おじさん、後方黒幕面する

逆転好き

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6話

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 外に出たパルメは、かなりの速度で荒野を進んでいた。
 明らかに人を逸脱したその速度は時速200キロは出ている。
 そんな速度で荒野を爆走していると、いつの間にか周りはぽつぽつと背の低い草が茂る場所へ、少し先には森が見えるところまで移動していた。

「あれを越えた先に、街があるようですね。森の中は生物兵器も多いとのことですから、サンプルも採取できるでしょう」

 森には人もいる可能性があるので、慎重に行きましょうか。
 そう呟くと、パルメは徐々に速度を落としていき、森につく頃にはその足は歩く程度の速度まで落ちていた。

「おや、早速ですか。サンプルを頂戴しましょう」

 森に近づいた時点で、パルメはすでに補足していた生物兵器が、森の中から飛び出しパルメに襲い掛かる。
 それはおおよそ、鹿という生物に似ていた。
 ただ普通の鹿と違うところは、その角が刃物であることだろう。
 歴戦の鹿なのか、その肉体には多くの切り傷がある。

「刃物の角に、防刃の体。なかなか面白いですね。それでは死になさい」

 パルメは、腰に履いた剣を抜く。片刃の銃剣だ。
 それを持ち、前屈姿勢になったかと思った後には、その姿は掻き消え、鹿の後ろに移動していた。
 遅れて、鹿の首が落ちた。

「なるほど、中々斬りにくい」

 生物由来の物には、時として人間には想像のつかない性能を発揮する。
 パルメは簡単にその首を落としたが、普通の人間では、パルメが持つ銃剣を持ったところでその体に傷をつけられたかというほどに、鹿の体は斬りにくかった。

「皮膚手前で3層にも防刃効果のある毛が編まれて、刃の侵入を拒む。表面には体から出る特殊な皮脂によるコーティング。なるほど、普通の人間には強敵でしょう」

 パルメは刃物上の角を無造作につかみ上げ、その頭を見て、触り、分析する。
 刃物部分自体も、今まで戦ってきただろうに摩耗はなく相当鋭い。アンドロイドでなければ、掴んだだけでその指を切り落とされていただろう。
 明らかに自然生物ではないそれ、生物兵器と言われるのも納得である。

「刃はどうやって研いでいたのでしょう? いいえ、違いますね……これは微小金属とナノマシンの集合体なのですね。金属を食べ、体に取り込み、ナノマシンにより体外に出す。ナノマシンにより常に最善の状態に保つ。そんなところですか」

 そこまで分析したところで、興味を無くしたのかパルメはその頭を投げ捨てる。
 体の方へ近づく。

「肉はそれほど多くないですが……質は悪くないようですね。情報が合っているのなら、これがハンター中位で狩れる獲物ですか」

 ハンターのランクはHGFEDCBAの8段階。Hから始まりAが最高ランクとなっている。
 Hは14歳以下で登録した時に、Fは15歳以上で登録した時に与えられるランクで、低位ランクになる。
 ハンター中位ランクといえばDCとなり、この辺りになればベテランと言っていい領域であり、銃を持っているのが基本となる。
 その辺りであれば、防刃しか持たないこの鹿は、狩れる相手だろう。

「ステルスをして、森に入りましょう。流石に、常に戦い続けるのは面倒です」

 生物兵器たちは、呼気や心音にすら反応できるものが存在し、敵を発見殺すためのサーチアンドデストロイを行うものがいる。
 それが──。

「さて、貴方も分析させていただきましょう」

 パルメの目の前に現れた5mは在ろうかという熊である。
 もともと、人を殺すための兵器であるということを考えれば、その程度の性能は普通の物だ。
 その普通が、長い時をかけて、退化したものが大半だが、中にはこういう種もいる。

「あの鹿よりも防刃性能は高いようですね」

 パルメは、鹿の時と同じように、熊の首を落とそうと斬りかかったが、その毛皮の前に刃は止まり、腕力で熊を吹き飛ばしただけにとどまった。

「防弾性能もあり」

 銃剣に備え付けられた銃弾を撃ち込む。
 威力的には、情報にあったこの星で現在使われているだろう通常弾程度の物だ。

「伸びる爪、木を切り倒すほどの強度、腕力も相当ですね。速度はその巨体にみあったもの。とはいえ人間よりは早い」

 このレベルになると現地のAランクすら、1人では勝てないと言われる相手である。

「さて、もういいです」

 現地では人外と呼ばれるAランク。
 しかし、そもそもとして、アンドロイドであるパルメは素で人外である。

「死になさい」

 斬るではなく、パルメはその剣で突いた。
 音速を越えたその刺突は、熊の頭を刺し貫く。

「生物が基本である以上。限界がありますね」

 血糊を払い、パルメは剣をしまった。
 アンドロイドである彼女は、すでに行っていた疑似生体活動を停止して、ステルスモードに入っている。
 ため息をつくようなそぶりをした後に、今度こそ森の中に入っていくのだった。

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