【R-18・連載版】部長と私の秘め事

臣桜

文字の大きさ
409 / 778
親友の恋 編

メッセージプレート

しおりを挟む
 フレンチのお店らしく、盛り付けはとても綺麗で私と恵ははしゃいで写真を撮った。

 恵に至っては、はしゃぐ事でお照れを忘れようとしているらしく、いつになくハイテンションだ。

 しかし、私は彼女の左手の薬指に嵌まっている指輪を見逃さなかった。あとで尋問ですな。

 前菜は真鯛とアスパラを使ったカルパッチョ風のサラダから始まり、次の一皿は新鮮で大きな帆立を海鮮のお出汁のスープと、それで作ったエスプーマ(泡)とキャヴィアをのせたもの。

 スープは香りのいいキノコを使ったコンソメスープ、魚料理は平目は皮目をパリッと、身はふっくらジューシーにソテーしたもの、メインは仔羊のローストに筍や緑鮮やかな豆類を添えたものが出され、写真に収めつつ、料理を平らげていく。

 デザートは旬の夏みかんとジュレ、バニラアイスの盛り合わせだ。

 なんと、デザートにはチョコレートソースでメッセージが書かれてあった。しかも私のにも、恵のにもだ。

 私のプレートには『Happy 5 month anniversary』と書いてあり、付き合って五か月記念を祝ってくれている。

 そして恵のプレートには……『Will you go out with me?』と書かれてある。

(『僕と付き合ってくれますか?』キター!!)

 それを見た私は、自分のプレートのメッセージより興奮してしまい、無言でブンブンと手を振って恵の顔を見る。

 意味を理解した恵は、顔を真っ赤にしてプレートを睨んでいる。

 彼女が返答に窮している間、尊さんがニコッと笑って私に言った。

「朱里、五か月付き合ってくれてありがとう。これからも宜しくな」

「はい!」

 元気よく返事をした私は、グリンッと恵のほうを見てキラキラと目を輝かせる。

「……そんな目ぇしても、何も出ないから」

 恵は私の額に掌を押しつけ、グイッと押す。

「ありゃー」

 私はそう言って一旦引き下がるものの、ニヤニヤがノンストップだ。

「恵は涼さんと親睦を深めたの?」

 ズバッと尋ねると、俯いて指輪を気にしていた彼女は、バッと手を隠そうとして――、テーブルの裏に手をぶつけて「いてっ」と声を上げた。

「だ、大丈夫? ごめん……」

 私は申し訳なくなって恵の肩をさする。

「大丈夫……」

 恵は返事をしたあと、チラッと涼さんを見てモゴモゴと何か言おうとする。

 ――と、恵の代わりに涼さんが言った。

「俺、恵ちゃんと付き合いたいと思ってる」

 スパンッと言われ、恵はこれ以上ないぐらい目をまん丸に見開いた。

 私は声なき声で「キャーッ!!」と叫び、シパパパパパと小さく拍手する。

 恵は真っ赤な顔で泣きそうになり、今にも席を立とうとしていたけれど、グッと堪えた。偉い!

「……わ、私は……」

 恵は何か言おうとし、俯く。

 そんな彼女に涼さんは優しく声を掛けた。

「こういう事、慣れてないよね。困らせてごめん。でも初めてのデートが夢の国なら、ロマンチックな事をしておかないと損じゃないか」

 というか、ランドに来て顔を合わせて話すまでは、涼さんは恵と付き合いたいなんて思っていなかったはずだ。

 恵が嵌めてる指輪もメッセージプレートも、行動が速い。

 ……というか、尊さんも一枚噛んでるのかな。だったら納得だけど。

 そして尊さんが言っていた事が本当なら、涼さんがここまで女性に構うのは初めてという事になる。それを不発に終わらせたら可哀想だ。

「……ねぇ、恵。恥ずかしいの分かるけど、夢の国の恥は掻き捨てしちゃおうよ。カチューシャだって被ったじゃん」

 恵は物言いたげな目で私を見てから、溜め息をついて言った。

「……私、分からない事だらけなんだ。初対面の相手に付き合ってって言われてびっくりしてるし、『よりどりみどりな人がなんで私を?』って思うし、戸惑ってばっかり」

 彼女の気持ちが分かる私は、うんうんと頷きつつ恵の二の腕をさする。

「私と尊さんの始まりも割と突然だったよ。酔っていたとはいえ、結構押し流されちゃったところはあるし。……でも、付き合ってみないと分からない事って沢山あると思う」

 私の言葉を聞いて、恵はコクンと頷く。

 その時、尊さんが言った。

「涼を胡散臭く思う気持ちは分かる。初対面で付き合おうって言われるなんて、ホラーだよな。……でも中村さんは俺の事をある程度信頼してくれていると思う。その俺が言う。涼はいい奴だし、これと決めたら裏切らないよ」

 私たちの励ましを聞いたあと、恵はおずおずと涼さんを見た。
しおりを挟む
感想 2,452

あなたにおすすめの小説

偽装夫婦

詩織
恋愛
付き合って5年になる彼は後輩に横取りされた。 会社も一緒だし行く気がない。 けど、横取りされたからって会社辞めるってアホすぎません?

3歳児にも劣る淑女(笑)

章槻雅希
恋愛
公爵令嬢は、第一王子から理不尽な言いがかりをつけられていた。 男爵家の庶子と懇ろになった王子はその醜態を学園内に晒し続けている。 その状況を打破したのは、僅か3歳の王女殿下だった。 カテゴリーは悩みましたが、一応5歳児と3歳児のほのぼのカップルがいるので恋愛ということで(;^ω^) ほんの思い付きの1場面的な小噺。 王女以外の固有名詞を無くしました。 元ネタをご存じの方にはご不快な思いをさせてしまい申し訳ありません。 創作SNSでの、ジャンル外での配慮に欠けておりました。

壊れていく音を聞きながら

夢窓(ゆめまど)
恋愛
結婚してまだ一か月。 妻の留守中、夫婦の家に突然やってきた母と姉と姪 何気ない日常のひと幕が、 思いもよらない“ひび”を生んでいく。 母と嫁、そしてその狭間で揺れる息子。 誰も気づきがないまま、 家族のかたちが静かに崩れていく――。 壊れていく音を聞きながら、 それでも誰かを思うことはできるのか。

大丈夫のその先は…

水姫
恋愛
実来はシングルマザーの母が再婚すると聞いた。母が嬉しそうにしているのを見るとこれまで苦労かけた分幸せになって欲しいと思う。 新しくできた父はよりにもよって医者だった。新しくできた兄たちも同様で…。 バレないように、バレないように。 「大丈夫だよ」 すいません。ゆっくりお待ち下さい。m(_ _)m

今さらやり直しは出来ません

mock
恋愛
3年付き合った斉藤翔平からプロポーズを受けれるかもと心弾ませた小泉彩だったが、当日仕事でどうしても行けないと断りのメールが入り意気消沈してしまう。 落胆しつつ帰る道中、送り主である彼が見知らぬ女性と歩く姿を目撃し、いてもたってもいられず後を追うと二人はさっきまで自身が待っていたホテルへと入っていく。 そんなある日、夢に出てきた高木健人との再会を果たした彩の運命は少しずつ変わっていき……

病弱な私と意地悪なお姉様のお見合い顛末

黒木メイ
恋愛
幼い頃から病弱だったミルカ。外出もまともにできず、家の中に引きこもってばかり。それでもミルカは幸せだった。家族が、使用人たちがいつもミルカの側にいてくれたから。ミルカを愛してくれたから。それだけで十分――なわけないでしょう。お姉様はずるい。健康な体を持っているだけではなく、自由に外出できるんだから。その上、意地悪。だから、奪ったのよ。ずるいお姉様から全てを。当然でしょう。私は『特別な存在』で、『幸せが約束されたお姫様』なんだから。両親からの愛も、次期当主の地位も、王子様も全て私のもの。お姉様の見合い相手が私に夢中になるのも仕方ないことなの。 ※設定はふわふわ。 ※予告なく修正、加筆する場合があります。 ※いずれ他サイトにも転載予定。 ※『病弱な妹と私のお見合い顛末』のミルカ(妹)視点です。

リリー・フラレンシア男爵令嬢について

碧井 汐桜香
恋愛
王太子と出会ったピンク髪の男爵令嬢のお話

地味な私を捨てた元婚約者にざまぁ返し!私の才能に惚れたハイスペ社長にスカウトされ溺愛されてます

久遠翠
恋愛
「君は、可愛げがない。いつも数字しか見ていないじゃないか」 大手商社に勤める地味なOL・相沢美月は、エリートの婚約者・高遠彰から突然婚約破棄を告げられる。 彼の心変わりと社内での孤立に傷つき、退職を選んだ美月。 しかし、彼らは知らなかった。彼女には、IT業界で“K”という名で知られる伝説的なデータアナリストという、もう一つの顔があったことを。 失意の中、足を運んだ交流会で美月が出会ったのは、急成長中のIT企業「ホライゾン・テクノロジーズ」の若き社長・一条蓮。 彼女が何気なく口にした市場分析の鋭さに衝撃を受けた蓮は、すぐさま彼女を破格の条件でスカウトする。 「君のその目で、俺と未来を見てほしい」──。 蓮の情熱に心を動かされ、新たな一歩を踏み出した美月は、その才能を遺憾なく発揮していく。 地味なOLから、誰もが注目するキャリアウーマンへ。 そして、仕事のパートナーである蓮の、真っ直ぐで誠実な愛情に、凍てついていた心は次第に溶かされていく。 これは、才能というガラスの靴を見出された、一人の女性のシンデレラストーリー。 数字の奥に隠された真実を見抜く彼女が、本当の愛と幸せを掴むまでの、最高にドラマチックな逆転ラブストーリー。

処理中です...