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19.夜廻り

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深夜、私は、マークと共に、街に繰り出す。青黒い背景に、満月が浮かんでて、その雲を覆い隠すような天気だったが、特段、出掛けるのに、心配は要らなかった。

「どこに行かれます?マリス第二皇子」

 街内で、私はマリス第二皇子に話しかける。私は、訓練着のままで、探索をすることにしていた。

「バニの教会」
「バニ様の教会?」
「何らか戻って来てるかもしれないしねェ」

 こっちが、近道だよ。って彼は、言い行動したので、私達はマリス第二皇子についていった。

×××

 バニ様の教会に行くと、いつも、教会を守っている門番ももう、おらず、教会も閉まっていて、辺りはシンとしていた。しかし、マリス第二皇子は、正門から待つのではなく、裏門から彼がいないか見てみると言う。
 そこで、私達は茂みに隠れて張ってみた。

「…直接、訪問してみませんの?」

 私は、そう聞くと、マリス第二皇子は首を振る。そして、彼は自分に、腰に下げてある、針時計を見せた。

「ま、そこまで長居しないから大丈夫だよォ。00時00になったら、引き上げる予定だしィ」
「そうですか」
「……!お二人共」

 マークが何かに気付いたので、私達は声をひそめた。
 すると、バニ様が教会から、裏門を通りに出て行き、深夜、どこかへ繰り出そうとしていたのだ。

「バニ様は、教会に居ない筈じゃ…」
「…追うよ」

 私達は、気配を殺しながら、彼の後に着いていく。すると、彼は民間の家が立ち並ぶ場所に入り、気配がないか、の確認をすると、一つの家の中に入っていった。

 バニ様が入った家は、民間のアパートなどに立ち並ぶ所に、ぽっかり開いた所に立っていて、私からすれば小さな一軒屋、物置小屋くらいのサイズだった。
 こんな所に、バニ様は、何故入ったのかしら?

「待っておきますか?マリス第二皇子」
「いや、ここから先は俺一人で入るから、シルバー王女はここまでだよ」

 マリス第二皇子は、私に言った。

「ちょっとね、バニは特殊な力が使えるんだよ。教会の人間だからね。だから一見、害がなさそうな家でも、…何かしら罠を貼ってるかもしれない」
「マリス第二皇子は、バニ様の事、疑っておられるのですね」
「まあね。でも、…はあ。行きたいよね。シルバー王女」
「はい……、ここまで来て、マリス第二皇子を置いてはいけませんわ」
「やっぱそうか…。マーク」
「大丈夫です……シルバー王女は、お任せください」
「じゃあ、入るよ。でも、」

 マリス第二皇子は私を見る。

「何かあったら、俺をおいて逃げて。わかった?」
「……」
「返事」
「…はい」


12話 バニの目的
 バニ様と同じように、私達は一緒に中に入る。
 すると、外から見ると、そこまで大きさのない家が、前の方に暗い廊下が永遠に続いている。そのように思えた。

「…?何この床の文字」
「……」

 ふと、下の方を見ると、文字のような、何かが、白いチョークで、でかく描かれていた。
 マリス第二皇子は、何か見たことあるな…と、言うが、詳しくはわからないらしく、さあ。と私に返す。

「じゃあ、行くよ」

 廊下を渡る私達。なるべく、声を潜めていく。相当古い建物らしく、その音が下から鳴った。すると、木造のドアが手前にあり、そこから光が漏れている…。
 マリス第二皇子は、腰から、何かを取り出した…と思ったら、それは小型銃のようで、私は、マークに護衛されながら進む。
 すると、彼が私達の為に、確認のために頷くと、ドアを思いっきり開けて、マリス第二皇子は、銃火器を、部屋の真ん中に向けた。

「…何をされているんですか。マリス第二皇子様」
「それは、此方の台詞だけどォ。バニ」

 バニ様は、四角い部屋の、私達から見て、左、置く、右の壁を遮るように置かれている机の上に置かれてる本などを、手にとっていた。

「教会に行ったらさ、行方不明とは言ってからさァ、心配で探していただんよォ。なのに、こんな民衆の街中でこそこそして…、一体何が目的なのかなァ??」

 バニ様は、私達の方を、無表情のままで、見ていると、手に取っている本を机の上に置き、やれやれ。と呟くと、私を見、そして、笑いかけた。

「シルバー王女様までいるとは…、別に私は怪しい事はしていませんよ。ちょっと、ここで調べ物をしていたのです」
「調べ物?」
「俺も、聞かせて貰おうか。その事について」
「っつ!」

 声が、廊下から響いてきて、私達は、後ろを振り向くと、前回までドアが開けられた所から、アリーゼ皇子様が暗がりの中から出てきた。

「アリーゼ…気付いていたの?」
「いや、マリス達を、追わせていた。家の外に兵士を待機させている」
「ちッ…、全然気付かなかった。嫌味な奴…」
「俺が後ろから追ってたんじゃないのにか?」
「そういう所が嫌いなんだよ」
「まあ、そう言うな。で?バニは一体こそこそ、何をしていたんだ?」

 私達は、バニ様を見る。それに、バニ様はええ。と返事をした。

「実は、ここ最近、教会の腐敗が進んでいるのです」
「王権の事じゃなくて?」
「ええ…、王権の領に、所属する教会の方々が、それで被害にあっており、私の所に数々相談があっていました」
「もしかして、免罪符の事か?」
「…アリーゼ第一皇子様も、気付いておられたのですね。そのことです。だけど、それだけではなく、何か、大きな事件を起こそうとしているような…、そんな気がしましてね、私は、それを調べており、何か痕跡はないか、探していたのです。」

 それで、バニ様は、辺りを見渡す。

「それで、この家に辿り着きましてね、真相を解明しようと、調べようとしていた所なんですよ」
「じゃあ、今調べてたって事ォ?」
「そうですね」

 私達は、家の中に入り、詰まれてある本を読んだりしてみた。
 開いてみると、神聖カリーテナ帝国の、独自の家の写真集やら、農村の、風景の写真集やらで、特に普通の本棚にある本の内容だなと、私は思う。
 周りを見渡すと、皆同じようにしており、色々部屋を調べていた。

「ねえ、バニ、あの廊下の前に合った、あの変な文字、何なのォ?」
「あれは、教会の一部の者が使える部屋の暗号を模したものです。神権には、教会ごとに位があって、それごとに、使える能力があるのです。」
「バニは司祭だっけ…司祭ってどんな能力持ってるの?」
「全部に決まってるだろう」
「知ってんの?アリーゼ」
「ああ、だからバニは相当凄い奴って事だ」
「まあ、相当、神に近い立場には居ると思います…。だけど、何かしら、教会に居る人は、能力をお持ちだと思いますよ」
「へえ」
「そういえば、バニ様、ビアードを、ご存知ではないですか?」

 すると、彼は私の方を向く。すると、疑った顔をして、私を見た。何か、あったのかしら?

「どうして、ビアードの事を?…私は、実は、彼の行方を、追っていたのです」
「ビアードを?」

 皆、辺りがシンとなる。

「彼が唐突に、この教会から姿を消してですね…、私に相談せずです」

 バニ様は、悲しそうな顔をした。

「彼は、他の教会の者達より、低い身分ですし、何かしら、苦労されていたと思うのですが、それなりにここで、上手くやっておりましたし…、特に大丈夫だろう。だけど、突如消えて、心配になって私自ら探してしたのですよ」
「バニ、それはいつの頃だ」
「市場が終わった直前です」
「…俺は、その時に、免罪符を配ってる神権側の男にあった」
「その男、どうしました?」
「…俺達、王権じゃ裁けないから、ただ一喝して、その男は消えた」
「…それが正しい、行動です。神権の事は、私もあまり近づかない方が良いと思います。今はね。逆にその事を利用されてしまいますし、…もしかして、私の元に届いている苦情はその男の仲間か、複数犯でしょうか…?」
「……」

 皆で、その事について、考える。すると、

「…そういえば、この写真、ミュウの故郷じゃない?俺達、ここに、ミュウを迎えにいったじゃん」

 マリス第二皇子が手に取っている写真集、風景画は、ミュウ皇女の故郷らしい。それに、バニ様はしかめっ面をする。

「…何か、ミュウ皇女と、ビアードの事で、関係があるのでしょうか?シルバー王女様が、聞いてきたことも」
「バニ様、ビアードと、ミュウ皇女は、恋仲なのですよ」
「そうだったんですか?」
「ええ。ご存知なかったですか…」
「その、ミュウ皇女は、ビアードがいなくなった理由を知ってますか?」
「いいえ、ミュウ皇女が、その事について、聞いてきたのです。ビアードが教会に、居ないと」
「彼女が、教会に来た時は、ビアードの事を聞いて来なかったので、全く解りませんでしたが…」

 バニ様は、考える仕草をする。すると、

「…こんな時間ですが、急ぎで、ちょっと、ミュウ皇女に会ってもよろしいでしょうか?」
「今日じゃないと駄目ですか?」
「今日は、満月なので。満月は、狂気に染まりやすい日なのです。私が知っている事を、そこで全て話します」
「…、一旦城に戻ろう」
「私から、ミュウ皇女に、掛け合ってみますわ」
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