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~探偵の失踪編 第2章~
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[接触]
「はぁ・・・とんだモーニングコールだった・・・来るときは来るって言ってっていつも言ってるのにどうして言わないんだろう・・・」
レイアは手に持った鞭を丸めて腰に掛け、財布を懐へと仕舞うと手帳を開く。開かれたページには今日の朝に会う予定となっている同業者がいる場所の地図が記されていた。
待ち合わせ時間は20分後・・・今いる場所から徒歩で5分ほどの場所なので遅れることはないだろう。レイアは港の内地側に広がる路地を迷わずに進んでいく。
「えっと・・・ここを右に曲がって・・・」
レイアがとある路地を右に曲がった・・・その時。
ドンッ!
「あっ!」
「・・・」
レイアは丁度曲がってきた人と体がぶつかってしまい、手帳を下に落とす。地図を眺め過ぎたせいで前方への注意が薄れてしまっていたことから起こった事故だった。
レイアはぶつかった人に視線を移すと、直ぐに謝罪を述べる。彼女の目の前には銀髪で長髪を夜会巻きのように纏めている黒の薄いひらひらしたドレスを着用している女性だった。雪のような白い肌で、もう冬なのにそんな薄着で寒くないのだろうかと心配してしまう。
「ごめんなさい!何処か怪我はしていないですか⁉」
「・・・問題ない。」
琥珀色の瞳を覗かせる女性の目がレイアを真っ直ぐ捉える。レイアも不思議と吸い込まれるように彼女の顔と向き合う。
そんな中、ふと近くから男の子の声がした。
「おねーさん!手帳落としたよ~!」
レイアが顔を左下に向けると、そこには女の子のように顔が小さく、長い銀髪の少年が手帳をレイアに向かって差し出していた。彼の眼の色も琥珀色で恐らく姉弟なのだろうと直ぐに理解できた。
レイアはドレスのような白い服を着ている男の子から手帳を受け取ると、感謝の言葉を述べる。
「ありがとう、君・・・」
「どういたしまして~!全くもう、お姉ちゃんたら~!ちゃんと前を見ないと~。」
「・・・私は・・・」
「ち、違うんだよ、君。私が前を見てなかったからでお姉さんは悪くないんだよ?」
「え、そうなの?だったら早くそう言いなよ、お姉ちゃん!」
「私はそう言おうとしていたのだが・・・」
少年と女性が互いに会話を続けている。テンションの高い弟に対して、低い姉。対称的な姉弟だなぁとレイアは心の中で思った。
レイアは2人が話している間に懐から懐中時計を取り出して時刻を確認する。待ち合わせの時刻まで残り8分・・・少し急いだほうが良さそうだった。
「あの・・・」
「んん?」
「私・・・少し用があるので失礼してもいいですか?」
「うん、いいよ~!」
少年はそう元気に答える。レイアは2人に軽くお辞儀をしてその場から去って行こうとした。
すると、少年がレイアを呼び止める。
「あ、おねーさん!1つ言っておくことがあるんだった!」
「え?」
レイアが男の子へ再び振り向く。
「僕達の名前、教えて無かったね!僕の名前は『ヨーゼフ』。そしてこっちにいるのが僕のお姉ちゃんである『ユリシーゼ』だよ!」
「そ・・・そうなんだね・・・」
ヨーゼフはそう言うと、レイアに向かって手を大きく振りながら彼女とは反対の方向へと歩いていく。
「それじゃあね~、『レイア・ミストレル』!また会えるといいね!」
「え、あ・・・うん・・・」
レイアはヨーゼフに向かって手を振ると、体の向きを元に戻して待ち合わせ場所へと歩き始めた。
だがその瞬間、レイアはある違和感に気が付いた。
『あれ?私・・・あの少年に名前言ったっけ?』
レイアは咄嗟に後ろを振り向くと、もうそこにはあの2人の姿は見当たらなかった。レイアは行き交う人々の中、その場に佇んで彼らが消えていった方を見続ける。
「あの子達・・・一体何者なのかしら・・・」
レイアは首を傾げつつ、時計に目をやって残り6分ということを確認すると再び目的地へと歩み始める。肌寒い寒気が服の上からレイアの体に突き刺さる。
「はぁ・・・とんだモーニングコールだった・・・来るときは来るって言ってっていつも言ってるのにどうして言わないんだろう・・・」
レイアは手に持った鞭を丸めて腰に掛け、財布を懐へと仕舞うと手帳を開く。開かれたページには今日の朝に会う予定となっている同業者がいる場所の地図が記されていた。
待ち合わせ時間は20分後・・・今いる場所から徒歩で5分ほどの場所なので遅れることはないだろう。レイアは港の内地側に広がる路地を迷わずに進んでいく。
「えっと・・・ここを右に曲がって・・・」
レイアがとある路地を右に曲がった・・・その時。
ドンッ!
「あっ!」
「・・・」
レイアは丁度曲がってきた人と体がぶつかってしまい、手帳を下に落とす。地図を眺め過ぎたせいで前方への注意が薄れてしまっていたことから起こった事故だった。
レイアはぶつかった人に視線を移すと、直ぐに謝罪を述べる。彼女の目の前には銀髪で長髪を夜会巻きのように纏めている黒の薄いひらひらしたドレスを着用している女性だった。雪のような白い肌で、もう冬なのにそんな薄着で寒くないのだろうかと心配してしまう。
「ごめんなさい!何処か怪我はしていないですか⁉」
「・・・問題ない。」
琥珀色の瞳を覗かせる女性の目がレイアを真っ直ぐ捉える。レイアも不思議と吸い込まれるように彼女の顔と向き合う。
そんな中、ふと近くから男の子の声がした。
「おねーさん!手帳落としたよ~!」
レイアが顔を左下に向けると、そこには女の子のように顔が小さく、長い銀髪の少年が手帳をレイアに向かって差し出していた。彼の眼の色も琥珀色で恐らく姉弟なのだろうと直ぐに理解できた。
レイアはドレスのような白い服を着ている男の子から手帳を受け取ると、感謝の言葉を述べる。
「ありがとう、君・・・」
「どういたしまして~!全くもう、お姉ちゃんたら~!ちゃんと前を見ないと~。」
「・・・私は・・・」
「ち、違うんだよ、君。私が前を見てなかったからでお姉さんは悪くないんだよ?」
「え、そうなの?だったら早くそう言いなよ、お姉ちゃん!」
「私はそう言おうとしていたのだが・・・」
少年と女性が互いに会話を続けている。テンションの高い弟に対して、低い姉。対称的な姉弟だなぁとレイアは心の中で思った。
レイアは2人が話している間に懐から懐中時計を取り出して時刻を確認する。待ち合わせの時刻まで残り8分・・・少し急いだほうが良さそうだった。
「あの・・・」
「んん?」
「私・・・少し用があるので失礼してもいいですか?」
「うん、いいよ~!」
少年はそう元気に答える。レイアは2人に軽くお辞儀をしてその場から去って行こうとした。
すると、少年がレイアを呼び止める。
「あ、おねーさん!1つ言っておくことがあるんだった!」
「え?」
レイアが男の子へ再び振り向く。
「僕達の名前、教えて無かったね!僕の名前は『ヨーゼフ』。そしてこっちにいるのが僕のお姉ちゃんである『ユリシーゼ』だよ!」
「そ・・・そうなんだね・・・」
ヨーゼフはそう言うと、レイアに向かって手を大きく振りながら彼女とは反対の方向へと歩いていく。
「それじゃあね~、『レイア・ミストレル』!また会えるといいね!」
「え、あ・・・うん・・・」
レイアはヨーゼフに向かって手を振ると、体の向きを元に戻して待ち合わせ場所へと歩き始めた。
だがその瞬間、レイアはある違和感に気が付いた。
『あれ?私・・・あの少年に名前言ったっけ?』
レイアは咄嗟に後ろを振り向くと、もうそこにはあの2人の姿は見当たらなかった。レイアは行き交う人々の中、その場に佇んで彼らが消えていった方を見続ける。
「あの子達・・・一体何者なのかしら・・・」
レイアは首を傾げつつ、時計に目をやって残り6分ということを確認すると再び目的地へと歩み始める。肌寒い寒気が服の上からレイアの体に突き刺さる。
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