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ルビーのブローチを渡すまで逃しません
19.リアムの奮闘 四日目
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「リアム様、リアム様……!」
「おい! リアム、どうしたんだ!」
「リアム様、今日はお休みになってはいかがですか?」
ポール様と、イアンと、エリザベス様の声がする。声は、聞こえる。仕事も、問題ない。だが……。
「リアム様。領主命令です。本日はお休み下さい」
ポール様が、淡々と命令を下す。私はあくまでもポール様の代理。彼に命じられれば従うしかない。
「承知……しました……」
私はそのまま、自室のベッドに倒れ込んだ。昨日はあれから、何をしていたか思い出せない。書類を見る限り仕事は問題なくこなしていたようだが、記憶がない。
ぼんやりと過ごしていたら、部屋の扉をノックする人が現れた。
「失礼します! リアム様、入って良いですか?」
カーラさんの声に、ベッドから飛び起きた。なんで……なんで彼女が……。次の瞬間、友人の顔が浮かんだ。そうか、私が落ち込んでいるのはカーラさんと話せなかったからだと思ったんだな。
ありがとうイアン。
けどな、今だけは余計なお世話だと言いたい。
何が悲しくて、失恋したばかりで想い人に会わないといけないんだ。……けど、カーラさんを追い返す事は出来ない。
「……どうぞ、お入りください」
心配そうにしているカーラさんは、温かいスープを持って来てくれた。
「あの、食欲はありますか?」
「はい。頂きます」
「良かった。それから、これは果実水です。水分補給をして下さいね。熱はありませんか?」
そう言って、カーラさんは私の額に手を当ててきた。
「んー……熱は……ちょっと熱いかも? 果実水に砂糖と塩を入れておきますから、少しずつ飲んで下さいね」
テキパキと看病をするカーラさんに、何故かイライラしてしまう。目の前のスープが忌々しくて、早々に飲み干した。
「スープ、もう飲んだんですか? おかわりは要りますか?」
「要りません。放っておいて下さい」
私は子どもか?!
彼女に八つ当たりしてどうする。
私がもっと早く……彼女の気持ちに応えていれば……こんな気持ちにならなくて済んだのに……。
「リアム様? どうされたのですか?」
心配そうに覗き込むカーラさんの顔が近い。とても無防備な姿だ。このまま彼女に口付けでもすれば、トムさんはカーラさんを諦めるだろうか。
邪な気持ちを振り払う。とにかく、一人になりたい。
「少し体調が優れなくて。休みますので一人にして頂けますか?」
「……駄目です」
「はぁ?!」
素っ頓狂な声が出た。頼むから出て行ってくれ! このままじゃ、カーラさんに何をしてしまうか分からない。彼女は、トムさんの恋人なのに。
「今のリアム様は、なんだかおかしいです。エリザベスお嬢様とポール様の許可は取れていますから、看病します。もちろん邪魔はしません。お休みになれるよう、寝所を整えるだけです」
「要りません! 若い女性が男の部屋に入って二人きりなんてどんな噂が立つか分かったものではないでしょう!」
頼むから出て行ってくれ。私の理性があるうちに。
「構いません。リアム様を放っておくなんて、嫌です」
カーラさんの潤んだ瞳を見ると、理性が飛んでしまいそうだ。駄目だ……駄目だ駄目だ……。
私は急いでドアを開けて、彼女を外へ追い出そうとした。だけど、鍛錬を積んだカーラさんは力強くて……私の力では彼女を動かす事は出来なかった。
「……カーラさん、あなたが……悪いんですよ……」
自分が自分でなくなってしまったようだ。なんとか口だけは避けるんだ。そんな理性しか残っていない。カーラさんの頬に顔を近づけると、彼女は真っ赤な顔で固まった。その瞬間、扉の前にトムさんが洗面器とタオルを持って現れた。
「おい! リアム、どうしたんだ!」
「リアム様、今日はお休みになってはいかがですか?」
ポール様と、イアンと、エリザベス様の声がする。声は、聞こえる。仕事も、問題ない。だが……。
「リアム様。領主命令です。本日はお休み下さい」
ポール様が、淡々と命令を下す。私はあくまでもポール様の代理。彼に命じられれば従うしかない。
「承知……しました……」
私はそのまま、自室のベッドに倒れ込んだ。昨日はあれから、何をしていたか思い出せない。書類を見る限り仕事は問題なくこなしていたようだが、記憶がない。
ぼんやりと過ごしていたら、部屋の扉をノックする人が現れた。
「失礼します! リアム様、入って良いですか?」
カーラさんの声に、ベッドから飛び起きた。なんで……なんで彼女が……。次の瞬間、友人の顔が浮かんだ。そうか、私が落ち込んでいるのはカーラさんと話せなかったからだと思ったんだな。
ありがとうイアン。
けどな、今だけは余計なお世話だと言いたい。
何が悲しくて、失恋したばかりで想い人に会わないといけないんだ。……けど、カーラさんを追い返す事は出来ない。
「……どうぞ、お入りください」
心配そうにしているカーラさんは、温かいスープを持って来てくれた。
「あの、食欲はありますか?」
「はい。頂きます」
「良かった。それから、これは果実水です。水分補給をして下さいね。熱はありませんか?」
そう言って、カーラさんは私の額に手を当ててきた。
「んー……熱は……ちょっと熱いかも? 果実水に砂糖と塩を入れておきますから、少しずつ飲んで下さいね」
テキパキと看病をするカーラさんに、何故かイライラしてしまう。目の前のスープが忌々しくて、早々に飲み干した。
「スープ、もう飲んだんですか? おかわりは要りますか?」
「要りません。放っておいて下さい」
私は子どもか?!
彼女に八つ当たりしてどうする。
私がもっと早く……彼女の気持ちに応えていれば……こんな気持ちにならなくて済んだのに……。
「リアム様? どうされたのですか?」
心配そうに覗き込むカーラさんの顔が近い。とても無防備な姿だ。このまま彼女に口付けでもすれば、トムさんはカーラさんを諦めるだろうか。
邪な気持ちを振り払う。とにかく、一人になりたい。
「少し体調が優れなくて。休みますので一人にして頂けますか?」
「……駄目です」
「はぁ?!」
素っ頓狂な声が出た。頼むから出て行ってくれ! このままじゃ、カーラさんに何をしてしまうか分からない。彼女は、トムさんの恋人なのに。
「今のリアム様は、なんだかおかしいです。エリザベスお嬢様とポール様の許可は取れていますから、看病します。もちろん邪魔はしません。お休みになれるよう、寝所を整えるだけです」
「要りません! 若い女性が男の部屋に入って二人きりなんてどんな噂が立つか分かったものではないでしょう!」
頼むから出て行ってくれ。私の理性があるうちに。
「構いません。リアム様を放っておくなんて、嫌です」
カーラさんの潤んだ瞳を見ると、理性が飛んでしまいそうだ。駄目だ……駄目だ駄目だ……。
私は急いでドアを開けて、彼女を外へ追い出そうとした。だけど、鍛錬を積んだカーラさんは力強くて……私の力では彼女を動かす事は出来なかった。
「……カーラさん、あなたが……悪いんですよ……」
自分が自分でなくなってしまったようだ。なんとか口だけは避けるんだ。そんな理性しか残っていない。カーラさんの頬に顔を近づけると、彼女は真っ赤な顔で固まった。その瞬間、扉の前にトムさんが洗面器とタオルを持って現れた。
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