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13.教会
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アーガイルの模様と、植物の文様が施された部屋に、私とミュウ皇女はいた。
ミュウ皇女は、一人本を読むように、持って文字を必死に読んでいた。横には教科書が、詰まれてあり、それをミュウ皇女は、取ってみて、眺めていたのだ。
だけど、何か眉間に皺を寄せて、文字を近くまで寄せていたので、そのことを聞くと、…私、文字、読めないのですと、簡単なものなら大丈夫なのですが、ぽつりと呟いたので、教えるわ。と私は言った。
すると、ドアのノック音が聞こえ、返事をすると、がたいの良い男性が入ってきた。白い眼鏡に、そこから銀のアクセサリーがついており、ローブの格好で、本を抱えながら部屋の中へ入ってきた。彼は、ミュウ皇女の方を見ると、
「本当にいらっしゃるのですね。ミュウ皇女。大丈夫なんですか」
と驚いた。それに、ミュウ皇女は、はい。と言って、その家庭教師に返事をした。家庭教師は、いそいそと自分が持ってきた本を机に置き、授業の準備を始めた。
「では、今から、神聖カリ-テナ帝国の、歴史の授業から始めますね」
家庭教師は、大きな地図を広げて、黒板のようなものに貼り、説明する。
「シルバー王女は、どこまでご存知ですか。この、神聖カリーテナ帝国のことを」
「神聖カリーテナ帝国は、政治権力が分散されていて、王権と神権が存在していると。それで、聖職叙任権闘争により、民衆の支持を競っているということです」
「そうですね。では、それは、本当は、実際、どちらが力関係が大きいかわかりますか」
「…神権かしら。王権は、神権から授かり認められた。というし…歴史的に長いのは神権。だから、神権側が力が大きいのではないかなと」
「そうです。だから、実際は、王権は、神権より力が弱く、不和が起これば、均衡が崩れやすくなります。…よく、ご存知ですよね。ミュウ皇女」
「っつ……」
家庭教師はミュウ皇女を見て、そう言う。それに、彼女は、……ごめんなさいと呟いた。
…均衡が、崩れやすくなる事にミュウ皇女は関係あるのかしら?
ミルシルド王国では、側妃、正妃は必ずいるし…。少なくとも私の国では当たり前だ。
でも、神聖カリーテナ帝国は、国家権力の制度がどうなっているのか、確かに聞いたことない。
「でも、ミュウ皇女。今の、神聖カリーテナ帝国基盤は、必要な事なので、シルバー王女に、教えても良いですか」
「どうぞ…」
「神聖カリーテナ帝国は、今まででしたら、王権の世襲制度は、先に産まれた第一皇子が継ぐ予定でした」
「…今の現状だったら、アリーゼ皇子様が継ぐって事?」
「ええ。しかし、現王のスキャンダルが発生し、それが揺らぎつつあります。ミュウ皇女の存在が、帝国では民衆の心の動揺に繋がっています」
「王権打破を望むとか、…そんな感じかしら」
「はい。しかも、それを現王が良しとしているのです。…何でも、王権の改革だとか、言って」
「ああ…だから、私、二人の皇子のどちらか、なんて条件がついていたのね」
「……」
「今の王は、相当破天荒なお人って事かしら…」
「まあ……やたら、現状打破を望む人ですね。それで、王権の世襲制度、今後どうなるのやらって感じです」
はあ。と溜息をつく家庭教師。大分、苦労しているらしい。
成る程。三人の仲の悪さは、現王が原因か…。
確かに、民衆までもが、それを望むようになったなら、大変だろう…。しかも、それは王が責任をとるという、お墨付きだ。いざとなったら、そのせいにできるし、マリス皇子やアリーゼ皇子、ミュウ皇女の苦労がわかる。
「成る程。神聖カリーテナ帝国では、そんな感じなのね…。それは、そうと、国王と王妃には私、いつ会えます?」
「それは、いずれアリーゼ皇子様か、マリス皇子様が連れて行かれるでしょう…そうそう。次の回では、神権の事を知るために、王権内の領地にある、教会に連れて行きますね」
「王権と神権は仲が悪いわけではないの?」
「ええ。中には、こちら側を支持している教会もありますよ。ま、腹の内はわからないですけどね。」
そうして、その後、色々教えてもらい、40分たった後、神聖カリーテナ帝国の歴史は終わった。次の授業の先生は、違う先生らしく、歴史の家庭教師は部屋から出て行った。
「…ミュウ皇女」
ミュウ皇女は、落ち込んでいた。彼女に私は呼びかけると、力なく返事を返す。
「大丈夫?」
「…はい」
「…でも、この国にはそういう事情があったのね」
「…ええ」
ミュウ皇女はそれに認めた。
「ミュウ皇女は、それにどういう考えなの?」
「…私の考え?」
「ええ。貴女はこの国の皇女だけど、農奴としての立ち位置も持ってるじゃない。それは、貴女にしかない強みだと思うし…。」
「……」
「ミュウ皇女、私はね、何か、くやしいと思ったわ。さっきの授業を聞いて」
「シルバー王女様……」
ミュウ皇女は、下を向いて、手を握り考え込む。
「…どうする?ミュウ皇女。次の授業も受ける」
「……はい。シルバー王女様。私、頑張ります。一緒に王妃教育を受けて、...私、認めて貰います」
「ええ。わかったわ。」
×××
王妃教育の一貫で、歴史の授業を教えた家庭教師、私とミュウ皇女、マークは、王権内の敷地に所属している、教会を見に行く事になった。教会は、L型で、敷地の端に寄り添うように立っていた。
建物の正面のドアから入り、中に入る。中は、広い空洞で、天井を見ると、リブ・ヴォールトの造作。
廊下が、私達から見て、左に連なっていた。
正面には、丸窓の、色とりどりのステンドガラスがついたものが目前にある。
すると、左から低い声が響いてきたので、見ると、その先は祭壇場であるらしく、ドアがないので突き抜けて見え、オルガンの音と、そこで何か喋っている人物達がいた。
「シルバー王女様。この先で待ってらっしゃる…と、この教会の責任者が言われましたが、他にだれかいらっしゃるようですね」
家庭教師が、小声で喋る。そして、近くで待っておきましょう。と彼が言ったので、祭壇が見える傍の廊下の端で待って置く事にした。段々声が近づいてくる。
「それは、すなわち、神の啓示です。貴方は、天に使命を与えられています」
「はい」
「耳を澄ましなさい。その声を、享受し、自身の経過を伴えば、きっと自分の道が開かれるでしょう。天の導きに祝福を。アーメン」
「アーメン」
低い男性の声が、先に届き、その後、その声を、呼応するように答える男性。その後、暫く立つと、ぽっかり開いたドアから、農夫が、出てきて、やがて、私達の前を通って、軽くお辞儀をしてから、教会へ出て行った。
すると、その後から、牧師の格好をした、背が高い、黒髪の男性出てくる。その人は私達の前に立ち、困ったように笑うと、お詫びをした。
「すみません、押してしまって。…シルバー王女様。、ミュウ皇女様。聞いていますよ。王妃教育の一貫でいらしたのですよね。 初めまして。私はこの教会の責任者、バニ・プロスです。宜しくお願いしますね」
頭を、下げる、彼…バニ・プロス様。その瞬間、私は、何か、何処かで見たことあるな。という既視感が宿った。少女漫画に出てきたキャラ…、ではなさそう…。
「…改めまして、宜しくお願い致しますわ。バニ様。私、シルバーです」
「ミュウです。宜しくお願い致します」
私と、ミュウ皇女は、彼に挨拶する。すると、彼ははい。と返事をした。
「確か、シルバー王女は、ミルシルド大国の王女だとか」
「…そこまで、知っていらっしゃるのですね」
「アリーゼ第一皇子様に聞きました。…それでは、お約束どおり、今から中を案内致しますね。ビアード、ついてきて貰えますか」
「はい、バニ様」
ビアード?
私は、その名前を聞いて、ハッとした。
バニ様は、祭壇中にいる誰かに声を掛けると、マリス第二皇子と、同じくらいの背丈の、灰色がかった髪の男性が、駆け寄るように出てきて、私達の前に立つ。
その、彼が、顔を上げると、視線は、私ではなく、右にいるミュウ皇女に、向けていた。私は、隣のミュウ皇女を、横目で見ると、ミュウ皇女は、ぽかんと、口を開けた状態でビアードの方を見ていた。それに、流れて、ビアードの方を見ると、脇目も反らさず、彼はそのままだ。
他の人はそれに気づいておらず、家庭教師も、護衛のマークも、バニ様の方を見ていた。
「私の弟子、ビアードです。何かありましたら、彼にも聞いてください。付き添いです」
バニ様が紹介すると、特に、ビアードは自分から自己紹介せず挨拶をし、私達は小集団になり移動を始めた。
ミュウ皇女は、一人本を読むように、持って文字を必死に読んでいた。横には教科書が、詰まれてあり、それをミュウ皇女は、取ってみて、眺めていたのだ。
だけど、何か眉間に皺を寄せて、文字を近くまで寄せていたので、そのことを聞くと、…私、文字、読めないのですと、簡単なものなら大丈夫なのですが、ぽつりと呟いたので、教えるわ。と私は言った。
すると、ドアのノック音が聞こえ、返事をすると、がたいの良い男性が入ってきた。白い眼鏡に、そこから銀のアクセサリーがついており、ローブの格好で、本を抱えながら部屋の中へ入ってきた。彼は、ミュウ皇女の方を見ると、
「本当にいらっしゃるのですね。ミュウ皇女。大丈夫なんですか」
と驚いた。それに、ミュウ皇女は、はい。と言って、その家庭教師に返事をした。家庭教師は、いそいそと自分が持ってきた本を机に置き、授業の準備を始めた。
「では、今から、神聖カリ-テナ帝国の、歴史の授業から始めますね」
家庭教師は、大きな地図を広げて、黒板のようなものに貼り、説明する。
「シルバー王女は、どこまでご存知ですか。この、神聖カリーテナ帝国のことを」
「神聖カリーテナ帝国は、政治権力が分散されていて、王権と神権が存在していると。それで、聖職叙任権闘争により、民衆の支持を競っているということです」
「そうですね。では、それは、本当は、実際、どちらが力関係が大きいかわかりますか」
「…神権かしら。王権は、神権から授かり認められた。というし…歴史的に長いのは神権。だから、神権側が力が大きいのではないかなと」
「そうです。だから、実際は、王権は、神権より力が弱く、不和が起これば、均衡が崩れやすくなります。…よく、ご存知ですよね。ミュウ皇女」
「っつ……」
家庭教師はミュウ皇女を見て、そう言う。それに、彼女は、……ごめんなさいと呟いた。
…均衡が、崩れやすくなる事にミュウ皇女は関係あるのかしら?
ミルシルド王国では、側妃、正妃は必ずいるし…。少なくとも私の国では当たり前だ。
でも、神聖カリーテナ帝国は、国家権力の制度がどうなっているのか、確かに聞いたことない。
「でも、ミュウ皇女。今の、神聖カリーテナ帝国基盤は、必要な事なので、シルバー王女に、教えても良いですか」
「どうぞ…」
「神聖カリーテナ帝国は、今まででしたら、王権の世襲制度は、先に産まれた第一皇子が継ぐ予定でした」
「…今の現状だったら、アリーゼ皇子様が継ぐって事?」
「ええ。しかし、現王のスキャンダルが発生し、それが揺らぎつつあります。ミュウ皇女の存在が、帝国では民衆の心の動揺に繋がっています」
「王権打破を望むとか、…そんな感じかしら」
「はい。しかも、それを現王が良しとしているのです。…何でも、王権の改革だとか、言って」
「ああ…だから、私、二人の皇子のどちらか、なんて条件がついていたのね」
「……」
「今の王は、相当破天荒なお人って事かしら…」
「まあ……やたら、現状打破を望む人ですね。それで、王権の世襲制度、今後どうなるのやらって感じです」
はあ。と溜息をつく家庭教師。大分、苦労しているらしい。
成る程。三人の仲の悪さは、現王が原因か…。
確かに、民衆までもが、それを望むようになったなら、大変だろう…。しかも、それは王が責任をとるという、お墨付きだ。いざとなったら、そのせいにできるし、マリス皇子やアリーゼ皇子、ミュウ皇女の苦労がわかる。
「成る程。神聖カリーテナ帝国では、そんな感じなのね…。それは、そうと、国王と王妃には私、いつ会えます?」
「それは、いずれアリーゼ皇子様か、マリス皇子様が連れて行かれるでしょう…そうそう。次の回では、神権の事を知るために、王権内の領地にある、教会に連れて行きますね」
「王権と神権は仲が悪いわけではないの?」
「ええ。中には、こちら側を支持している教会もありますよ。ま、腹の内はわからないですけどね。」
そうして、その後、色々教えてもらい、40分たった後、神聖カリーテナ帝国の歴史は終わった。次の授業の先生は、違う先生らしく、歴史の家庭教師は部屋から出て行った。
「…ミュウ皇女」
ミュウ皇女は、落ち込んでいた。彼女に私は呼びかけると、力なく返事を返す。
「大丈夫?」
「…はい」
「…でも、この国にはそういう事情があったのね」
「…ええ」
ミュウ皇女はそれに認めた。
「ミュウ皇女は、それにどういう考えなの?」
「…私の考え?」
「ええ。貴女はこの国の皇女だけど、農奴としての立ち位置も持ってるじゃない。それは、貴女にしかない強みだと思うし…。」
「……」
「ミュウ皇女、私はね、何か、くやしいと思ったわ。さっきの授業を聞いて」
「シルバー王女様……」
ミュウ皇女は、下を向いて、手を握り考え込む。
「…どうする?ミュウ皇女。次の授業も受ける」
「……はい。シルバー王女様。私、頑張ります。一緒に王妃教育を受けて、...私、認めて貰います」
「ええ。わかったわ。」
×××
王妃教育の一貫で、歴史の授業を教えた家庭教師、私とミュウ皇女、マークは、王権内の敷地に所属している、教会を見に行く事になった。教会は、L型で、敷地の端に寄り添うように立っていた。
建物の正面のドアから入り、中に入る。中は、広い空洞で、天井を見ると、リブ・ヴォールトの造作。
廊下が、私達から見て、左に連なっていた。
正面には、丸窓の、色とりどりのステンドガラスがついたものが目前にある。
すると、左から低い声が響いてきたので、見ると、その先は祭壇場であるらしく、ドアがないので突き抜けて見え、オルガンの音と、そこで何か喋っている人物達がいた。
「シルバー王女様。この先で待ってらっしゃる…と、この教会の責任者が言われましたが、他にだれかいらっしゃるようですね」
家庭教師が、小声で喋る。そして、近くで待っておきましょう。と彼が言ったので、祭壇が見える傍の廊下の端で待って置く事にした。段々声が近づいてくる。
「それは、すなわち、神の啓示です。貴方は、天に使命を与えられています」
「はい」
「耳を澄ましなさい。その声を、享受し、自身の経過を伴えば、きっと自分の道が開かれるでしょう。天の導きに祝福を。アーメン」
「アーメン」
低い男性の声が、先に届き、その後、その声を、呼応するように答える男性。その後、暫く立つと、ぽっかり開いたドアから、農夫が、出てきて、やがて、私達の前を通って、軽くお辞儀をしてから、教会へ出て行った。
すると、その後から、牧師の格好をした、背が高い、黒髪の男性出てくる。その人は私達の前に立ち、困ったように笑うと、お詫びをした。
「すみません、押してしまって。…シルバー王女様。、ミュウ皇女様。聞いていますよ。王妃教育の一貫でいらしたのですよね。 初めまして。私はこの教会の責任者、バニ・プロスです。宜しくお願いしますね」
頭を、下げる、彼…バニ・プロス様。その瞬間、私は、何か、何処かで見たことあるな。という既視感が宿った。少女漫画に出てきたキャラ…、ではなさそう…。
「…改めまして、宜しくお願い致しますわ。バニ様。私、シルバーです」
「ミュウです。宜しくお願い致します」
私と、ミュウ皇女は、彼に挨拶する。すると、彼ははい。と返事をした。
「確か、シルバー王女は、ミルシルド大国の王女だとか」
「…そこまで、知っていらっしゃるのですね」
「アリーゼ第一皇子様に聞きました。…それでは、お約束どおり、今から中を案内致しますね。ビアード、ついてきて貰えますか」
「はい、バニ様」
ビアード?
私は、その名前を聞いて、ハッとした。
バニ様は、祭壇中にいる誰かに声を掛けると、マリス第二皇子と、同じくらいの背丈の、灰色がかった髪の男性が、駆け寄るように出てきて、私達の前に立つ。
その、彼が、顔を上げると、視線は、私ではなく、右にいるミュウ皇女に、向けていた。私は、隣のミュウ皇女を、横目で見ると、ミュウ皇女は、ぽかんと、口を開けた状態でビアードの方を見ていた。それに、流れて、ビアードの方を見ると、脇目も反らさず、彼はそのままだ。
他の人はそれに気づいておらず、家庭教師も、護衛のマークも、バニ様の方を見ていた。
「私の弟子、ビアードです。何かありましたら、彼にも聞いてください。付き添いです」
バニ様が紹介すると、特に、ビアードは自分から自己紹介せず挨拶をし、私達は小集団になり移動を始めた。
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