【R-18・連載版】部長と私の秘め事

臣桜

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十二年越しの愛 編

これからはお前のために生きていく

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「……ん……」

 意識が浮上し、私は小さくうめいて目を覚ます。

 身じろぎすると、ポンと頭を撫でられた。

「みこと……、さん……」

 ムニャムニャ言いながら彼のほうを向くと、薄闇の中で尊さんが微笑んでいるのが分かった。

「もうちょっと寝ろ」

「はい……」

 尊さんが側にいると知った私は、安心して目を閉じ、彼に抱きついて眠りの淵に意識を落とした。



**



 ボーッとしていると、テレビのニュースが聞こえてくる。

「んー……、んうぅぅうう……」

 私はうなりながら手を伸ばし、側にいた尊さんに抱きつく。

「お前、寝起きはムニャムニャ言ってて、寝ぼけた猫みたいだな」

 もう尊さんは起きているようで、ベッドのヘッドボードにもたれかかってテレビを見ていた。

 彼の手元にはスマホがあり、何やら操作している。

「目が覚めるまで、食いたいもんの事でも考えとけ」

「んー……」

 そう言われて、私はぽやぽやとご飯について考え始めた。





 ご飯の前に、私たちは朝のお風呂にゆったりと入る。なんとも贅沢だ。

「またスイートルーム泊まっちゃいましたね」

「いや、これは親父に払わせる」

 きっぱりと言ったものだから、つい笑ってしまった。

 私は背後から抱き締めてくる尊さんの腕を抱き、微笑んで言う。

「色々あっても、亘さんの事を〝親父〟って呼ぶんですね」

「んー……」

 そう言うと、彼は少しの間考え、やがて溜め息をついて口を開く。

「あいつに対して、実父への愛情はないし、頼りにしたいっていう思いもない。父親という役割を持つ存在、立場上の血縁、社長……、そういう感覚かな」

 尊さんの言いたい事はなんとなく分かる気がした。

「縁を切るまでもないけど、繋がりはある?」

「何だろうな。あいつがいなくても生きていけるし、怜香の力が及ばなくなった今、篠宮フーズを出ても誰も俺を邪魔しないだろう。……それでも、母やあかりが生きていた証拠としての〝父親〟には存在していてほしいのかもしれない。父親としては失格だし、一人の男としても最低だ。……けど、あいつがいたから俺とあかりが生まれた」

 思考を辿るように言った尊さんは、自嘲する。

「世の中、毒親に愛想を尽かして、戸籍を抜いて本当に他人になる奴もいる。俺だってあんな両親ならいらねぇよ。……でも」

 そこまで言い、彼は息を吸ってしばし止める。

「……俺の心の底にいる母が『人として愛情深く、正しい道を歩め』と言っている。どんなにだらしねぇ最低な父親だとしても、縁を切って捨てる事を母は望んでいない」

 そのあと、尊さんは溜め息混じりに言った。

「……あかりは〝おじさん〟に懐いてた。〝おじさん〟の事を好きだと言って、『いつか四人で住みたい』と望んでいた。あんな奴でも妹にとっては〝父親〟なんだ。……妹が慕っていたなら、俺があいつと完全に縁を切って憎む訳にいかない」

 私は尊さんの気持ちを汲み、彼の腕をギュッと抱き締める。

 すると彼は「ははっ」と笑った。

「……マザコン、シスコンかなぁ……」

「ううん、そんな事ない。……尊さんは、人としての理性を失うギリギリを生きてきました。そんな中、あなたの良心を守り続けたのは、お母さんとあかりさんとの優しい思い出。確かに、見方によっては縛られていると言えるかもしれません。でも私は、尊さんが人らしく生きてきた事を誇りに思います」

「……サンキュ」

 私の返事を聞き、尊さんはポンポンと私の手を握り、叩いた。

 そして、のしっと私の肩に顎を乗せ、呟く。

「これからはお前のために生きていく」

 彼の言葉を聞いて、私はジワッと頬を染めた。

「初めて誰かのために生きる事ができるな……。すげぇ幸せな事だ。一人で金を持っていても、愛情を与える奴がいねぇと空しいから。……だから、幸せになる覚悟をしてくれよ?」

 耳元で囁いた尊さんはクスッと笑い、私の頬にキスをしてきた。
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