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可愛い子には旅をさせよ

第305話

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 こちらに向かって爆走する戦車に向かって突撃すれば、衝突事故は免れないのは当然。

「イツキ!!!」

 ぶつかる!と思った瞬間、身体が誰かに抱き上げられて高く飛び上がった。

「気持ちは分かるけどな、落ち着け」

 僕をお姫様抱っこで救出し、海面に華麗に着地したのはレイアさんでした。
 やだ男前。
 物語の王子様よりカッコイイ。

「ごめんなさい」
「今回だけだぞ説教しないのは」
「はぁい」

 抱っこされたまま海面を移動し、砂浜へとそのまま運ばれた。

「っく、俺の出番が」
「残念だったな」

 悔しがる騎士様にレイアさんがにやりと笑みを返した。
 本当にカッコイイ。

『かあしゃま!!』
『母上、母上!』
「かあさま!」
「ママーーー!」
「うおーーーん!」

 砂浜に敷かれた敷布の上に下ろされると同時に子供達に襲撃された。

『だいじょうぶ? おけがない?』
『調子に乗ってヒッポカムポスで登場して悪かった! ヨムの下僕に良いと思って、あと海面を走ったらシャムスが喜ぶと思ったんだ! レイアの方が喜んでたけど!』
「脈は速いですが外傷なし、腰が抜けているだけですね」
「ママ死なないで、万が一があっても冥府から連れ戻して貰えば大丈夫ですからね、あっ、春日様に蘇らせてもらう方が早いかな?」
「まま、ごめんなさい、喜んでくれると思ったんだ」

 一斉に喋られて一部聞き取れないよ、心配してくれているのは伝わってくるけどね。

『あー、安心したら腹減った~、船旅は楽しかったが食事がなぁ』

 思う存分僕の頬にすりすりして安心したのだろう、アー君が一歩下がってへにょっと笑いながらお腹をさすさすしている。
 お腹空いたのかな?

「今日のお昼はバーベキューなんだよ、皆で食べようね」
『あい!』
「だから、三匹は離れようね」

 服の下に潜りこみ、乳を吸っていた三匹を引き剥がし、近くで苦笑いしていた刀雲に引き渡す。
 ここで魔力枯渇起こしたら、嬉々として騎士様が助けに来るよ、レイアさんが居るからさすがに青カンはないと思うけど油断大敵。

「シャムス、アー君、おいで」
『はーい』
『お腹空いたー』

 三匹を両肩と頭に乗せた刀雲がシャムスを右に、アー君を左腕に抱き上げる。
 羨ましい!
 でもまぁ腰が抜けたばっかりでフラフラしている僕じゃ抱っこ出来ないんだけどね、そっと支えてくれているイブの優しさがありがたい。

 あれ?

 さっき「かあさま」って呼ばれたような。

「シャムス、旅は楽しかったか?」
『楽しかったの。でも母様も刀雲も居なかったから、ちょっと寂しかったよ』
「俺達も寂しかったよ。アカーシャ達にお手紙だそうな、きっと早く課題を終えて合流してくれる」
『会いたいねー』

 賑やかさが嬉しい。

 シャムス、アー君、おかえり。

「……もしや全員我が兄弟?」
「どさくさに紛れて樹の乳を吸ってた銀狼三匹が長子、黒いケモミミが六男のシャムス、雷ちゃんのパパに当たるタイガがシャムスのすぐ下、ブルーのリボンの子豹のイネスは十人目だったかなぁ?」
「? ????」
「ちなみに樹と神薙の間に生まれた邪神の子がヨムちゃん、雷ちゃんのすぐ上のお兄ちゃんに当たる子だよ」
「お前……もう少し、世界きちんと管理しろ、な?」
「雷ちゃん、いきなり真顔で諭さないで」
「難しい話は後だ。飯食おうぜ、神薙に食べつくされる前に」
「レイアの言う通りだね、食べよう」
「ふむ、異論はない」

 僕らがわちゃわちゃやっている間に神薙さんが肉を食べ尽くしてしまい、ヨムちゃんと白ちゃんが狩った魚がなかったら僕らは野菜と鉄板焼きだけになる所だった。

 でもギレンが差し入れてくれたあれこれは全滅でした。
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