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巡り合い

第522話

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 技術の再生を始めたのは帝国の脅威が去ったのもあるけれど、レモン以外にも特産品を!というのが本音のようだ。
 レモン国の国王様は不屈の精神の持ち主のようです。

 シャムスとアー君がお世話になったようだし、もうちょっと力になってあげたいな。
 何かないかなぁ?

 楽し気な宴を眺めながら悩んでいたら、なぜか汗をかいているギレンがやってきた。

「俺も混ぜてくれ」
「ギレン」
「アカーシャただいま」

 自然に唇を寄せ合って目の前でキスされた。
 ひゃぁぁぁ、異世界文化ぁぁ。

 アカーシャがいた場所にギレンが座り、アカーシャはギレンの膝の上に座った。

「餅の差し入れだ、搗き立てだから美味いぞ」

 席の中央にお皿を置きかけたギレンだけど、神薙さんがそわっと動いたのに気付いたのか丸く捏ねた餅が乗ったお皿は僕に手渡された。
 正しい判断だと思います。

「搗き立て?」
「庭で餅つき実演やりながら配ってるんだよ、ずっとやってたから流石に交代してきた」

 鉄板焼きや餅つき、中庭では色々やってるんだなぁ。
 僕も見に行きたい。

「ご馳走様、皆で食べさせてもらうね」
「イツキー!」
「俺も俺も」

 小さく細い体の白ちゃんと黒ちゃんが真っ先にすり寄ってきた。

「そう言えば黒様、結婚したんだって?」
「おう! 白のエヴァにも負けない美人! 全部俺の色!」
「じゃあ結婚祝いにこれを受け取ってくれ」

 ざるに乗せられた魚は二種類、鮮やかな赤い鱗の目がぎょろっとしてちょっと怖い魚と、照り焼きやカルパッチョにして食べるブリの二種類。
 他には肉とプリン、お茶の全五種類がギレンから黒ちゃんに贈られた。

 今日は地球からの輸入品多いなぁ。

(ひょおおおお、のどぐろとブリじゃねぇか! 肉は能登牛、お茶は加賀棒茶、そうなるとあのプリンは――金沢プリン! イツキ、私が調理するからそれ渡して!)

 いや、女神様料理しないでしょ?
 僕にしか聞こえないからって堂々と横領宣言しないでください。

(あー金沢に遊びに行きたい、次の休暇もらえる日って来ると思う?)
(真面目に働いていればそのうちもらえるかと)

 今の調子じゃ難しそうですけどね。
 ん?
 金沢?
 そっか、これぞまさに天啓、正しき神託。

「アラン、レモン国の特産品思いついた!」
「本当か!?」
「女神様お仕事ですよ!」
「えぇぇぇ」

 隣の席から嫌そうな声が響いてきた。

「アー君お願い」
「ヴィシュタル」
「はい! すみません!」

 光の速さで女神様が現れた。

「金沢の文化、丸っとアランの国に伝授してください」
「いや、日本の伝統文化だぜ? こっちで再現しても意味な……」
「地球に行かなくても旅行が楽しめますよ!」
「……私色に染まってきたな、嬉しいぜ! 任せな! 明日授けてくる!」
「忘れたらアー君に制裁してもらいますけど、キチンと仕事してくれたら高級お節出します」
「イツキちゃんっ!! 私、頑張るから!」

 よろしくお願いします。

「これでシャムスとアー君がお世話になったお礼は出来たかな?」
「過剰だと思う」

 現実味がないのだろう、アランが呆然としている。

「イツキ、このプリンたくさん出せる? 二つしかなくて食べたら命がない、お茶あげるから出して」

 涙目の黒ちゃんが膝に頭を乗せてきた。
 魚はイネス、肉は銀狼親子、プリンは雷ちゃんに狙われているようです。
 神薙さんはギレンが餅を出したのを見て席を立ったから、恐らく庭に餅を貰いに行ったんだと思う、いたら怖がる暇もなく食べつくされていただろうなぁ。

 メニュー画面を開いて金沢プリンを大量に出し、黒ちゃんのおすそ分けという形で皆に配りました。
 これで他の食材を忘れてもらえるといいけど、どうだろう?
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