【R-18・連載版】部長と私の秘め事

臣桜

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親友の恋 編

宜しくお願いします!

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「……別れる時は、なるべくダメージのない方法で伝えてくれますか?」

 それを聞き、私は昭和のコントみたいにずっこけそうになった。

「付き合う前から別れる時の事を考えたら駄目だよ」

「……でも、怖い」

 今まで見た事のない、強張った顔をした恵を見て、キュンッと胸を撃ち抜かれた。

「可愛いっ!」

 ギュッと恵を抱き締めると、「はいはい」と背中をポンポンされる。

 抱き合っている私と恵を見て、涼さんは「ふむ……」と腕を組み顎に手をやる。

「恵ちゃんは思っているより、繊細さんなんだね」

 それを聞き、恵はギクリと身を強張らせる。

「……め、面倒な女だと思いますよ。ほら、初めて付き合う女は重たいって言うじゃないですか。引き返すなら今ですよ」

 恵は必死に、付き合わずに済む方法を見つけようとしている。

(涼さんに惹かれてるのは見え見えなのに……)

 なんと言おうか迷っていると、涼さんはニコッと笑って言った。

「いいね。余計に燃える。傷付いて人間不信になっている仔猫を保護した気分だ。これから沢山お世話をして、フッカフカの美猫にできると思うと楽しみだ」

 大物だ……!

 ……というか、私も尊さんにこんな事を言われたような気がする。

 尊さんと付き合う前、私は昭人にフラれ、彼が結婚すると聞いてボロボロになっていた。

 やけっぱちになって飲んでいたところを、尊さんにお持ち帰りされた訳で……。

 私も恵も、ある意味似た者同士だったから、仲良くやれてきたんだと思う。

 どこか傷付いて繊細な部分があるから、お互いの弱点を庇って慰め合える。そんな親友同士だった。

 尊さんと付き合う前までは、『男なんていいよね』と親友二人で気ままにデートし、気兼ねない付き合いを楽しんでいた。

 でも今、私は尊さんと付き合って大切にされ、愛情を掛けられて涼さんの言うフカフカの猫になった。

 最近、恵がちょっと私に対して遠慮がちになったように思えたのは、『以前の朱里と違う』という戸惑いと諦め、寂しさがあったからだと思う。

 けれど、親友として恵に同じ場所にいてほしくない。

 一歩前に出て、同じように愛される事を知って、「幸せだね」って言い合いたい。

「……ねぇ、恵。お付き合いしてみようよ。私だって、相手は皆大好き速水部長だよ? めっちゃ気が引けたよ。でも、捨てられる事なく今に至ってる。それは恵も分かってるでしょ?」

 私は恵の手を握り、彼女の横顔を見つめて言う。

「捨てられる事なく」のところで、視界の端で尊さんがギョッとしたのが見えたので、あとでフォローしておこう。

「涼さんは格好いいし、御曹司だし、気が引けるよね。でもこんなにハイスペックな人なら、わざわざ『付き合いたい』って言わなくても軽く手玉にとるなんて朝飯前だと思う。本当に悪い男はね、捨てる時に『付き合おうなんて言わなかった』って言うもんだよ」

 そう言うと、恵は「確かに」と頷いた。

「涼さんはサプライズしてまで、恵を好きだって意思表示してる。その本気具合を信じてみようよ。それで、これから本当の意味でダブルデートしよう? 最初がダブルデートなら、手を繋いでシーを回るのだって、ちょっと気楽になるじゃん」

 恵は明日もこのデートが続くのだと思い出し、「あああ……」と両手で頭を抱える。

 そのあと溜め息をつき、私の手を握ってきた。

 彼女は顔を真っ赤にし、意を決したように涼さんを見る。

「……き、傷つけないって約束してくれるなら」

 それを聞き、涼さんはニッコリ笑った。

「何が嫌かは今は分からないから、沢山話そう。それで、信じてもらえないようだったら、契約書を作ってもいい。俺は約束を破らないし、恵ちゃんを大切にする。でも恵ちゃんもなるべく思っている事や『こうしてほしい』って望みがあったら口にして。お互い意見を言い合わないと、対等な恋人にはなれないから」

 まっとうな事を言う涼さんの言葉を聞き、私は「彼なら大丈夫だな」と安心した。

 沢山傷付いて人間不信気味になっている尊さんの親友という時点で、最初のハードルは越えていて、彼が私たちに紹介しようと思ってくれるほどの人だ。

 尊さんは、最初からこの二人が付き合うとは思っていなかっただろうけど、「もしかしたら気が合うかもしれない」と思った可能性はある。

 彼は問題のある人を私の親友に紹介する人ではないから。

(涼さん、お願いします)

 私は彼に微笑み、トンと恵の背中を叩く。

 ――大丈夫だよ。

 その想いが通じたからか、恵は息を震わせながら吐き、バッと手を差しだした。

「宜しくお願いします!」

 彼女の姿を見て、私たち三人は一瞬固まる。

 涼さんから「付き合おう」と言っているのに、なぜか恵から申し込んでいるからだ。

 そのあと三人で顔を見合わせ、破顔した。
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