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カティ 初めてのお友達

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 エドヴァルドが国王のもとに行っている間、カティは執務室で留守番をしていた。エドヴァルドに頼んでミンミにも下がってもらっていた。

 エドヴァルドの執務室には大きな姿見がある。

 コホンと軽く咳払いをして姿見の前に立つ。4頭身でややむっちり。
 しかしすこぶる可愛い!自分とは思えないこの愛らしさ。そりゃあ皆大事にしてくれるよね!

 鏡の前で何やら踊り始める。
 先日エドヴァルドに披露した占いクッキーの歌の振り付け。さっぱり覚えてなかったが、さびの部分だけほんのり思い出した。それ以外は他の振り付けでも何でもいいから一曲踊れるようにしたい。こちらの国にはあのようなダンスはない。さぞかし珍しがられるに違いない。
 いつかエドヴァルドに披露してあげようと振り付けを決めていく。
 少しづつ歌いながら振り付けを決め、紙に記していく。そしてなんとなく出来上がった振り付けを、歌いながら踊っていく。
「恋する占いクッキー♪・・・」
 鏡の中で可愛く見える表情を作り、魅せ方を研究しながら踊り終える。

「よし!完璧!とう様とレオに見せてあげよう!私の才能に驚き恐れおののくがいい!わははは!」
 と、腰に両手を当てて高笑いしていると鏡越しに目が合った。
「うおっ?!」
 グルンと振り向くと扉の前に男の子が立っていた。夢中でドアが開いたのに気が付かなかった。
(ひいぃ~~第三王子・・・見られた?聞かれた?いや、ごまかせるかもしれない。)
 立っていたのは第三王子のヴィクトル、廊下を見張っている護衛も通すはずだ。

 カティはよろっとふらつくふりをしてぱたんと倒れ込むとそのまま寝たふりをした。
「ねえ、君はなんなの?あの歌も踊りも見たことないし・・・何より赤ちゃんがあんなに動いて話せる?」
(・・・ごまかせなかった。)
 寝たふりのカティの側にしゃがむと
「大丈夫?僕誰にも言わないよ。面白いもん。」
 それでもカティは動かない。
「・・・そっちがその気なら僕も言いふらす。」
 カティはがばっと起きて短い足を折りたたんで土下座する。
「何卒!」
 第三王子はその動きと奇妙な姿にぎょっとした。
「ちょっと・・・なにそれ?」
「土下座・・・といいます。最上級のお詫びの気持ちです。」
「もういいよ、わかった。僕も悪かった、ごめんね。ただ・・・君が面白いから話がしたいだけ。」
「・・・はい。」
 カティは立ち上がってソファーを勧めた。

 王子が外の護衛にお茶の用意を頼むとすぐさま整えられる。
「それで?」
 第三王子の尋問が始まる。カティはしぶしぶ打ち明けた。
「へえ、そんな面白いこと隠してたんだ?宰相殿は。」
「別に隠していたわけじゃ・・・私をかばってくれていたのです。」
「うん、わかった。こんな面白いこと自分だけが知っている方がいいものね。誰にも言わないから安心して。」
「本当ですか?陛下にも言わない?」
「いわないよ。君は父上と仲がいいね。父上も母上も君の事いつも可愛い可愛いと言って僕の婚約者にどうだろうとか言ってるくらいだから。」
「ええっ?」
「君のこと娘にしたいみたい。宰相からはバッサリとお断りされたようだけど。」
「まさかそんなことに・・・それで、殿下はどうしてここに?」
「まあ、正直君の顔見れたらいいなあと思って。正式に面会を申し込むと宰相は絶対に許してくれないし、お茶会でも絶対にそばを離れないし隙がなくてさ。今の時間は確実に宰相はいないだろうからお邪魔したら・・・君が不思議な動きをしてたわけ。でもすごくかわいかった。」

(なにこの子!見る目ある子!)
 カティの心証は一気によくなる。
「ほんとですか?」
「うん。もう一回見せてくれる?」
「え?それは恥ずかしい・・かも。殿下も踊ってくれるならいいですけど。」
「え?」
「これを大勢で踊ったらもっとかわいいんですよ。」
「ふむ・・・異世界の踊りか。では教えていただこう。」
 第三王子は意外にも興味を示し、しかも頭が良いのですぐに歌も振り付けも覚えてしまう。
 鏡の前で二人で完璧に踊り終わった時、二人は大きな舞台を成し遂げたような達成感に包まれた。
「これは素晴らしい!こういう劇団作らせるかな。」
 そうつぶやく第三王子。
「楽しかったよ。また教えてくれるだろうか。」
「もちろんです、殿下と踊れるなんて光栄です!あ、でも本当にくれぐれも内密にしてください。とう様からも、狙われるかもしれないからときつく言われていて・・・怒られちゃう。」
「わかったよ、約束する。それで、僕のことは殿下ではなくヴィーと呼んでね。」
「ええ?無理です!愛称なんて絶対無理!」
「駄目、僕たちは友達になったんだからヴィーだよ、いいね?」
「と、ともだち!殿下と友達!」
 カティは、何かあった時の後ろ盾がまた増えたと歓喜した。
「ヴィーだよ。」
「あ・・・ヴィー様。」
「敬称なしで敬語もなしでね。僕だって心を許せる友達が欲しいんだ。頼むよ。」
(おお!嬉しいかも・・・私も友達いないもんね。初めての友達!)
「うん!嬉しい、私もお友達うれしい!ヴィー、ありがとう!」

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