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ルビーのブローチを渡すまで逃しません

20.カーラの心

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様子がおかしいリアム様を看病しようとしたら、いきなり頬にキスされそうになった。嬉しいけど……なんでこんなにリアム様は苦しそうなの?

「すいません……! カーラさん、トムさん……今のは……忘れて下さい……!」

「忘れるなんて無理っすよ。なんでこんな事したんですか」

トムが怒ってるように見える。いやでも、これ違うよね?
だって、トムは私がリアム様を好きだと知ってるもの。そりゃ、あんなの見たら気まずいかもしれないけど、怒る理由はないわよね。

リアム様は、めちゃくちゃ謝ってくれるんだけど……嫌だったのかな?
えっと、体調が悪くてムラムラしたとか?

そんな事を考えていたら、リアム様が苦しそうに呟いた。

「……私は……私は……カーラさんが……好きなんです……」

ん?
リアム様……今、なんて言った?

も、もう一回!
そう言いたかったけど、トムがニヤニヤしながらリアム様を問い詰めるからなにも言えなかった。

「へぇ、好きならカーラの同意なしにこんな事して良いんっすか?」

ほっぺただよ?!
口じゃないんだよ?!

しかも未遂だよ?!

けど、リアム様は見た事がないくらい落ち込んでおられる。本当に意味が分からない。

「……駄目に決まってます……本当に申し訳ありません……」

駄目じゃありませんよ?!
むしろラッキーですよ! ってか、いつの間に私はリアム様に好かれてたの?!

なんでリアム様は、そんなにトムに謝るの?!

理由は、次のリアム様の一言で分かった。

「……おふたりは……恋人なのに……」

ん?
おふたり?

誰の事?

その瞬間、トムが笑い出した。

「やっぱ勘違いしてたんですね。オレの恋人はカーラじゃありませんよ。カーラの妹です」

「……へ?」

リアム様が、固まった。ポカンとしておられるわ。うわぁ、そんな姿もかっこいい。トムはケラケラ笑いながら、話を続ける。

「いやー、この間からリアム様の様子がおかしいなとは思ってたんですよ。カーラが去った方角ばっか見てるし。昨日はずーっとオレを睨んでるし。んで、思い返してみたらカーラと顔合わせの話をしてましたからね。あ、コレ勘違いされてんなって気が付きました。なんで、ちょこっとイアン様に相談して、カーラを連れて来てもらったんですけど……さすがリアム様。手が早いっすね」

「ちちち……違うんです!」

「違うんですか? あーあ、カーラはずっと前からリアム様が好きなのに。女性をもて遊ぶなんてよくないっすよ」

「トム! 余計な事言わないでよ! それに、リアム様はそんな事しないわよっ!」

「知ってるよ。今だってオレが来なくてもなんもしなかったと思うぜ。ほらカーラ、チャンスだぞ。あ、コレやるわ。頑張れよ」

ちょっと!
手に持っていた洗面器とタオルを渡してトムは笑いながら去って行った。

「……その、突然申し訳ありません……」

真っ赤な顔のリアム様が近寄って来る。どうして良いか分からない。パニックになった私は、トムから渡された洗面器を落としてしまった。
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