神様のポイント稼ぎに利用された２

可愛い子には旅をさせよ

第306話

　半馬半魚の海馬ヒッポカムポス。
　前身は馬、胴体の後半が魚の尾。
　たてがみがヒレ状になっている他、前足には水掻きが付いている。
　神話で戦車をひく役割を主に担う。

　以上が女神様の知識。

　彼らが言うにはふわっとした感じでこの世界に生まれ、安住の地を求めて群れで移動していたらアー君に出会いそのまま捕まったみたい。

「人聞きが悪いぞ母上、仕事と引き換えに安住の地を与えたんだ。悪い事はしていない、だからおやつ減らさないで」
「騎士様、ジャッジをお願いします」
「そうねぇ、獣族を隷属させて『物』のように扱うのは禁じているけど、相手の意思を確認、納得を得られた上での労働なら問題ないよ。実際、もふもふズもお小遣い欲しさに働いてるしね」

　あの子達、僕よりお金の使い方上手なんだよね。
　そう言えば今回、僕ってお金使っただろうか……う、うーん？

「住処は洞窟とかどうかな？」

　ヒッポカムポスの永住許可が下りた所でアー君が住処の提案をした。
　その横でシャムスが月餅を食べながら尻尾をぱたぱたさせている。

「シャムスあんこが付いてるよ」
『ん、取って』
「はい綺麗」
「……母上、我も汚れた」

　何を思ったのか、雷ちゃんが頬っぺたにあんこを盛大に付けた。
　今わざと付けたよね、小さいお手手にあんこが残ってるよ～。

「雷ちゃんおぎょーぎ悪いの、お兄ちゃんの刑！」
「わぅわぅ！！」
「ぎょわあああ」

　いけー！というシャムスの号令と共にワンコ三兄弟が雷ちゃんに飛び掛かり、顔と手をべろんべろんと舐め尽くしている。
　平和な刑だなぁ。

「パパ、洞窟」
「うんいいよ、作りましょう。白ちゃん、領地の一部使っていーい？」
「いいぞー、賃貸料は洞窟で採れる魔石なー」

　賃貸料取るんだ。
　しっかりしてるなぁ。

「魔石ね、どんなのがいい？」
「んー、魔力さえこもってればいいぞー、砕いてトレントの肥料に使うんだ」
「魔石美味しいよね」
「とと様にもお裾分けするな」
「ありがと」

　神薙さんがたまにボリボリと何かをおやつ代わりに食べている事があるんだけど、まさかあれが魔石だったのだろうか。
　えぇぇぇ、何でも食べるとは思ってたけど、鉱物も食べるの？

「シャムス、これでまた戦車に乗れるぞ！」
『わーい』

　こうして作られた洞窟がヒッポカムポスの住処になった。
　基本的なお仕事はシャムスら子供達が望んだ時に戦車を引く事、それ以外は他の人間を乗せてお小遣い稼ぎしても良し、何もせずのんびり暮らしても良し、基本的には洞窟で魔石を育てて白ちゃんに納品すれば自由に暮らしていいみたい。

　中にはレイアさんの影響を受けて荒っぽい方向に覚醒した子もいて、その子達はギレンに引き取られる事になった。
　海賊の皆さんと海の平和を守るらしい。