暁のミッドウェー

三笠 陣

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30 第十七任務部隊の災厄

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 一方、楠美正少佐率いる加賀艦攻隊二十六機は、それぞれ中隊ごとにヨークタウン、サラトガに狙いを定めて雷撃を敢行した。
 この時、まったく神に見放されていたのはサラトガであった。
 開戦直後に伊六潜に雷撃されて修理を余儀なくされ、ようやく戦線に復帰したばかりであった彼女は、最初の魚雷命中によって主電気回路が損傷し、機関が完全に停止してしまったのである。
 元々、レキシントン級はターボ電気推進システムという、艦艇としては特殊な推進装置を搭載していた。この機関は蒸気タービンよりも航続距離を確保出来るという利点があったのだが、レキシントン級のターボ電気推進システムはイギリスの造船関係者が「複雑怪奇」と評するほど、回路の配置など設計上の問題点を抱えているものであった。
 この脆弱性が、今まさに空襲を受けている最中に露わになってしまったのである。
 急速に速力を低下させていくサラトガは、加賀艦攻隊にとって格好の標的となった。最初に魚雷を命中させた小隊に後続していた小隊が、両舷から次々と彼女の船体に魚雷を叩き込んだである。
 サラトガは最初の被雷から五分後には完全に推進力を失い、その間に右舷に三本、左舷に四本の魚雷が命中していた。さらに九九艦爆も六発の二五〇キロ爆弾を命中させ、サラトガは喫水線下と飛行甲板を徹底的に破壊されたのである。
 “シスター・サラ”の惨状は、合衆国側にとって目を覆うものであった。
 一方、多少なりとも幸運に恵まれていたのはフレッチャー少将座乗の空母ヨークタウンであった。
 ヨークタウンは江草隆繁少佐率いる艦爆中隊に狙われ、二五〇キロ爆弾六発が命中して飛行甲板を完全に破壊されたのであるが、戦艦ノースカロライナの強力な対空砲火が雷撃隊の阻止に成功したのである。ここにエリオット・バックマスター艦長の巧みな操艦も加わり、ヨークタウンの被雷は一本に留まった。
 三空母の中では、最も少ない損害で空襲を切り抜けることに成功したのである。
 ただし、空母としての戦闘力を完全に失ってしまったことは、レキシントン、サラトガと変わりはなかった。
 特に江草隊の投下した爆弾の一発が飛行甲板を貫通して煙路で炸裂し、ヨークタウンのボイラー五基を完全に使用不能としてしまったのである。これにより、ヨークタウンの速力は急速に低下してしまった。
 さらに一発は前部弾薬庫と航空燃料庫の付近に火災を発生させ、ダメージ・コントロール班が咄嗟の機転で弾薬庫に注水し、誘爆を免れていた。
 一航艦の放った第一次攻撃隊は、第十七任務部隊の空母すべてを戦闘不能としたのである。
 だが、それで第十七任務部隊を襲った災厄が終わったわけではなかった。友永丈市大尉率いる第二次攻撃隊が、第十七任務部隊に迫りつつあったのである。
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