135 / 416
仕事始め 編
チェックアウト
しおりを挟む
朝食は洋食にし、私はバターの香りがするクロワッサンの香りをうっとりして嗅ぎ、噛み締めるように食べていた。
「お前、本当に美味そうに食うなぁ」
尊さんは笑顔で言い、スマホを手に取って私の写真を撮ってきた。
「だって本当に美味しいんですもん……。このオムレツて見てくださいよ。焼きムラのない綺麗な黄色で、表面はトゥルンッ! なのに中は綺麗に半熟トロトロで……、芸術……」
言いながら、私はオムレツに向かって小さく拍手をする。
そのあと、「あ」と言って彼に尋ねた。
「前から尊さんとデートして、ちょいちょい写真撮ってますけど、SNSに投稿して大丈夫です?」
「別に全然構わねぇけど」
「あっ! 勿論、尊さんは写ってません! ホテルの部屋の中とか、ご飯写真とかだけです」
「いや、だから全然いいって」
「それにね! 私、尊さんとのデート用に新しくアカウント作ったんです」
立ちあがった私は、彼の側まで行ってスマホを見せる。
「普段使ってるアカウントは会社の人も割と知ってるんですが、ほら、こっちはフォロワーゼロ」
そう言って、私はお花のアイコンのアカウントを見せる。
そのお花はスイートルームに飾ってあった花を写したもので、花のアイコンならありふれているだろうという考えからだ。
「あー……。見事に飯メインだな」
スマホの画面を覗き込んだ尊さんは、私のアカウントの投稿を見て感心したように言う。
「いいじゃないですか。美味しくて綺麗なご飯! 見て嬉しい、食べて嬉しい!」
「どこの呼び込みだよ」
笑いながら尊さんは私の背中をポンポンと叩く。
「……というか、俺も朱里との思い出を記録するアカウント作ろうかな」
彼がボソッと言ったものだから、私は目を輝かせて反応してしまった。
「ぜひ! そんで相互フォローになりましょう!」
「えぇ……」
「何で嫌そうなの!? 酷い!」
私は「ブーブー」と言って親指を下に向ける。
「こら、そんな真似しなくていい」
尊さんは私の手を握ってポンポンと叩いてから、「席に戻って飯の続き」と言ってパンとお尻を叩いてきた。
私は唇を尖らせて席に戻り、熱々のコーンスープが少し冷めたのを確かめてスプーンで飲む。
尊さんも食事を再開したけど、やがてボソッと言った。
「……照れくさいだろ。文章で惚気るつもりはねぇけど、写真からでも俺の目線とか分かっちまうし」
「……それはぜひ見たいです」
にんまりと笑って言うと、尊さんは珍しく照れたらしく、顔の前でパタパタと手を振った。
「んふふ……」
私はニマニマしながら、ボイルされたソーセージを囓ったのだった。
**
長い一月六日が終わり、七日の十時前に私たちはホテルをチェックアウトした。
チェックアウトの際に尊さんがフロントに行くと、そのタイミングで亘さんの第三秘書の男性が歩み寄ってきた。
どうやらロビーで私たちを待っていたらしい。
「社長から、支払いは請け負うとの言伝を承りました」
「そうか、じゃあ任せた」
尊さんはサラッと返事をしたあと、私の手を握って出入り口に向かって歩きだす。
秘書さんに会釈をした私は、チラチラと彼を振り返りながら進む。
「コケるぞ」
けれど尊さんに言われたあとは、振り向かずに歩いた。
そのあと、私たちはハイヤーで尊さんのマンションに戻った。
年末からずっと彼と一緒に過ごしていたけれど、明日には自分の家に戻って出社する準備をしなければならない。
「名残惜しいけど、日常があるから非日常を楽しめるんですよね」
尊さんのマンションでコーヒーを飲みつつ言うと、「だな」と彼が頷く。
「……なんか、考える事が色々ありますね」
「お前、本当に美味そうに食うなぁ」
尊さんは笑顔で言い、スマホを手に取って私の写真を撮ってきた。
「だって本当に美味しいんですもん……。このオムレツて見てくださいよ。焼きムラのない綺麗な黄色で、表面はトゥルンッ! なのに中は綺麗に半熟トロトロで……、芸術……」
言いながら、私はオムレツに向かって小さく拍手をする。
そのあと、「あ」と言って彼に尋ねた。
「前から尊さんとデートして、ちょいちょい写真撮ってますけど、SNSに投稿して大丈夫です?」
「別に全然構わねぇけど」
「あっ! 勿論、尊さんは写ってません! ホテルの部屋の中とか、ご飯写真とかだけです」
「いや、だから全然いいって」
「それにね! 私、尊さんとのデート用に新しくアカウント作ったんです」
立ちあがった私は、彼の側まで行ってスマホを見せる。
「普段使ってるアカウントは会社の人も割と知ってるんですが、ほら、こっちはフォロワーゼロ」
そう言って、私はお花のアイコンのアカウントを見せる。
そのお花はスイートルームに飾ってあった花を写したもので、花のアイコンならありふれているだろうという考えからだ。
「あー……。見事に飯メインだな」
スマホの画面を覗き込んだ尊さんは、私のアカウントの投稿を見て感心したように言う。
「いいじゃないですか。美味しくて綺麗なご飯! 見て嬉しい、食べて嬉しい!」
「どこの呼び込みだよ」
笑いながら尊さんは私の背中をポンポンと叩く。
「……というか、俺も朱里との思い出を記録するアカウント作ろうかな」
彼がボソッと言ったものだから、私は目を輝かせて反応してしまった。
「ぜひ! そんで相互フォローになりましょう!」
「えぇ……」
「何で嫌そうなの!? 酷い!」
私は「ブーブー」と言って親指を下に向ける。
「こら、そんな真似しなくていい」
尊さんは私の手を握ってポンポンと叩いてから、「席に戻って飯の続き」と言ってパンとお尻を叩いてきた。
私は唇を尖らせて席に戻り、熱々のコーンスープが少し冷めたのを確かめてスプーンで飲む。
尊さんも食事を再開したけど、やがてボソッと言った。
「……照れくさいだろ。文章で惚気るつもりはねぇけど、写真からでも俺の目線とか分かっちまうし」
「……それはぜひ見たいです」
にんまりと笑って言うと、尊さんは珍しく照れたらしく、顔の前でパタパタと手を振った。
「んふふ……」
私はニマニマしながら、ボイルされたソーセージを囓ったのだった。
**
長い一月六日が終わり、七日の十時前に私たちはホテルをチェックアウトした。
チェックアウトの際に尊さんがフロントに行くと、そのタイミングで亘さんの第三秘書の男性が歩み寄ってきた。
どうやらロビーで私たちを待っていたらしい。
「社長から、支払いは請け負うとの言伝を承りました」
「そうか、じゃあ任せた」
尊さんはサラッと返事をしたあと、私の手を握って出入り口に向かって歩きだす。
秘書さんに会釈をした私は、チラチラと彼を振り返りながら進む。
「コケるぞ」
けれど尊さんに言われたあとは、振り向かずに歩いた。
そのあと、私たちはハイヤーで尊さんのマンションに戻った。
年末からずっと彼と一緒に過ごしていたけれど、明日には自分の家に戻って出社する準備をしなければならない。
「名残惜しいけど、日常があるから非日常を楽しめるんですよね」
尊さんのマンションでコーヒーを飲みつつ言うと、「だな」と彼が頷く。
「……なんか、考える事が色々ありますね」
37
お気に入りに追加
816
あなたにおすすめの小説
【R18】もう一度セックスに溺れて
ちゅー
恋愛
--------------------------------------
「んっ…くっ…♡前よりずっと…ふか、い…」
過分な潤滑液にヌラヌラと光る間口に亀頭が抵抗なく吸い込まれていく。久しぶりに男を受け入れる肉道は最初こそ僅かな狭さを示したものの、愛液にコーティングされ膨張した陰茎を容易く受け入れ、すぐに柔らかな圧力で応えた。
--------------------------------------
結婚して五年目。互いにまだ若い夫婦は、愛情も、情熱も、熱欲も多分に持ち合わせているはずだった。仕事と家事に忙殺され、いつの間にかお互いが生活要員に成り果ててしまった二人の元へ”夫婦性活を豹変させる”と銘打たれた宝石が届く。
【R-18】悪役令嬢ですが、罠に嵌まって張型つき木馬に跨がる事になりました!
臣桜
恋愛
悪役令嬢エトラは、王女と聖女とお茶会をしたあと、真っ白な空間にいた。
そこには張型のついた木馬があり『ご自由に跨がってください。絶頂すれば元の世界に戻れます』の文字が……。
※ムーンライトノベルズ様にも重複投稿しています
※表紙はニジジャーニーで生成しました
イケメン彼氏は年上消防士!鍛え上げられた体は、夜の体力まで別物!?
すずなり。
恋愛
私が働く食堂にやってくる消防士さんたち。
翔馬「俺、チャーハン。」
宏斗「俺もー。」
航平「俺、から揚げつけてー。」
優弥「俺はスープ付き。」
みんなガタイがよく、男前。
ひなた「はーいっ。ちょっと待ってくださいねーっ。」
慌ただしい昼時を過ぎると、私の仕事は終わる。
終わった後、私は行かなきゃいけないところがある。
ひなた「すみませーん、子供のお迎えにきましたー。」
保育園に迎えに行かなきゃいけない子、『太陽』。
私は子供と一緒に・・・暮らしてる。
ーーーーーーーーーーーーーーーー
翔馬「おいおい嘘だろ?」
宏斗「子供・・・いたんだ・・。」
航平「いくつん時の子だよ・・・・。」
優弥「マジか・・・。」
消防署で開かれたお祭りに連れて行った太陽。
太陽の存在を知った一人の消防士さんが・・・私に言った。
「俺は太陽がいてもいい。・・・太陽の『パパ』になる。」
「俺はひなたが好きだ。・・・絶対振り向かせるから覚悟しとけよ?」
※お話に出てくる内容は、全て想像の世界です。現実世界とは何ら関係ありません。
※感想やコメントは受け付けることができません。
メンタルが薄氷なもので・・・すみません。
言葉も足りませんが読んでいただけたら幸いです。
楽しんでいただけたら嬉しく思います。
【R18】鬼上司は今日も私に甘くない
白波瀬 綾音
恋愛
見た目も中身も怖くて、仕事にストイックなハイスペ上司、高濱暁人(35)の右腕として働く私、鈴木梨沙(28)。接待で終電を逃した日から秘密の関係が始まる───。
逆ハーレムのチームで刺激的な日々を過ごすオフィスラブストーリー
法人営業部メンバー
鈴木梨沙:28歳
高濱暁人:35歳、法人営業部部長
相良くん:25歳、唯一の年下くん
久野さん:29歳、一個上の優しい先輩
藍沢さん:31歳、チーフ
武田さん:36歳、課長
加藤さん:30歳、法人営業部事務
男友達を家に入れたら催眠術とおもちゃで責められ調教されちゃう話
mian
恋愛
気づいたら両手両足を固定されている。
クリトリスにはローター、膣には20センチ弱はある薄ピンクの鉤型が入っている。
友達だと思ってたのに、催眠術をかけられ体が敏感になって容赦なく何度もイかされる。気づけば彼なしではイけない体に作り変えられる。SM調教物語。
夫の色のドレスを着るのをやめた結果、夫が我慢をやめてしまいました
氷雨そら
恋愛
夫の色のドレスは私には似合わない。
ある夜会、夫と一緒にいたのは夫の愛人だという噂が流れている令嬢だった。彼女は夫の瞳の色のドレスを私とは違い完璧に着こなしていた。噂が事実なのだと確信した私は、もう夫の色のドレスは着ないことに決めた。
小説家になろう様にも掲載中です
マッサージ師にそれっぽい理由をつけられて、乳首とクリトリスをいっぱい弄られた後、ちゃっかり手マンされていっぱい潮吹きしながらイッちゃう女の子
ちひろ
恋愛
マッサージ師にそれっぽい理由をつけられて、乳首とクリトリスをいっぱい弄られた後、ちゃっかり手マンされていっぱい潮吹きしながらイッちゃう女の子の話。
Fantiaでは他にもえっちなお話を書いてます。よかったら遊びに来てね。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる