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~探偵の失踪編 第3章~
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レイアは待ち合わせ場所となっているバーに到着すると直ぐに店内へと入る。まだ早朝ということもあって営業はしているのだが、人は全然いない。店内を見渡しても情報提供者の人物も見当たらないので、適当な場所にあるカウンターに座った。
店員がレイアの前に水の入ったコップを差し出してきて、そっと机の上に置く。レイアがその店員に感謝の言葉を述べたその時、後ろから足音と共に男性の声が聞こえてきた。
「レイア!もう来てたんだね!待たせちゃったかな?」
「ううん。私もちょうど今来た所。」
室内なのにフードを被ったやや長髪の男性はレイアの左に座る。服は少し汚れており、もう何日も同じ服を着ているような感じだ。
その男性の前にコップが置かれると、男性はコップに口をつけて水を一気に流し込み、話し始めた。時刻は予定開始時間より2分早い。
「それじゃあちょっと早いけど早速話に入ろうか。・・・はい、これ。頼まれてた資料。その情報を得るのは大変だったぜ?」
その男性は懐から皴皴になった大きめの茶封筒をレイアに手渡した。レイアは茶封筒を開き中身を確認すると、そこにはコーラス・ブリッツに関わる内容がまとめられた紙が幾つも入っていた。
レイアは一番上にある紙から内容を確認していると、男性がレイアに話しかける。
「なぁ、レイア。お前なんでその資料が必要なんだ?よりによってテロリスト集団の・・・それもコーラス・ブリッツの。」
「少し前に依頼されたの。最近頻発している『探偵連続失踪事件』の調査をね。今回の仕事には彼らが関わっていると思ったの。・・・理由はない只の直感だけど。」
「誰からの依頼なんだ?」
「探偵組合の会長さんから。」
「・・・そうか。」
男のコップに水が注がれる。
「でもよく受けようと思ったな。相当危険な匂いがするんだが・・・」
「私も最初は乗り気じゃなかった。・・・でも、失踪した人達の中には私と非常に関わりを持っている人もいるし・・・困っている時に助けてくれた人も大勢いるから。」
レイアは資料を次々に捲っていく。
「だから今度は私が皆を助けようって思ったの。それがこの依頼を受けた理由よ。」
「成程ねぇ・・・やっぱりレイアは優しいな。」
男性がコップに口をつけて少しずつ水を流し込んでいると、レイアが横目でその男性を見つめる。
「ゼファード、貴方にも感謝しているわよ?こんな危ない事件の調査に協力してくれて。」
「へっ、レイアにそう言って貰えて嬉しいな。」
ゼファードはコップに入った水を再びすべて飲み干した。レイアは小さく微笑むと、再び資料に目を向ける。
「ところで・・・あの魔術師の男とは付き合ってんのか?」
「・・・ええ。近いうちに2人で世界一周旅行するつもりなの。・・・それがどうしたの?」
「いや、何でもない。そうか・・・幸せそうで何よりだよ・・・」
「貴方はどうなの?付き合ってる人いたでしょ?」
「ああ、いたよ。・・・他の男に取られちまったけど。・・・『貴方といてもつまらない』、そう言われたのが最後だったな。」
「・・・ごめんなさい、聞き返したりして。」
「気にするな、また次の女を探すだけの事だ。」
「もしかして・・・私を新しい彼女にしようとしてさっき話しかけてきたの?」
「ん・・・ま、まぁそんな感じだ。」
「・・・」
「お前は美人だし、性格もいいし・・・俺がお前に吊り合うとは思わないが・・・もしかしたらって思ってな。」
ゼファードは溜息をついた。
「でもまぁ・・・今お前が付き合っているあの男はお前の幼馴染なんだろ?それに頭もいいって聞くし・・・俺じゃ勝てねぇよな。」
男はコップを机の上に置く。レイアは資料の全てに目を通すと、茶封筒の中に戻した。
「・・・そうね。確かに私は貴方とは付き合えないわね。もうオルターがいるから・・・」
「・・・」
「でもそう落ち込む必要は無いと思うわよ?貴方は真面目で性格もお人好しでいいってことは知ってるから、直ぐにもっといい女性が見つかるわよ。」
「そう・・・かな?」
「そうよ!だからくよくよしてないでもっと元気にならないと!そうじゃないといい人は寄ってこないわよ?」
レイアはゼファードを励ましながら肩を叩くと、財布の中から現金の入った小さめの茶封筒を手渡した。
「はい、これ残りの報酬ね。」
「ああ・・・ありがとう。」
ゼファードは報酬金が入った封筒を受け取ると、ゆっくりと懐へと仕舞った。レイアは店から去る時にゼファードに一言告げた。
「ゼファード。」
「ん?」
「今度私の友達紹介してあげる。とてもいい子で貴方もきっと好きになると思うわ。・・・元気な女の子が貴方のタイプだったよね?」
「ああ、そうだよ。・・・ありがとな、レイア。」
「気にしないで。じゃ、気を付けてね。」
「そっちもな。変に深く足を突っ込むんじゃないぞ。」
ゼファードはそう言うと、レイアに軽く手を振った。レイアも彼に返事をするように手を振ると、バーから出ていく。バーの中にこもった暖かい空気とは一変して外の冷たい風に吹かれて、レイアは少し体を震わせる。
「ふぅ~寒い・・・さて、と。宿に戻って作業するとしようかな・・・お母さんとお父さん、まだいるかなぁ・・・」
レイアが今日の朝軽く話した両親達の事を頭に思い浮かべながら宿へと歩きだした・・・その時、突然横から非常に聞き覚えのある声が聞こえてきた。
「レイア。」
レイアがその声のする方へと体を向けると、そこには黒の分厚いダウンコートを着用しているレイアの父、ケルドが立っていた。ケルドの顔は何処か暗く、少し顔を俯けていた。
「お父さん・・・」
「・・・少し、話があるんだが・・・いいか?」
抑揚の無い沈んだ声にレイアは少し戸惑ったが、僅かな間の後に返事をする。
「・・・いいよ。じゃあこの先にあるカフェに行こうよ。こんな所で話すよりもさ、落ち着いたところの方がいいでしょ?」
「・・・そうだな。」
レイアの言葉にケルドは小さく頷くと、彼女はケルドと一緒にそのカフェへと歩き始める。2人の間には冬の乾いた風が通り過ぎていた。
レイアは待ち合わせ場所となっているバーに到着すると直ぐに店内へと入る。まだ早朝ということもあって営業はしているのだが、人は全然いない。店内を見渡しても情報提供者の人物も見当たらないので、適当な場所にあるカウンターに座った。
店員がレイアの前に水の入ったコップを差し出してきて、そっと机の上に置く。レイアがその店員に感謝の言葉を述べたその時、後ろから足音と共に男性の声が聞こえてきた。
「レイア!もう来てたんだね!待たせちゃったかな?」
「ううん。私もちょうど今来た所。」
室内なのにフードを被ったやや長髪の男性はレイアの左に座る。服は少し汚れており、もう何日も同じ服を着ているような感じだ。
その男性の前にコップが置かれると、男性はコップに口をつけて水を一気に流し込み、話し始めた。時刻は予定開始時間より2分早い。
「それじゃあちょっと早いけど早速話に入ろうか。・・・はい、これ。頼まれてた資料。その情報を得るのは大変だったぜ?」
その男性は懐から皴皴になった大きめの茶封筒をレイアに手渡した。レイアは茶封筒を開き中身を確認すると、そこにはコーラス・ブリッツに関わる内容がまとめられた紙が幾つも入っていた。
レイアは一番上にある紙から内容を確認していると、男性がレイアに話しかける。
「なぁ、レイア。お前なんでその資料が必要なんだ?よりによってテロリスト集団の・・・それもコーラス・ブリッツの。」
「少し前に依頼されたの。最近頻発している『探偵連続失踪事件』の調査をね。今回の仕事には彼らが関わっていると思ったの。・・・理由はない只の直感だけど。」
「誰からの依頼なんだ?」
「探偵組合の会長さんから。」
「・・・そうか。」
男のコップに水が注がれる。
「でもよく受けようと思ったな。相当危険な匂いがするんだが・・・」
「私も最初は乗り気じゃなかった。・・・でも、失踪した人達の中には私と非常に関わりを持っている人もいるし・・・困っている時に助けてくれた人も大勢いるから。」
レイアは資料を次々に捲っていく。
「だから今度は私が皆を助けようって思ったの。それがこの依頼を受けた理由よ。」
「成程ねぇ・・・やっぱりレイアは優しいな。」
男性がコップに口をつけて少しずつ水を流し込んでいると、レイアが横目でその男性を見つめる。
「ゼファード、貴方にも感謝しているわよ?こんな危ない事件の調査に協力してくれて。」
「へっ、レイアにそう言って貰えて嬉しいな。」
ゼファードはコップに入った水を再びすべて飲み干した。レイアは小さく微笑むと、再び資料に目を向ける。
「ところで・・・あの魔術師の男とは付き合ってんのか?」
「・・・ええ。近いうちに2人で世界一周旅行するつもりなの。・・・それがどうしたの?」
「いや、何でもない。そうか・・・幸せそうで何よりだよ・・・」
「貴方はどうなの?付き合ってる人いたでしょ?」
「ああ、いたよ。・・・他の男に取られちまったけど。・・・『貴方といてもつまらない』、そう言われたのが最後だったな。」
「・・・ごめんなさい、聞き返したりして。」
「気にするな、また次の女を探すだけの事だ。」
「もしかして・・・私を新しい彼女にしようとしてさっき話しかけてきたの?」
「ん・・・ま、まぁそんな感じだ。」
「・・・」
「お前は美人だし、性格もいいし・・・俺がお前に吊り合うとは思わないが・・・もしかしたらって思ってな。」
ゼファードは溜息をついた。
「でもまぁ・・・今お前が付き合っているあの男はお前の幼馴染なんだろ?それに頭もいいって聞くし・・・俺じゃ勝てねぇよな。」
男はコップを机の上に置く。レイアは資料の全てに目を通すと、茶封筒の中に戻した。
「・・・そうね。確かに私は貴方とは付き合えないわね。もうオルターがいるから・・・」
「・・・」
「でもそう落ち込む必要は無いと思うわよ?貴方は真面目で性格もお人好しでいいってことは知ってるから、直ぐにもっといい女性が見つかるわよ。」
「そう・・・かな?」
「そうよ!だからくよくよしてないでもっと元気にならないと!そうじゃないといい人は寄ってこないわよ?」
レイアはゼファードを励ましながら肩を叩くと、財布の中から現金の入った小さめの茶封筒を手渡した。
「はい、これ残りの報酬ね。」
「ああ・・・ありがとう。」
ゼファードは報酬金が入った封筒を受け取ると、ゆっくりと懐へと仕舞った。レイアは店から去る時にゼファードに一言告げた。
「ゼファード。」
「ん?」
「今度私の友達紹介してあげる。とてもいい子で貴方もきっと好きになると思うわ。・・・元気な女の子が貴方のタイプだったよね?」
「ああ、そうだよ。・・・ありがとな、レイア。」
「気にしないで。じゃ、気を付けてね。」
「そっちもな。変に深く足を突っ込むんじゃないぞ。」
ゼファードはそう言うと、レイアに軽く手を振った。レイアも彼に返事をするように手を振ると、バーから出ていく。バーの中にこもった暖かい空気とは一変して外の冷たい風に吹かれて、レイアは少し体を震わせる。
「ふぅ~寒い・・・さて、と。宿に戻って作業するとしようかな・・・お母さんとお父さん、まだいるかなぁ・・・」
レイアが今日の朝軽く話した両親達の事を頭に思い浮かべながら宿へと歩きだした・・・その時、突然横から非常に聞き覚えのある声が聞こえてきた。
「レイア。」
レイアがその声のする方へと体を向けると、そこには黒の分厚いダウンコートを着用しているレイアの父、ケルドが立っていた。ケルドの顔は何処か暗く、少し顔を俯けていた。
「お父さん・・・」
「・・・少し、話があるんだが・・・いいか?」
抑揚の無い沈んだ声にレイアは少し戸惑ったが、僅かな間の後に返事をする。
「・・・いいよ。じゃあこの先にあるカフェに行こうよ。こんな所で話すよりもさ、落ち着いたところの方がいいでしょ?」
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