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カティ お城探検 2

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 カティは浮遊感を感じた後、細い石組みの穴を落ちていった。
 がしゃんという衝撃とともに、小さい硬い何かの上に落ちたおかげで怪我無く底に到着した。
「ヴィー!!」
 大声で叫ぶが、自分の声が反響するだけだった。しかも一切光が入らず真っ暗で何も見えない。
 カティは懐に入れていた魔法の杖を取り出して光線を出した。
 何度か調節すると太くて広めの懐中電灯のように照らすことができ、カティは周りを照らした。

 薄茶色の太い棒や細い棒、ぼろ布などが積まれておりそこに落ちたため大けがをしなくて済んだようだ。
「ますますカティぐち探検隊になってきましたよ~。」
 まだまだカティは余裕があった。すぐにヴィクトルが助けに来てくれる安心感があったからだ。
 探検隊のテーマを口ずさみながら周りをぐるっと照らしたとき、二つの眼窩をもつ薄茶色の頭蓋骨がこちらを見ていた。いくつもいくつも・・・
「!!」
 カティの脳がそれを認識した途端、自分がクッションにしたものはすべて人骨だということを理解した。
 カティはそのまま意識を失って、人骨の山の上に倒れ込んだ。


 気が付いた時、いつものエドヴァルドの執務室の天井が見えた。
「エドヴァルド様!カティ様気が付きましたよ!」
 レオが安心したように叫び、すぐにエドヴァルドがカティを抱き上げた。
「・・・。」
 いつものように小言も嫌味も言わず、ただぎゅうと抱きしめ、頭のてっぺんにキスをする。
「あ、あの・・一体?」
「カティ様がご無事でよかったですよ。もう少しで王宮が壊滅するところでした。」
 レオが少し疲れたような声で言う。
「どうして?」
「お前は覚えていないのか?愚王子と隠し通路に入ったのだろう?」
「あ!ほ、骨が・・・」
 積まれた骨の上に落下し、骸骨に見つめられたのを思い出した。
 涙がにじみ、震えだしたカティをエドヴァルドは
「心配するな。もう大丈夫だ。」
 ゆっくりと背中を撫でてくれるその温かさに恐怖が和らいでくる。

「あの・・・人たち、殺された人?あそこ何?」
「あれは王宮に忍び込み、隠し通路まで暴きながらも、罠にはまって死んでいった者たちだ。」
「え?じゃあ・・・私も・・・もう少しでまた死んじゃうとこだった?」
 改めて身震いする。
「お前を連れて行ったのはヴィクトル王子だな?陛下と会議中に愚王子が泣いて飛び込んできた。」
 どうやら、隠し通路の途中で急にカティの姿が見えなくなりどこを探しても見つからず、怒られるのを覚悟で父である国王に泣きついたらしい。
 国王は真っ青になり、王族特有の魔力を持たないものが通路を利用できないようにあちらこちらに罠がしかけられているといった。
 それを聞いたエドヴァルドはヴィクトル王子の首根っこを掴むとカティを見失った近くまで案内させ、国王が止める間もなくその辺りの壁を吹き飛ばした。
 あらわになった通路の壁や床を破壊しまくり、カティが落ちた穴を見つけ出した。
 たくさんの白骨とぼろ布の上で倒れているカティを発見したエドヴァルドは、さらに周囲を氷漬けにし、王宮は半壊した。
 国王とレオ、その他の護衛たちが必死で魔力を押しとどめ、またカティが小さく息をしていることを確認したエドヴァルドはやっと破壊を止めた。
 最後の最後にヴィクトルの部屋を破壊するのは忘れずに。

「伝令も飛ばせない状況かと心配した。お前は・・・一瞬たりとも目が離せない。この度の事は陛下と愚王子の戯れだな。」
(やばい!陛下とヴィ―がおこられる!)
 すでにヴィクトルの部屋が破壊されたことなど知らないカティは探検に誘ってくれたヴィクトルをかばいたかった。
 ヴィクトルに誘われた時、探検にわくわくしたのもあるがエドヴァルドの助けになるかもしれないと思ったのも本当だ。エドヴァルドは強いようだから大丈夫だとは思うが万が一の時は役立つと思ったのだ。
「ちがうの!あの・・殿下が隠し通路から出てきたところを私が無理にはいったの!とう様が危険な時使えるようにって!」
「・・・これは王族の命を助けるための通路だ。私が使うことはない。」
「知ってた?!」
「この部屋を賜った時に一通り調べてある。」
「さすが・・・とう様。」
 ほめちぎれば怒られないかもしれない!
 キラキラした目でエドヴァルドを見上げる。
「あれは、王族以外は使えないようになっている。だからお前がこんな恐ろしい目に合ったのだ。あの愚王子はそこまで知らされていなかったようだが・・・さて、今後は陛下の呼び出しも考えねばならんな。」
「うっ・・・。でもお仕事ですから。そこはほら。」
「これまで何度も危険な目にあっているお前を、愚息に頼まれてわざと一人にするなど陛下も何を考えているのか。そもそもあの通路は王族以外に知らせてはいけないのだ。」
(全て・・・お見通し・・・でした。)
「ん~でも、殿下は私は身内になるから教えていいんだって言ってた。」
「ほう・・・あのバカ息子がそんなことをな。」
(ついにバカ息子呼ばわり・・・一応主君の御子息ですが。)
「一度あの親子と話をする必要があるな。」
 部屋の温度がスーッと下がっていく。
(あ・・・死んだ。陛下とヴィー終わった・・・)

 その後何があったか教えてくれなかったが、国王とヴィクトルから丁寧なお手紙が届いた。
 王宮内で二度とエドヴァルドとカティを故意に引き離すような真似は致しませんと書かれていた。特にヴィクトルの手紙には、震える文字で絶対に口外しません、二度と勝手にカティを誘いませんと書かれていた。
(せっかく友達になったのに・・・)
「殿下と遊びたければ構わないぞ。執務室に呼んでも屋敷に招待しても構わない。」
「ほんと?」
「ああ。お前は私達としか話が出来なくてストレスだろう?知られたものは仕方がないから、うまく利用するといい。」
「とう様、ありがとう。」
「ただし、探検は禁止。治癒魔法のことを話すのも見せるのも禁止だ。いいな?」

 国王と第三王子の罪の意識につけ込み、将来にわたりカティの庇護を約束させた。
 加えて王宮内でいかなる時でもカティを随行させる許可も取れた。ヴィクトル王子との交流を許したのは情報源や後ろ盾、何らかにいずれ利用できるだろうと踏んでのことだ。おまけに王子を守るための護衛や影の存在がカティを守ることにもなる。
 以前の誘拐の時にも、しでかしていた国王は王妃にもひどく叱られ、エドヴァルドが城を半壊させたことに対してはお咎めなしとなり、修繕は国王の私費からと決められた、。
 第三王子のちょっとしたカティへの興味が、部屋を失い、王宮を損壊させ、カティを危険にさらすことになってしまった。今後、ユリ家とカティは王家から恩顧を受けることになる。

 カティはこの国の最高位の貴族令嬢にして、王家から丁重に扱われる最強の赤ん坊となった。
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