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第二章
雨飾り
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エレベラの街で少し休憩をとった後、すぐに出発する手筈となっているから、ゆっくりとお店を見て回る時間はない。
私達五貴族は、基本的に王都から出ることはない。シーズンオフに領地に戻ることはあれど、それ以外の期間に、特に令嬢は王都に降りることはおろか、他の街に遊びのために足を伸ばすことは滅多にない。それは五貴族に留まらず、五貴族以外の貴族ーー伯爵令嬢や子爵令嬢、男爵令嬢なんかも同じだ。
唯一、ケイト様はその教えを破ってよく外出していたようだけれど。
(ケイト様は規約とか規定とか、そういったものが嫌いだものね)
そんなことを考えながら馬車からおりると、開けた土地だからか、青空がよく見えた。
「わぁ、いい天気」
「そうだね。出立の日にこれは、幸先がいいな。雨が降るかもしれないと思ってたけど、晴れてよかった」
「そうでしたわ、レスト様は【雨】の家系でしたわね。でも、私、雨も好きです。雨上がりの虹ってとっても綺麗ーー」
「ホシュアが降りてくる前に、移動しようか」
しかし、レスト様は珍しく私の言葉をさえぎって、手を握ったまま誘導した。彼にエスコートされる形で、私も彼について行く。どこに行くかしら……?
(それに今、言葉を遮ったのって………。ケイト様のことがあるからかしら……)
どちらにせよ、婚約破棄した相手の属性に関わる用語を出したのは良くなかった。うっかり口に出してしまったが、レスト様とケイト様の溝はかなり深いということなのだろう。私とアホシュアも似たような状況ではあるが、アホシュアがアホすぎるせいか、私と彼の関係はそこまで深刻ではない。心底うざったらしいけれど。あの高慢ちきはきっと生まれつきに違いないわ。どうしたらあそこまで自分に自信をもてるのか、逆に尋ねてみたい。
「レスト様、どちらに向かいますの?」
「ケイトはセンメトリーが、ホシュアはひとりでも構わないだろう。だったら、ふたりで見て回らないか?俺もエレベラに来るのは久しぶりなんだ」
「ええっと………」
ケイト様はセンメトリーがついているから大丈夫だろう。いくら彼女だって、聖女様のお迎えの時に他の男性と仲良くするようなまねはしない………はずだ。多分。きっと。
アホシュアにおいては、腐っても五貴族。昔から武芸は教わっているだろうから、きっと大丈夫………かしら?思えば私はアホシュアが武芸に励んでいるところを見たことがない。心配する義理はないけれど、もしここでアホシュアがトラブルに巻き込まれでもしたら、聖女様のお迎えに行くのが遅くなってしまう。
「ホシュア様は………あまり武術ごとは励まれていなかったように思います」
「………そうだったね」
ため息混じりにレスト様は言うと、私の手を軽く引っ張った。突然のことにバランスを失って、レスト様の胸元に倒れ込む。レスト様は遠くーー先程私たちがいた馬車を見ると、呟いた。
「五貴族において、いや、貴族男子として剣の扱いは基本として教わるのだけど、ホシュアは怯えてナイフすら扱えなさそうだな。もしそれで何かあったとしても、自分の身可愛さに怠けた己の責任だと言ってやりたいけど………今この状況で、そうも言ってられないね」
「レスト様………?」
「リリア、この店に入っていて。俺はホシュアに言付けをしてから、戻るよ」
「え?」
レスト様の言う"この店"とは、この街でも裕福な子女が買いに来るのであろう品のいいブティックだった。重厚な茶色い看板に、旧字体で店名が記載されている。
私がそちらを見ていると、レスト様がブティックを見た。
「ここなら、トラブルにも巻き込まれにくい。すぐ戻るから、待ってて」
「わ、分かりました」
アホシュアに何を言いに戻るのか気になったけれど、それは後で聞けばいいかとレスト様の言いつけ通り、アンティークショップへと入る。カロンコロン、と店が入店を歓迎する鈴の音がする。
私達五貴族は、基本的に王都から出ることはない。シーズンオフに領地に戻ることはあれど、それ以外の期間に、特に令嬢は王都に降りることはおろか、他の街に遊びのために足を伸ばすことは滅多にない。それは五貴族に留まらず、五貴族以外の貴族ーー伯爵令嬢や子爵令嬢、男爵令嬢なんかも同じだ。
唯一、ケイト様はその教えを破ってよく外出していたようだけれど。
(ケイト様は規約とか規定とか、そういったものが嫌いだものね)
そんなことを考えながら馬車からおりると、開けた土地だからか、青空がよく見えた。
「わぁ、いい天気」
「そうだね。出立の日にこれは、幸先がいいな。雨が降るかもしれないと思ってたけど、晴れてよかった」
「そうでしたわ、レスト様は【雨】の家系でしたわね。でも、私、雨も好きです。雨上がりの虹ってとっても綺麗ーー」
「ホシュアが降りてくる前に、移動しようか」
しかし、レスト様は珍しく私の言葉をさえぎって、手を握ったまま誘導した。彼にエスコートされる形で、私も彼について行く。どこに行くかしら……?
(それに今、言葉を遮ったのって………。ケイト様のことがあるからかしら……)
どちらにせよ、婚約破棄した相手の属性に関わる用語を出したのは良くなかった。うっかり口に出してしまったが、レスト様とケイト様の溝はかなり深いということなのだろう。私とアホシュアも似たような状況ではあるが、アホシュアがアホすぎるせいか、私と彼の関係はそこまで深刻ではない。心底うざったらしいけれど。あの高慢ちきはきっと生まれつきに違いないわ。どうしたらあそこまで自分に自信をもてるのか、逆に尋ねてみたい。
「レスト様、どちらに向かいますの?」
「ケイトはセンメトリーが、ホシュアはひとりでも構わないだろう。だったら、ふたりで見て回らないか?俺もエレベラに来るのは久しぶりなんだ」
「ええっと………」
ケイト様はセンメトリーがついているから大丈夫だろう。いくら彼女だって、聖女様のお迎えの時に他の男性と仲良くするようなまねはしない………はずだ。多分。きっと。
アホシュアにおいては、腐っても五貴族。昔から武芸は教わっているだろうから、きっと大丈夫………かしら?思えば私はアホシュアが武芸に励んでいるところを見たことがない。心配する義理はないけれど、もしここでアホシュアがトラブルに巻き込まれでもしたら、聖女様のお迎えに行くのが遅くなってしまう。
「ホシュア様は………あまり武術ごとは励まれていなかったように思います」
「………そうだったね」
ため息混じりにレスト様は言うと、私の手を軽く引っ張った。突然のことにバランスを失って、レスト様の胸元に倒れ込む。レスト様は遠くーー先程私たちがいた馬車を見ると、呟いた。
「五貴族において、いや、貴族男子として剣の扱いは基本として教わるのだけど、ホシュアは怯えてナイフすら扱えなさそうだな。もしそれで何かあったとしても、自分の身可愛さに怠けた己の責任だと言ってやりたいけど………今この状況で、そうも言ってられないね」
「レスト様………?」
「リリア、この店に入っていて。俺はホシュアに言付けをしてから、戻るよ」
「え?」
レスト様の言う"この店"とは、この街でも裕福な子女が買いに来るのであろう品のいいブティックだった。重厚な茶色い看板に、旧字体で店名が記載されている。
私がそちらを見ていると、レスト様がブティックを見た。
「ここなら、トラブルにも巻き込まれにくい。すぐ戻るから、待ってて」
「わ、分かりました」
アホシュアに何を言いに戻るのか気になったけれど、それは後で聞けばいいかとレスト様の言いつけ通り、アンティークショップへと入る。カロンコロン、と店が入店を歓迎する鈴の音がする。
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