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チャプター1 銀髪碧眼幼女、LTAS(エルターズ)に立つ
015 完全実力主義、メイド・イン・ヘブン学園
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柔和な表情を崩さなかったキャメルは、ルーシからの質問──ある種当然の質問に顔をしかめる。ルーシもこれから入学する予定の学校がどんな校風なのかくらい知りたいだろう。しかし、説明が難しいのもまた事実である。
「……そうね。簡潔にいえば、実力至上主義といったところかしら」
「魔術が肝心だと?」
「そういうことになるわね。まず、ルーシちゃんは推薦入学を選ぶから、気味の悪いカラスに身体を凝視されるわ。そのカラスが生徒の実力を決めるのよ。評価は5段階。まったく価値がないとみなされるランクD。たいした戦術的価値を見込めないといわれながらも、大半の生徒がここに甘んじるランクC。そして、ルーシちゃんにとってはここからが重要よ」
ゲームのようにわかりやすい区分。ルーシは相槌を打ちながら、彼女の話を聞いていく。
「次はランクBね。努力と才能でたどり着ける区分。大半の生徒はこの区分になることを目標としてるし、推薦入学ならランクB以上でないと入学することもできない。まあ、お兄様の娘で私の姪っ子であることを考えれば、正直ランクB以上はほとんど決まったようなものだわ」
そこまで言い切る。と、なれば、キャメルは「ランクA」に属しているということになるだろう。そしてクールもそれと同等か、あるいは隠されている区分に入っていたか。ともかく、キャメルは語る。
「そして、実質的な最高位。ランクAね。魔術の腕はもちろん、勉学においても優秀であることが求められるわ。だから、いまのところ、この区分に入ってるのは私を含めて4人だけよ」
「やはりキャメルお姉ちゃんはすごいですね」
「……まあ。変な話、お兄様がいなかったら、すごいといわれて鼻を伸ばしていたわね」
「と、いうことは? 実質的な最高位の上にまたなにかがあると?」
「そうね……」キャメルはため息交じりに、「メイド・イン・ヘブン学園。通称MIH学園の最高位はランクS。100年の歴史で、そこまでたどり着けた人はふたりしかいない」
「へェ。まずひとり目はお父様ですよね?」
「そうね。お兄様は1学年の時点でランクSの評価を得てた。いままで形式的にしか存在してこなかった評定に、まさかたどり着く者がいるとは思ってもなかったでしょう」
当然といえば当然だろう。クールは強い。この世界に超能力は存在しないからなんでもできる……という不条理極まりない攻撃を与えられなかったら、確実に負けていたほどに。
それに比べれば、どうしてもキャメルは見劣りしてしまう。彼女はランクAでMIHの主席だが、それはあくまでも高等部から必ずひとりは選ばれる優等生に与えられるものだ。たいしてクールは歴史を塗り替えてしまった。キャメルが語るように、形式的にしかなかった称号を手にしてしまったのだ。
ルーシが思うに、キャメルはクールを崇敬しているが、同時に嫉妬もしている。同じ親から生まれ、同じように育てられたはずなのに、ふたりには絶対的な壁があるからだ。
「だから、私はランクSになるのを狙ってる」
「なるほど。お父様と並ぶと」
「いや……越すのよ。ランクSになればセブン・スターズへの交渉権が得られる。その上で結果を残せば、お兄様がなれなかったセブン・スターズになることができる。お兄様は2回拒絶したけど、私はその話が来た時点で受け入れようと思ってるの」
ルーシの考えていたことが的中した。やはり彼女はクールにたいして劣等感を抱いている。近親愛という危険な領域に入るほど尊敬しながらも、同時にコンプレックスを抱えていて、キャメルもまた1筋縄ではいかない人間であることは間違いない。
「では、どのようにランクSの評定を得るんですか? 安直に考えれば、いまいるセブン・スターズを倒すのが手っ取り早い気もしますけど、さすがに学生でそれは不可能でしょう?」
「ええ。普通に考えれば、ランクSへ上り詰めるには、相応の結果を残さないといけない。そこでMIH学園最大の行事が関係してくるのよ」
「最大の行事?」
「第1次ロスト・エンジェルス独立戦争のさいに、英雄的な活躍をしたとされる当時の国王の二つ名「壮麗王」。それから名前をとった、学生魔術師による武道会──「壮麗祭」で2年連続優勝すれば、道は開けるでしょう?」
「2年連続。つまり、去年も優勝しているわけですね。さすがキャメルお姉ちゃん」
「まあ、たいした敵もいなかったしね。あえていえば、次席のウィンストンと……ランクDのメリットという女の子には苦戦したけどね」
メリット? つい先ほど1ミリのメンソール煙草を吸っていたヤツではないか。世界は案外狭いものだ。
とはいえ、ここは話を伏せておこう。
「ランクDに苦戦したんですか?」
「ええ、奇妙な魔術を使う子だったわ。普通、魔術師にはひとりひとつずつの能力──スキルというものしか持ってないんだけど、あの子は違った。何個も攻撃手段や防御手段、回避手段を持っていたのよ。なんのスキルかは知らないけど、なんでランクDに埋もれてるのかわからないくらいに強敵だったわ」
「へェ。世の中わからないものですね」
「そうね。意外とランクDの落ちこぼれだとバカにできない子は多いと思うわ。魔力がないとか、スキルがないからランクDに認定されてるだけで、実際どちらかが開花したらどうなるかわからないもの」
「夢のある話ですね。けど、今回は私も加わるから、そう簡単には優勝できませんよ?」
「……そうね。簡潔にいえば、実力至上主義といったところかしら」
「魔術が肝心だと?」
「そういうことになるわね。まず、ルーシちゃんは推薦入学を選ぶから、気味の悪いカラスに身体を凝視されるわ。そのカラスが生徒の実力を決めるのよ。評価は5段階。まったく価値がないとみなされるランクD。たいした戦術的価値を見込めないといわれながらも、大半の生徒がここに甘んじるランクC。そして、ルーシちゃんにとってはここからが重要よ」
ゲームのようにわかりやすい区分。ルーシは相槌を打ちながら、彼女の話を聞いていく。
「次はランクBね。努力と才能でたどり着ける区分。大半の生徒はこの区分になることを目標としてるし、推薦入学ならランクB以上でないと入学することもできない。まあ、お兄様の娘で私の姪っ子であることを考えれば、正直ランクB以上はほとんど決まったようなものだわ」
そこまで言い切る。と、なれば、キャメルは「ランクA」に属しているということになるだろう。そしてクールもそれと同等か、あるいは隠されている区分に入っていたか。ともかく、キャメルは語る。
「そして、実質的な最高位。ランクAね。魔術の腕はもちろん、勉学においても優秀であることが求められるわ。だから、いまのところ、この区分に入ってるのは私を含めて4人だけよ」
「やはりキャメルお姉ちゃんはすごいですね」
「……まあ。変な話、お兄様がいなかったら、すごいといわれて鼻を伸ばしていたわね」
「と、いうことは? 実質的な最高位の上にまたなにかがあると?」
「そうね……」キャメルはため息交じりに、「メイド・イン・ヘブン学園。通称MIH学園の最高位はランクS。100年の歴史で、そこまでたどり着けた人はふたりしかいない」
「へェ。まずひとり目はお父様ですよね?」
「そうね。お兄様は1学年の時点でランクSの評価を得てた。いままで形式的にしか存在してこなかった評定に、まさかたどり着く者がいるとは思ってもなかったでしょう」
当然といえば当然だろう。クールは強い。この世界に超能力は存在しないからなんでもできる……という不条理極まりない攻撃を与えられなかったら、確実に負けていたほどに。
それに比べれば、どうしてもキャメルは見劣りしてしまう。彼女はランクAでMIHの主席だが、それはあくまでも高等部から必ずひとりは選ばれる優等生に与えられるものだ。たいしてクールは歴史を塗り替えてしまった。キャメルが語るように、形式的にしかなかった称号を手にしてしまったのだ。
ルーシが思うに、キャメルはクールを崇敬しているが、同時に嫉妬もしている。同じ親から生まれ、同じように育てられたはずなのに、ふたりには絶対的な壁があるからだ。
「だから、私はランクSになるのを狙ってる」
「なるほど。お父様と並ぶと」
「いや……越すのよ。ランクSになればセブン・スターズへの交渉権が得られる。その上で結果を残せば、お兄様がなれなかったセブン・スターズになることができる。お兄様は2回拒絶したけど、私はその話が来た時点で受け入れようと思ってるの」
ルーシの考えていたことが的中した。やはり彼女はクールにたいして劣等感を抱いている。近親愛という危険な領域に入るほど尊敬しながらも、同時にコンプレックスを抱えていて、キャメルもまた1筋縄ではいかない人間であることは間違いない。
「では、どのようにランクSの評定を得るんですか? 安直に考えれば、いまいるセブン・スターズを倒すのが手っ取り早い気もしますけど、さすがに学生でそれは不可能でしょう?」
「ええ。普通に考えれば、ランクSへ上り詰めるには、相応の結果を残さないといけない。そこでMIH学園最大の行事が関係してくるのよ」
「最大の行事?」
「第1次ロスト・エンジェルス独立戦争のさいに、英雄的な活躍をしたとされる当時の国王の二つ名「壮麗王」。それから名前をとった、学生魔術師による武道会──「壮麗祭」で2年連続優勝すれば、道は開けるでしょう?」
「2年連続。つまり、去年も優勝しているわけですね。さすがキャメルお姉ちゃん」
「まあ、たいした敵もいなかったしね。あえていえば、次席のウィンストンと……ランクDのメリットという女の子には苦戦したけどね」
メリット? つい先ほど1ミリのメンソール煙草を吸っていたヤツではないか。世界は案外狭いものだ。
とはいえ、ここは話を伏せておこう。
「ランクDに苦戦したんですか?」
「ええ、奇妙な魔術を使う子だったわ。普通、魔術師にはひとりひとつずつの能力──スキルというものしか持ってないんだけど、あの子は違った。何個も攻撃手段や防御手段、回避手段を持っていたのよ。なんのスキルかは知らないけど、なんでランクDに埋もれてるのかわからないくらいに強敵だったわ」
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「そうね。意外とランクDの落ちこぼれだとバカにできない子は多いと思うわ。魔力がないとか、スキルがないからランクDに認定されてるだけで、実際どちらかが開花したらどうなるかわからないもの」
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