【R-18】上司と継弟に求められて~私と彼と彼の爛れた生活~

臣桜

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サロメとヨカナーン

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 田町の両親が家を空けがちなのをいい事に、来る日も来る日も、あいつらは俺を弄び続けた。

 昼間は普通に学校に通って勉強し、放課後は見たくもない女の裸を見せつけられ、搾取される。

 プライドがズタズタになり自我が崩壊しかけても、夕貴を守るという想いだけが俺の心に残っていた。

 ――が、それを嘲笑うように、ある日、田町の家に高瀬が現れた。

『……どう、……して……』

 田町に跨がられていた俺は、呆然と目を見開いて彼女を見る。

 一瞬感じたのは、『こんなところを見られたら、嫌われる!』という恐怖だった。

 だが高瀬の歪んだ笑みを見て、すぐに自分が間違えていた事を知る。

『遅いじゃん、高瀬~!』

 田町の仲間の一人が言い、彼女は無邪気に笑う。

『こういうのはちょっと遅れて現れたほうが、亮のショックが大きくなるかと思って』

『…………は?』

 ――なに言ってんだ? こいつ。

 高瀬は目を丸くして固まっている俺の顔に、自分の顔を近づけて囁いた。

『私ね、当て馬にされた事、許した訳じゃないの。こう見えてプライドの高い女なんだよ。亮が私に土下座して謝るまで、一生許さない』

 高瀬は目を見開き、爬虫類のように俺を凝視して言う。

 その直後、クシャッと笑って俺にキスをした。

『でも私の処女をもらってくれるなら、許してあげる。お姉さんより先に結ばれるの。あははっ』

 彼女の壊れた笑顔を見た瞬間、すべてを理解した。

 高瀬は俺が夕貴を想っている事を田町に教え、情報提供の報酬として〝おこぼれ〟をもらう約束をしたのだ。

『……ハゲワシかよ……』

 涙を一粒流し、嗤った俺に、高瀬は微笑んで言い返した。

『失礼だね、私は亮の運命のつがいだよ』

 こんな状況で〝運命〟という言葉を使う高瀬は、もうとっくにおかしくなっていたのだろう。

 その時に頭をよぎったのは、彼女から時々相談されていた家庭の悩みだ。

 高瀬の両親は、政治家の父親と医師の母親。

 だが長男は両親の期待にプレッシャーを感じて自死し、遺された高瀬は兄の代わりにがむしゃらに勉強に打ち込んだ。

 しかし父は浮気をして家庭を顧みず、母親は高瀬に『一番でありなさい』と言って厳しく接し続ける。

 努力してもすべてにおいて一番になれない高瀬は、母親から叱責され、冷たく当たられ続けていた。

《亮の家、親が再婚同士なの? 家にいづらくない? 私と一緒だね》

 高瀬と話すようになった当初、俺に共通点を見いだした彼女は、必要以上の仲間意識を醸し出してくるようになった。

《私たちは魂の片割れ。私たちだけがお互いを分かり合えるの》

 そう言っていた高瀬の言葉を、俺は話半分に聞いていた。

 確かに俺も、新しい家族ができたばかりで多少の居心地の悪さを感じている。

 しかし家族には何も期待せず、高瀬だけを選ぶかと言われれば違う。

 俺と高瀬の間には、絶対的な温度差があった。

 けれど彼女はすべてを自分の都合のいいように解釈し、俺は彼女を傷つけたくなくて言葉を否定しなかった。

 否定しなかったが肯定もせず、ただ黙っていたのが最悪な結果を生んでしまった。

 ――分かっていたようで、こうなる事を予測できずにいた。

 ――それも、俺の甘さだ。

 呆然とした俺の目から涙が零れる。

 高瀬はまるでサロメのように俺の両頬に手を添え、陶酔しきった顔でキスをした。

 ――俺は彼女の誘惑を断り続けた、ヨカナーンだ。

 理解した瞬間、俺は可笑しくなって小さく笑い始めた。

『んふふっ、亮も嬉しいの? やっと私たち、一緒になれるね』

 半身が温かい肉に包まれるのを感じながら、俺は自分が犯した罪を痛感する。

 ――こうなったのはすべて、俺のせいだ。

 ゆるゆると、意識が生温かい闇の中に包まれていく。

 ――もう、どうでもいい。

 抵抗する気力もなくなった俺は、されるがままになっていた。





『ねぇ、亮。大丈夫?』

 夕貴の声が聞こえてハッとすると、自室のベッドの横に夕貴が立ち、心配そうな顔をして俺の額に手を当てていた。

『傘、どこかに忘れてきたの? ずぶ濡れになって帰ってきて……、熱あるんじゃない?』

 地獄から帰宅した俺は、学校に傘を忘れたまま歩いて家に帰り、Tシャツとスウェットズボンに着替えたあと、髪が濡れたのを放置してベッドに潜り込んでいた。
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