよね!
細くて早くてすぐ終わっちゃうって聞いたので私の理想なんです、抱いてください」


「は?なんやて?」

馴染みの娼館で今日は誰にしようか考えているときに、袖を引かれて見下ろしたら小さい女にそう言われた。

とても
不名誉なことを
キラキラした目で

言われた気がする

旦那がスライディング土下座をキメたし、女将が娘の口をふさいでいるし他の娼婦たちもバタバタ騒いでるので、聞き間違いではなかったらしい。

周りが慌てると逆に冷静になる。仕事で培った。

「お前、始めて見る顔だな」

「はい!」

「申し訳ありません、この娘はまだ店にだす前で……」

「そうか。ではこの娘が言った俺の情報はこの店の総意か、」

店が潰される!
旦那と女将は悲鳴をあげそうになった。
「めめめめめめっそうもございません」

「前金だ。この娘、明日の夜まで」

「え」

「まさかカイ様気に入ったので?」

おい旦那。そんなわけあるか。

「いや。一応念のために聞いておくが、仕込みはすんでるのか」

「カイ様、その子はまだ」

姐さんたちの中から、声があがる

「一応は、大丈夫です」
女将が震えながら言った。

娘の手をつかんだ。

「部屋で、詳しく聞かせてもらおか、お嬢ちゃん」

娘は、予定外だというような狼狽えた顔をした。

もう遅いわ。
逃さん。

歩くのも遅いから、肩に担いだ。

「リナ……!」

「あの子、勘違いしてるんです、女将さん」

「私、リナがそんなつもりだと思ってなくて、カイさまの閨のことなんて言ってません。騎士としての評判を……」

女将は額に手をおいて首をふった。
「もう私らに出来ることはないよ。せめて気に入ってくださったらいいけど」

「カイ様は無理よ……」

「初心者にはキツイわ」

「エグいわ」

「トラウマになるわよ」

「明日の夜までって言ってたわね。リナ……」







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