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ハワイ 編
日常の繰り返しも、とても愛おしいもの
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それだけで、のびのび生きていける。
「正樹、慎也。お前たちには寂しい思いをさせてしまったのかもしれない。だが私たちは子供たち四人全員に、平等な愛を注いできたつもりだ。お前たちは愛された子だよ。胸を張って堂々と幸せになりなさい」
昌明さんが二人に微笑みかけ、私に向かって頷いてみせる。
「折原家も、微力ながらサポートするからな」
お父さんも折原家の代表として口を挟み、皆からニコニコと微笑まれる。
「ありがとうございます」
慎也がお礼を言い、私と正樹も「ありがとうございます」と頭を下げた。
「夢みたいな思いをさせてくれて、本当にありがとう。もうすぐ日常ね。代わり映えのない日常の繰り返しも、とても愛おしいものだわ」
お祖母ちゃんが言い、機嫌良さそうにコーヒーを飲む。
「俺はしばらく、友達にハワイ土産を配って孫の結婚自慢かな」
お祖父ちゃんが言って、皆が笑う。
「優美さん、帰国したらまた遊んでくださいね」
未望ちゃんが愛くるしく笑いかけ、私はすぐメロメロになる。
「勿論! 文香にも連絡するから、三人で遊ぼう」
私たちが会話している向こうで、一歳違いの健と芳也くんはすっかり親友みたいに意気投合している。
「あれ……? お母さん?」
いつもなら割とガハガハ笑うお母さんが静かだなと思ったら、俯いてしんみりとして、ナプキンで目元を拭っている。
「……だって、こんなにいい人たちに優美たちの結婚が受け入れてもらえるだなんて……」
「……あはは! 心配掛けたよねぇ、ごめんね。ありがとう!」
皆が私たちの心配をしてくれるのが、嬉しくて、ありがたくて堪らない。
ハワイの夜は更けていく。
皆でゆっくり、三十分ぐらいかけてホテルまで歩いて、最後の夜を満喫する。
降り注ぐほどの星空と、耳に刻まれる潮騒。
沢山笑って、楽しい思い出しかないハワイとは、これで一旦お別れだ。
その日の夜は、さすがに二人とも手を出さずに大人しく過ごしてくれた。
代わりによく分からないけれど、二人にたっぷりマッサージをされたけれど……。
どうやら、「疲れさせたお詫び」らしい。
「お土産もしこたま買ったし、満足~!」
三人でベッドに潜り込み、私は伸びをして幸せな溜め息をつく。
「夢に見た三人での新婚旅行、幸せだった」
「僕も。こんなにいい思いができるとは思わなかった」
「んふふ……」
私は左右にいる彼らの腕を組み、目を閉じる。
「これから宜しくお願いします。旦那様方」
「こちらこそ、宜しくお願いします、奥さん」
「僕も、宜しくね」
両側からチュッと頬にキスをもらい、私はゆっくり息を吐く。
それから二人と手を繋いだまま、リラックスして眠りの淵に意識を解放した。
**
翌日、ホノルル空港十二時半近くの飛行機に乗り、私たちはハワイを離れた。
行きでいい思いをさせてもらったので、帰りはエコノミーでいいと思っていたけれど、久賀城家の男としてそうはいかないらしい。
家族ともどもまたいい席に座らせてもらい、帰国の途に就いた。
アランさんと百合さんは、ホノルル空港からそのままフランスへ帰国した。
『今度はフランスに遊びに来てね。ガイド役を請け負うから』
別れ際に百合さんはそう言ってくれ、ありがたい。
いつかの旅行を夢見ながら、私は機内で映画を楽しむ。
機内食では日本の航空会社で出してくれる日本食に懐かしさを味わい、ゆっくり寝て、翌日、日本時間の十六時近くに羽田空港に到着した。
帰宅したあと、しばらく空けていた家は他人の家っぽい雰囲気があった。
けれど埃を被らず綺麗になっているのは、家に清掃の業者さんが入っていたからだ。ありがたい。
「優美、疲れただろ。片付けよりまず休んでいいよ」
「ありがと。でも洗濯物とかは出さないと」
「僕と慎也は明日出社するから、今日の夜ご飯はデリバリーか、近くに食べに行こうか」
「そうだな、こういう時は楽をしておかないと。早めに寝ておきたいし」
「あああ……。お疲れ様です」
こういう時、「無職で申し訳ない」と思ってしまうけれど、それを彼らに言うのは違う。
旅行帰りのハイテンションのまま、私たちはスーツケースの中身を出して、お土産の整理もした。
それから夕方になり、「ラーメン喰おう!」で意見が一致し、近所にあるいつものラーメン屋さんに行った。
**
「正樹、慎也。お前たちには寂しい思いをさせてしまったのかもしれない。だが私たちは子供たち四人全員に、平等な愛を注いできたつもりだ。お前たちは愛された子だよ。胸を張って堂々と幸せになりなさい」
昌明さんが二人に微笑みかけ、私に向かって頷いてみせる。
「折原家も、微力ながらサポートするからな」
お父さんも折原家の代表として口を挟み、皆からニコニコと微笑まれる。
「ありがとうございます」
慎也がお礼を言い、私と正樹も「ありがとうございます」と頭を下げた。
「夢みたいな思いをさせてくれて、本当にありがとう。もうすぐ日常ね。代わり映えのない日常の繰り返しも、とても愛おしいものだわ」
お祖母ちゃんが言い、機嫌良さそうにコーヒーを飲む。
「俺はしばらく、友達にハワイ土産を配って孫の結婚自慢かな」
お祖父ちゃんが言って、皆が笑う。
「優美さん、帰国したらまた遊んでくださいね」
未望ちゃんが愛くるしく笑いかけ、私はすぐメロメロになる。
「勿論! 文香にも連絡するから、三人で遊ぼう」
私たちが会話している向こうで、一歳違いの健と芳也くんはすっかり親友みたいに意気投合している。
「あれ……? お母さん?」
いつもなら割とガハガハ笑うお母さんが静かだなと思ったら、俯いてしんみりとして、ナプキンで目元を拭っている。
「……だって、こんなにいい人たちに優美たちの結婚が受け入れてもらえるだなんて……」
「……あはは! 心配掛けたよねぇ、ごめんね。ありがとう!」
皆が私たちの心配をしてくれるのが、嬉しくて、ありがたくて堪らない。
ハワイの夜は更けていく。
皆でゆっくり、三十分ぐらいかけてホテルまで歩いて、最後の夜を満喫する。
降り注ぐほどの星空と、耳に刻まれる潮騒。
沢山笑って、楽しい思い出しかないハワイとは、これで一旦お別れだ。
その日の夜は、さすがに二人とも手を出さずに大人しく過ごしてくれた。
代わりによく分からないけれど、二人にたっぷりマッサージをされたけれど……。
どうやら、「疲れさせたお詫び」らしい。
「お土産もしこたま買ったし、満足~!」
三人でベッドに潜り込み、私は伸びをして幸せな溜め息をつく。
「夢に見た三人での新婚旅行、幸せだった」
「僕も。こんなにいい思いができるとは思わなかった」
「んふふ……」
私は左右にいる彼らの腕を組み、目を閉じる。
「これから宜しくお願いします。旦那様方」
「こちらこそ、宜しくお願いします、奥さん」
「僕も、宜しくね」
両側からチュッと頬にキスをもらい、私はゆっくり息を吐く。
それから二人と手を繋いだまま、リラックスして眠りの淵に意識を解放した。
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翌日、ホノルル空港十二時半近くの飛行機に乗り、私たちはハワイを離れた。
行きでいい思いをさせてもらったので、帰りはエコノミーでいいと思っていたけれど、久賀城家の男としてそうはいかないらしい。
家族ともどもまたいい席に座らせてもらい、帰国の途に就いた。
アランさんと百合さんは、ホノルル空港からそのままフランスへ帰国した。
『今度はフランスに遊びに来てね。ガイド役を請け負うから』
別れ際に百合さんはそう言ってくれ、ありがたい。
いつかの旅行を夢見ながら、私は機内で映画を楽しむ。
機内食では日本の航空会社で出してくれる日本食に懐かしさを味わい、ゆっくり寝て、翌日、日本時間の十六時近くに羽田空港に到着した。
帰宅したあと、しばらく空けていた家は他人の家っぽい雰囲気があった。
けれど埃を被らず綺麗になっているのは、家に清掃の業者さんが入っていたからだ。ありがたい。
「優美、疲れただろ。片付けよりまず休んでいいよ」
「ありがと。でも洗濯物とかは出さないと」
「僕と慎也は明日出社するから、今日の夜ご飯はデリバリーか、近くに食べに行こうか」
「そうだな、こういう時は楽をしておかないと。早めに寝ておきたいし」
「あああ……。お疲れ様です」
こういう時、「無職で申し訳ない」と思ってしまうけれど、それを彼らに言うのは違う。
旅行帰りのハイテンションのまま、私たちはスーツケースの中身を出して、お土産の整理もした。
それから夕方になり、「ラーメン喰おう!」で意見が一致し、近所にあるいつものラーメン屋さんに行った。
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