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1章「桜の鬼と百合の約束」
11.浄霊師の先輩
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「ホンマに、お前がねえ……」
「お前がって、なんやねん」
俺なんかクラス落ちてしまえーとか思ってたんか!? と睨み付けると、三和は面倒臭い奴、という顔をした。
「鬼神さま鬼神さまってうるさかったから、いつかはやれるようになるんやろとは思っとった。けど、こんなに早いとは思わんかったから、正直驚いたわ」
昨日と同じ時間に登校した誉は、また警備員のおじちゃんに空いている所を教えてもらった。そこに自転車を停めていた時に、三和に肩を叩かれた。
今日もあの先輩たちがじゃれ合いをしているのか、列が全く進んでいない。近所迷惑にはならないのだろうか、と心配してしまう程に騒いでいる。
「俺、部活終わってすぐに学校の裏山で除霊したんやで。なのに二番って、おかしいやろ。誰やねんそんな超速で終らせた奴! と思ってな、先生に訊きに行ったんや。そしたらお前やったから、さらに驚いた」
「驚いたんは分かった。でも、なんで自分が二番だって分かったん?」
別に一番! なんて数字とか出えへんかったのに、と誉は首を傾げた。
「光の色や」
「光の色?」
「そうや。お前の、金色やったやろ?」
金色やったっけ? と誉は思い出そうとする。
「……覚えてへん……」
だが、鬼神さまに会えたことばかりに気がいってしまっていて、何色だったかなど、よく覚えていなかった。
「記憶力悪いなー。そんなんやったら、これから苦労すんで」
「うるさいなー。三和は何色やってん」
自転車からスポーツバッグを取り出し、はすかけにする。
「銀色」
「えーっ、金銀銅?」
「そうウチの親父が言っとった」
金狙っとったのに、と残念そうに零す三和が向かっていくのは、あの急な坂だ。誉が嫌そうな顔をしていることに気付いていないのか、気付かないフリをしているのか、三和は涼しい顔で上がっていく。
「あ。おい、日諸祇、早う上がってきー」
「そんなことっ言われても、無理やって」
途切れ途切れに言いながらも、階段を上る。寝不足の体には、激しすぎる運動だ。上がり終えると、下よりもさらに騒がしかった。
「今日はやっとるみたいやで」
黒い学生鞄を地面に置き、イス代わりにして座っている三和の隣まで行く。同じようにスポーツバッグをイス代わりにして座る。すると、丁度垣根と垣根の間から、見ることができた。
「おー、すげえ」
「…………三和」
垣根を掻き分け、目を凝らせて見ていた誉は、顎に手を当てて見ていた三和を振り返った。
「これ、なにしてんのん?」
「はあ? なにしてるって、見たら分かるやろ」
もう一度先輩たちの方を見てから、誉は首を横に振る。
「全く分からへん」
「なんで」
「なんや、多谷先輩が手ぇ振ったり、空気を切ったりしてんのんと、伊瀬先輩がなんかブツブツお経みたいなのを唱えてんのは分かるんやけど……」
そう正直に告白すると、三和は片方の眉根を下げる。
「日諸祇、まさかとは思うけど、自分視えへんのんとちゃうやろな」
「ゴメン、多分なんも見えてへん」
乾いた笑いを零すと、三和が頭を抱えた。
「ど、どうしたん三和!」
「こんなんに負けた自分が嫌になってきたわ」
「気持ちは分かるけど、そんなこと言わんといてやー」
三和は立ち上がった。
「見えないんやったら意味ないし、教室行こう」
「うん」
立ち上がって、スポーツバッグを肩がけにする。名残惜しくて、二人の方を見ると、
「昨日も言ったけど、あの二人は毎日やっとるから。視れるようになったら、また来たらええ」
三和が苦笑しながら教えてくれた。
「そ、そうやな」
颯爽と歩いていく三和の後ろを追っていく。
「お前がって、なんやねん」
俺なんかクラス落ちてしまえーとか思ってたんか!? と睨み付けると、三和は面倒臭い奴、という顔をした。
「鬼神さま鬼神さまってうるさかったから、いつかはやれるようになるんやろとは思っとった。けど、こんなに早いとは思わんかったから、正直驚いたわ」
昨日と同じ時間に登校した誉は、また警備員のおじちゃんに空いている所を教えてもらった。そこに自転車を停めていた時に、三和に肩を叩かれた。
今日もあの先輩たちがじゃれ合いをしているのか、列が全く進んでいない。近所迷惑にはならないのだろうか、と心配してしまう程に騒いでいる。
「俺、部活終わってすぐに学校の裏山で除霊したんやで。なのに二番って、おかしいやろ。誰やねんそんな超速で終らせた奴! と思ってな、先生に訊きに行ったんや。そしたらお前やったから、さらに驚いた」
「驚いたんは分かった。でも、なんで自分が二番だって分かったん?」
別に一番! なんて数字とか出えへんかったのに、と誉は首を傾げた。
「光の色や」
「光の色?」
「そうや。お前の、金色やったやろ?」
金色やったっけ? と誉は思い出そうとする。
「……覚えてへん……」
だが、鬼神さまに会えたことばかりに気がいってしまっていて、何色だったかなど、よく覚えていなかった。
「記憶力悪いなー。そんなんやったら、これから苦労すんで」
「うるさいなー。三和は何色やってん」
自転車からスポーツバッグを取り出し、はすかけにする。
「銀色」
「えーっ、金銀銅?」
「そうウチの親父が言っとった」
金狙っとったのに、と残念そうに零す三和が向かっていくのは、あの急な坂だ。誉が嫌そうな顔をしていることに気付いていないのか、気付かないフリをしているのか、三和は涼しい顔で上がっていく。
「あ。おい、日諸祇、早う上がってきー」
「そんなことっ言われても、無理やって」
途切れ途切れに言いながらも、階段を上る。寝不足の体には、激しすぎる運動だ。上がり終えると、下よりもさらに騒がしかった。
「今日はやっとるみたいやで」
黒い学生鞄を地面に置き、イス代わりにして座っている三和の隣まで行く。同じようにスポーツバッグをイス代わりにして座る。すると、丁度垣根と垣根の間から、見ることができた。
「おー、すげえ」
「…………三和」
垣根を掻き分け、目を凝らせて見ていた誉は、顎に手を当てて見ていた三和を振り返った。
「これ、なにしてんのん?」
「はあ? なにしてるって、見たら分かるやろ」
もう一度先輩たちの方を見てから、誉は首を横に振る。
「全く分からへん」
「なんで」
「なんや、多谷先輩が手ぇ振ったり、空気を切ったりしてんのんと、伊瀬先輩がなんかブツブツお経みたいなのを唱えてんのは分かるんやけど……」
そう正直に告白すると、三和は片方の眉根を下げる。
「日諸祇、まさかとは思うけど、自分視えへんのんとちゃうやろな」
「ゴメン、多分なんも見えてへん」
乾いた笑いを零すと、三和が頭を抱えた。
「ど、どうしたん三和!」
「こんなんに負けた自分が嫌になってきたわ」
「気持ちは分かるけど、そんなこと言わんといてやー」
三和は立ち上がった。
「見えないんやったら意味ないし、教室行こう」
「うん」
立ち上がって、スポーツバッグを肩がけにする。名残惜しくて、二人の方を見ると、
「昨日も言ったけど、あの二人は毎日やっとるから。視れるようになったら、また来たらええ」
三和が苦笑しながら教えてくれた。
「そ、そうやな」
颯爽と歩いていく三和の後ろを追っていく。
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