385 / 539
ハワイ 編
信頼してもらえるって、ありがたいなぁ
しおりを挟む
オアフ島三日目の夕食は最後の晩餐(?)で、全員で食事をする。
ホテルから離れた場所にあるレストランで、テラス席から直接ビーチが見られてロマンチックだから行こうという事になった。
レストランに着くと、人数分の席が用意されてあった。
「あぁー、思いっきり遊んだ! 皆は楽しめた?」
私が家族に尋ねると、「めっちゃ楽しんだ!」とすっかり日焼けした健がサムズアップした。
「本当にいい思いをさせてもらって、ありがとうございました」
お母さんたちがペコペコと頭を下げ、それを久賀城家の皆さんがにこやかに見守っている。
それから、フレンチのコース料理が出された。
と言っても格式張った高級なのは、もう皆お腹いっぱいなので、気軽に楽しめる物だ。
うちの家族も、あまりにお金を掛けられると気を遣ってしまうので、その配慮はありがたかった。
前菜、スープ、パンに魚料理、肉料理、デザートというシンプルなコース仕立てで、食事中も終始和やかに話せる。
潮騒を聞きながら食べるディナーの、ロマンチックな事ときたら。
テーブルの上にあるキャンドルも相まって、最高の雰囲気だ。
「優美さん、こんなに素敵なハネムーンを経験させてくれてありがとう」
食事が終わってコーヒーを飲んでいた時に話しかけてきたのは、二人のお祖母ちゃんの百合さんだ。
「い、いえ! どう致しまして……って言うのも変ですが」
金銭的な負担をしてくれたのは二人だ。
私はただ、皆と楽しむしかしていない。
ちなみに久賀城家は、百合さんの代では姉妹が非常に多かったらしい。
現在久賀城ホールディングスの会長をしているのは、百合さんの兄だ。
二人のお父さんの昌明さんは、お祖父さんのアランさんの姓がついたフランス名も持っている。
彼はフランスで生まれて過ごし、経営のノウハウを大学で学んだあと日本に移った。
百合さんの兄がまだ社長をしていた時、姉妹ばかりであとを継ぐ人がいないと嘆いていた。
「それならうちの息子が日本に住みたいと言っているから、鍛えて使って頂戴」という事になったらしい。
昌明さんは母の影響もあり、サブカルも含めて日本が大好きな青年だった。
学生時代も独学で日本語を学び、ペラペラの状態で大学卒業後に日本に移った。
勿論、文化の差があって戸惑った事はあったけれど、伯父さんの家で厄介になり日本式の生活を学んでいった。
そして正樹の実母である祥子さんに出会い、一度目の結婚を果たした。
昌明さんは次男で、アランさんのフランスの事業は長男がサポートしているようだ。
久賀城家もそんな一筋縄ではない事情があるから、慎也と正樹がが選んだ道を認めてくれたのかもしれない。
「離れた場所で暮らしている私たちが言えた事ではないけれど、本当は孫の結婚に不安があったの」
百合さんは肩までの白髪交じりの髪を、後頭部で小さなお団子にしている。
体型もすんなりとしていて顔立ちも整っていて、とても綺麗な女性だ。
優しく穏やかで、物腰柔らかに話す人なので、私も初対面から一気に好感を抱いていた。
完全に打ち解けたあとだからこそ、今こうして本音を話されても不安にはならなかった。
「仰る通りです。私たちが選んだ道は少し変わっていますから、皆さんに不安を与えて仕方がないと思っています」
答えた私に、アランさんが微笑む。
「僕と百合も、若い頃は周囲に〝波瀾万丈〟と言われていた。百合がフランスに来た時はインターネットはなかったし、今よりずっとアジア人に対して閉鎖的だったかもしれない。それでも百合は愛のために、環境にも言葉にも挑戦し続けてくれた。君たちも、自分の愛のためなら、どんな苦難でも乗り越えられると思っているよ」
アランさんは笑顔がチャーミングな人で、優しげな顔立ちをしている。
日本語も流暢で、妻である百合さんの雰囲気も相まって、とてもいい夫婦だ。
けれどやはり、若い頃は本人が言った通り山あり谷あり……だったのだろう。
「当時の大人たちは、僕らの関係に苦言を呈した。中には、最後まで納得してもらえなかった親族もいた」
アランさんは昔を思い出し、苦く笑う。
「だからこそ僕らは、君たちにチャレンジしてほしい。ノンを言いたくない。心配はするけど、決して止めはしないよ。もし道に迷ったり、困ったりした時は、昌明たちもだけど、僕たちの事も頼ってほしい」
暖かな言葉に、私は両側にいる慎也と正樹の手を握って頷いた。
「はい!」
「昌明が玲奈さんと再婚すると言った時も、私たちは何も反対しなかったわ。うちの子たちは全員、自分の選択した道を進み、必ず幸せになると信じていた。それは孫たちも同じ。久賀城家に嫁入りしてくれる女性も同じ」
百合さんは玲奈さんに微笑みかけ、それから私に聖母のような笑みを向ける。
信頼してもらえるって、ありがたいなぁ。
ホテルから離れた場所にあるレストランで、テラス席から直接ビーチが見られてロマンチックだから行こうという事になった。
レストランに着くと、人数分の席が用意されてあった。
「あぁー、思いっきり遊んだ! 皆は楽しめた?」
私が家族に尋ねると、「めっちゃ楽しんだ!」とすっかり日焼けした健がサムズアップした。
「本当にいい思いをさせてもらって、ありがとうございました」
お母さんたちがペコペコと頭を下げ、それを久賀城家の皆さんがにこやかに見守っている。
それから、フレンチのコース料理が出された。
と言っても格式張った高級なのは、もう皆お腹いっぱいなので、気軽に楽しめる物だ。
うちの家族も、あまりにお金を掛けられると気を遣ってしまうので、その配慮はありがたかった。
前菜、スープ、パンに魚料理、肉料理、デザートというシンプルなコース仕立てで、食事中も終始和やかに話せる。
潮騒を聞きながら食べるディナーの、ロマンチックな事ときたら。
テーブルの上にあるキャンドルも相まって、最高の雰囲気だ。
「優美さん、こんなに素敵なハネムーンを経験させてくれてありがとう」
食事が終わってコーヒーを飲んでいた時に話しかけてきたのは、二人のお祖母ちゃんの百合さんだ。
「い、いえ! どう致しまして……って言うのも変ですが」
金銭的な負担をしてくれたのは二人だ。
私はただ、皆と楽しむしかしていない。
ちなみに久賀城家は、百合さんの代では姉妹が非常に多かったらしい。
現在久賀城ホールディングスの会長をしているのは、百合さんの兄だ。
二人のお父さんの昌明さんは、お祖父さんのアランさんの姓がついたフランス名も持っている。
彼はフランスで生まれて過ごし、経営のノウハウを大学で学んだあと日本に移った。
百合さんの兄がまだ社長をしていた時、姉妹ばかりであとを継ぐ人がいないと嘆いていた。
「それならうちの息子が日本に住みたいと言っているから、鍛えて使って頂戴」という事になったらしい。
昌明さんは母の影響もあり、サブカルも含めて日本が大好きな青年だった。
学生時代も独学で日本語を学び、ペラペラの状態で大学卒業後に日本に移った。
勿論、文化の差があって戸惑った事はあったけれど、伯父さんの家で厄介になり日本式の生活を学んでいった。
そして正樹の実母である祥子さんに出会い、一度目の結婚を果たした。
昌明さんは次男で、アランさんのフランスの事業は長男がサポートしているようだ。
久賀城家もそんな一筋縄ではない事情があるから、慎也と正樹がが選んだ道を認めてくれたのかもしれない。
「離れた場所で暮らしている私たちが言えた事ではないけれど、本当は孫の結婚に不安があったの」
百合さんは肩までの白髪交じりの髪を、後頭部で小さなお団子にしている。
体型もすんなりとしていて顔立ちも整っていて、とても綺麗な女性だ。
優しく穏やかで、物腰柔らかに話す人なので、私も初対面から一気に好感を抱いていた。
完全に打ち解けたあとだからこそ、今こうして本音を話されても不安にはならなかった。
「仰る通りです。私たちが選んだ道は少し変わっていますから、皆さんに不安を与えて仕方がないと思っています」
答えた私に、アランさんが微笑む。
「僕と百合も、若い頃は周囲に〝波瀾万丈〟と言われていた。百合がフランスに来た時はインターネットはなかったし、今よりずっとアジア人に対して閉鎖的だったかもしれない。それでも百合は愛のために、環境にも言葉にも挑戦し続けてくれた。君たちも、自分の愛のためなら、どんな苦難でも乗り越えられると思っているよ」
アランさんは笑顔がチャーミングな人で、優しげな顔立ちをしている。
日本語も流暢で、妻である百合さんの雰囲気も相まって、とてもいい夫婦だ。
けれどやはり、若い頃は本人が言った通り山あり谷あり……だったのだろう。
「当時の大人たちは、僕らの関係に苦言を呈した。中には、最後まで納得してもらえなかった親族もいた」
アランさんは昔を思い出し、苦く笑う。
「だからこそ僕らは、君たちにチャレンジしてほしい。ノンを言いたくない。心配はするけど、決して止めはしないよ。もし道に迷ったり、困ったりした時は、昌明たちもだけど、僕たちの事も頼ってほしい」
暖かな言葉に、私は両側にいる慎也と正樹の手を握って頷いた。
「はい!」
「昌明が玲奈さんと再婚すると言った時も、私たちは何も反対しなかったわ。うちの子たちは全員、自分の選択した道を進み、必ず幸せになると信じていた。それは孫たちも同じ。久賀城家に嫁入りしてくれる女性も同じ」
百合さんは玲奈さんに微笑みかけ、それから私に聖母のような笑みを向ける。
信頼してもらえるって、ありがたいなぁ。
応援ありがとうございます!
0
お気に入りに追加
1,767
1 / 5
この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる