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7話
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「おー、パルメってやっぱり強いな」
「うん」
俺は、ノエルを膝に乗せた状態で、偵察型ナノマシンとパルメの視点からなる映像を眺めていた。
「あの鹿の肉、質は悪くないって話だけど、おいしいのかな?」
「調理しだいでは、でも、品種改良もされてないから、ご主人様が出した料理の方がおいしいと思う」
「はー、まぁ、そうなるか」
それにしても、森の中はなかなか豊かなようだ。
時折、パルメが立ち止まり、色々な調査をしている。
時には気になっている果実をもぎ取り、口に含み、毒性などの分析を行い。
キノコ、水、植物の葉など、危険なものはないかどんどんと調べていく。
やはりというか、キノコの類は色々な毒性があるようだ。
生物兵器を見つけたときは、奇襲をしてその性能を調べる。
大体は大したものではない。
「でも、面白いよな。地球だと倫理的な問題で、ああいう生物兵器は居なかったから、不思議な感じだ」
「地球では、工学の方が進んでいた、生物由来の兵器はなかった。所が変われば品が変わる」
地球は世界統一政府ができてから、事実上戦争は無くなった。
しかし、兵器は開発されている。
それはなぜか? 地球人類は宇宙へと生活圏を広げたからだ。
いまだに異星人には出会っていないが、いずれであった時に無防備ではダメだろうということで、様々な兵器が開発されていた。
その中で一番多かったのは、民間需要もあるアンドロイド開発であった。
兵器として、人の友としてアンドロイドは進化してきた。
AIは個性を持ち、人々に寄り添い守る。
そこに比類なき力を持たせるため、アンドロイド用の様々な兵器が開発されては、アンドロイドを使って性能実験が行われ、その性能はすさまじい勢いで上がっていった。
「戦争は技術を進めるっていうけど、アンドロイド同士の開発競争はもはや戦争だったね」
「うん」
もしも、地球人類が、アンドロイドではなく、ただの兵器を開発し続けていたのなら、もしかしてこの星のように文明が崩壊していた可能性もあるのだろうか?
倫理観を捨てて、生物を改造して、大量殺りく兵器を打ち合い、滅んでいたのだろうか?
「そういえば、この星って宇宙開発はほとんどされていなかったんだよね? なんでだろう?」
「分からない。技術進化が別方向に進んだ結果? この星は生物工学が強く発展しているように感じる」
「外よりも内に向いたのか、まぁ、地球もアンドロイドがいるからこそ宇宙での活動が楽になったわけで、宇宙空間で人間の代わりに活動してくれる存在がいないと、宇宙の活動は大変だから仕方ないか」
この星の軌道衛星上にも、人工衛星の残骸などはあった。
しかし、衛星に基地などは存在せず、近い位置にある惑星もテラフォーミングなどはされておらず、手つかずの状態だった。
地球に近いほどまで、文明が進んでいたと思われるのに、それは少し不自然だったが、技術進化の方向が違ったと言われればそれまでだ。
実際、どれだけの予算をつぎ込まれるかで、技術の進歩は決まる。
だからそういうこともあるんだな、という感じである。
「お、やっと第一異星人の発見……ん?」
「ケモミミ」
第一異星人発見とパルメの報告と共に映像に目を向けると、ノエルがつぶやいたように、映像には複数の人の中にケモミミを持った異星人が映っていた。
「尻尾もあるな」
「パルメ姉さんから観察を続けるって」
「あぁ、分かった」
森の中を進む異星人たちは武器を持ち、その格好からハンターだと思われる。
ケモミミ2人に、普通に地球人と変わらないように見える人間が3人。
全員、年は中高生くらいに見える。
「蛇に狙われてる」
「ん? あぁ、さっきいた光学迷彩を持った蛇か」
まるでカメレオンみたいに体表の色を変えて、周囲に溶け込むというレベルではなく、特殊な鱗によって光の透過を屈折させて周囲に溶け込むという光学迷彩を持った蛇。
変温動物の爬虫類であり、森の中という空間では極めて発見の困難と考えられる生物兵器だ。
それにその体は、人を丸のみにするほどデカく、3~6匹で集団行動するという特徴も持っているようだった。
「1人捕まった」
「おぉ……あれは怖い」
一番後方を歩いていた少女の体に、蛇の体が巻き付き、一瞬のうちに樹上へ引っ張り上げられる。
警戒しながら静かに行動しているハンターたちは、それに気づくことなく進んでいく。
「まるでSFホラーだな」
ある程度ハンターたちが離れたところで、樹上に引っ張り上げられた少女は蛇によって締め上げられていく。
「死ぬ前に助けてあげて」
「助けるの?」
「見捨ててもいいけど、助けて情報を得たい。もう1人ケモミミを持った子も死ぬ前に助けてくれ。後は死体でもいいだろう」
今のところ、外に脅威らしきものは感じない、生物兵器は確かにただの人にとっては厄介かもしれないが、所詮は生物だ。
軍用のアンドロイドたちに敵うはずもない。
だが、いつの時代だって油断は命とりだ。
彼を知り己を知れば百戦|殆(あや)うからず、ともいう。
少々残酷だが、死体から得られる情報と生きた人間から得られる情報、両方とも手に入れたい。
「死体の回収にアナクシメを向かわせてくれ」
「うん」
さて、後は情報が得られるのを待っておくだけだな。
「うん」
俺は、ノエルを膝に乗せた状態で、偵察型ナノマシンとパルメの視点からなる映像を眺めていた。
「あの鹿の肉、質は悪くないって話だけど、おいしいのかな?」
「調理しだいでは、でも、品種改良もされてないから、ご主人様が出した料理の方がおいしいと思う」
「はー、まぁ、そうなるか」
それにしても、森の中はなかなか豊かなようだ。
時折、パルメが立ち止まり、色々な調査をしている。
時には気になっている果実をもぎ取り、口に含み、毒性などの分析を行い。
キノコ、水、植物の葉など、危険なものはないかどんどんと調べていく。
やはりというか、キノコの類は色々な毒性があるようだ。
生物兵器を見つけたときは、奇襲をしてその性能を調べる。
大体は大したものではない。
「でも、面白いよな。地球だと倫理的な問題で、ああいう生物兵器は居なかったから、不思議な感じだ」
「地球では、工学の方が進んでいた、生物由来の兵器はなかった。所が変われば品が変わる」
地球は世界統一政府ができてから、事実上戦争は無くなった。
しかし、兵器は開発されている。
それはなぜか? 地球人類は宇宙へと生活圏を広げたからだ。
いまだに異星人には出会っていないが、いずれであった時に無防備ではダメだろうということで、様々な兵器が開発されていた。
その中で一番多かったのは、民間需要もあるアンドロイド開発であった。
兵器として、人の友としてアンドロイドは進化してきた。
AIは個性を持ち、人々に寄り添い守る。
そこに比類なき力を持たせるため、アンドロイド用の様々な兵器が開発されては、アンドロイドを使って性能実験が行われ、その性能はすさまじい勢いで上がっていった。
「戦争は技術を進めるっていうけど、アンドロイド同士の開発競争はもはや戦争だったね」
「うん」
もしも、地球人類が、アンドロイドではなく、ただの兵器を開発し続けていたのなら、もしかしてこの星のように文明が崩壊していた可能性もあるのだろうか?
倫理観を捨てて、生物を改造して、大量殺りく兵器を打ち合い、滅んでいたのだろうか?
「そういえば、この星って宇宙開発はほとんどされていなかったんだよね? なんでだろう?」
「分からない。技術進化が別方向に進んだ結果? この星は生物工学が強く発展しているように感じる」
「外よりも内に向いたのか、まぁ、地球もアンドロイドがいるからこそ宇宙での活動が楽になったわけで、宇宙空間で人間の代わりに活動してくれる存在がいないと、宇宙の活動は大変だから仕方ないか」
この星の軌道衛星上にも、人工衛星の残骸などはあった。
しかし、衛星に基地などは存在せず、近い位置にある惑星もテラフォーミングなどはされておらず、手つかずの状態だった。
地球に近いほどまで、文明が進んでいたと思われるのに、それは少し不自然だったが、技術進化の方向が違ったと言われればそれまでだ。
実際、どれだけの予算をつぎ込まれるかで、技術の進歩は決まる。
だからそういうこともあるんだな、という感じである。
「お、やっと第一異星人の発見……ん?」
「ケモミミ」
第一異星人発見とパルメの報告と共に映像に目を向けると、ノエルがつぶやいたように、映像には複数の人の中にケモミミを持った異星人が映っていた。
「尻尾もあるな」
「パルメ姉さんから観察を続けるって」
「あぁ、分かった」
森の中を進む異星人たちは武器を持ち、その格好からハンターだと思われる。
ケモミミ2人に、普通に地球人と変わらないように見える人間が3人。
全員、年は中高生くらいに見える。
「蛇に狙われてる」
「ん? あぁ、さっきいた光学迷彩を持った蛇か」
まるでカメレオンみたいに体表の色を変えて、周囲に溶け込むというレベルではなく、特殊な鱗によって光の透過を屈折させて周囲に溶け込むという光学迷彩を持った蛇。
変温動物の爬虫類であり、森の中という空間では極めて発見の困難と考えられる生物兵器だ。
それにその体は、人を丸のみにするほどデカく、3~6匹で集団行動するという特徴も持っているようだった。
「1人捕まった」
「おぉ……あれは怖い」
一番後方を歩いていた少女の体に、蛇の体が巻き付き、一瞬のうちに樹上へ引っ張り上げられる。
警戒しながら静かに行動しているハンターたちは、それに気づくことなく進んでいく。
「まるでSFホラーだな」
ある程度ハンターたちが離れたところで、樹上に引っ張り上げられた少女は蛇によって締め上げられていく。
「死ぬ前に助けてあげて」
「助けるの?」
「見捨ててもいいけど、助けて情報を得たい。もう1人ケモミミを持った子も死ぬ前に助けてくれ。後は死体でもいいだろう」
今のところ、外に脅威らしきものは感じない、生物兵器は確かにただの人にとっては厄介かもしれないが、所詮は生物だ。
軍用のアンドロイドたちに敵うはずもない。
だが、いつの時代だって油断は命とりだ。
彼を知り己を知れば百戦|殆(あや)うからず、ともいう。
少々残酷だが、死体から得られる情報と生きた人間から得られる情報、両方とも手に入れたい。
「死体の回収にアナクシメを向かわせてくれ」
「うん」
さて、後は情報が得られるのを待っておくだけだな。
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