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第二章
素敵な女の子
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「ふん、リリア。アレを見ただろう?」
「え?え、えぇ。はぁ。はい」
突然対面に座るアホシュアが前髪をかきあげながら話す。というより、いつまで前髪をかきあげているのかしら。髪が抜けて馬車に落ちるから、やめてほしいのだけど。
そう思っていると、アホシュアは私の心の声が通じたのか、通じてないのか、不意に手をピタリと止めた。ちょうど、彼の指先が前髪にくい込み、少し生え際の薄くなった額が露になっている。
アホシュアのお父様も頭が少し、明るいものね………。髪質は遺伝、と言うし。私はふとこの前王城であったディーンハルト殿下のことを思い出した。あの方はすごく髪がサラサラだけれど、あれも遺伝………?
「可愛いだろう?」
「へ?えっと………はい?」
アホシュアは妙にカッコつけた顔で言った。控えめに申し上げてもはったたきたいお顔ですわ。
「僕のことが好きで好きでどうしようもないからああやって………思わせぶりな振りをして。フッ、レスト。悪かったな、僕がいいとこ取りをしてしまって」
「………」
レスト様は無視である。
窓の外ーーケイト様が降りていった方ではなく。逆側の窓を見ている。
「リリアも、僕のことがまだ好きなんだろう?ああ!大丈夫だ。隠さなくていい。ケイトには内緒だからな……」
「そろそろ降りないと、ワイ………センメトリー様が困ってしまいますね。レスト様、前を失礼いたしますね」
アホシュアの妄言に付き合っている暇もないので、私も馬車を降りることにした。アホシュアは何を勘違いしたのか、さらに喚き散らす。
「全く、お前は可愛くない女だ!!それだから僕に婚約破棄されるんだ!そんな鉄仮面、誰も抱きたいなどと思わないぞ!僕のことが好きで恥ずかしいのはわかるけど、そんなに生意気だと誰も………」
「ホシュア、口を慎んでくれないか?もうリリアは俺の婚約者だよ」
「っ………」
「………?」
アホシュアは、なぜかレスト様に言われると黙ってしまう。まるで、そういう機械仕掛けが施されているよう。固まるアホシュアに、レスト様は座椅子から立ち上がり、私の肩にそっと触れた。
「段差があるから気をつけて」
「あ………ありがとうございます。でも、私ひとりで降りれますわ」
「そうかもしれないけど、怪我をするといけない。手を出して」
「は、い」
レスト様に手を取られて、そのまま馬車の扉が開かれる。外の青空が馬車内からでもよく見える。太陽の光が眩しくて、思わず目を細めた。
レスト様は私の手を持ったまま、少しだけ考えるように止まって、そして振り返った。座椅子に座っているのはアホシュアだけだ。
「ホシュア。先程の発言は正しくないよ。俺は、リリアを素敵な女の子だと思っているから」
「な………」
「!」
後ろから絶句する声が聞こえ、レスト様が馬車からおりる。そして、私の手を軽く引っ張って、降りるように誘導する。私は少しだけ逡巡して、先程のレスト様のようにすこし振り返って、アホシュアに告げた。
「……だそうですので、ご心配は無用ですわ。ア……ホシュア様も、お幸せになってくださいましね」
にこり。上手く、笑えたかしら?
鉄仮面だと揶揄されるほどには錆び付いた表情。意図的に笑みを作るのは今も少し苦手だ。青空の差し込む元、少しでもうまく笑えていたらいい。そう思いながら微笑むと、アホシュアの絶句する顔が見えた。
(そんなに………酷かったのかしら)
アホシュアと言えど、そこまでそんな顔をされると、流石に自分の表情筋に問題を覚える。意図的に微笑むって、難しいのね………。
「え?え、えぇ。はぁ。はい」
突然対面に座るアホシュアが前髪をかきあげながら話す。というより、いつまで前髪をかきあげているのかしら。髪が抜けて馬車に落ちるから、やめてほしいのだけど。
そう思っていると、アホシュアは私の心の声が通じたのか、通じてないのか、不意に手をピタリと止めた。ちょうど、彼の指先が前髪にくい込み、少し生え際の薄くなった額が露になっている。
アホシュアのお父様も頭が少し、明るいものね………。髪質は遺伝、と言うし。私はふとこの前王城であったディーンハルト殿下のことを思い出した。あの方はすごく髪がサラサラだけれど、あれも遺伝………?
「可愛いだろう?」
「へ?えっと………はい?」
アホシュアは妙にカッコつけた顔で言った。控えめに申し上げてもはったたきたいお顔ですわ。
「僕のことが好きで好きでどうしようもないからああやって………思わせぶりな振りをして。フッ、レスト。悪かったな、僕がいいとこ取りをしてしまって」
「………」
レスト様は無視である。
窓の外ーーケイト様が降りていった方ではなく。逆側の窓を見ている。
「リリアも、僕のことがまだ好きなんだろう?ああ!大丈夫だ。隠さなくていい。ケイトには内緒だからな……」
「そろそろ降りないと、ワイ………センメトリー様が困ってしまいますね。レスト様、前を失礼いたしますね」
アホシュアの妄言に付き合っている暇もないので、私も馬車を降りることにした。アホシュアは何を勘違いしたのか、さらに喚き散らす。
「全く、お前は可愛くない女だ!!それだから僕に婚約破棄されるんだ!そんな鉄仮面、誰も抱きたいなどと思わないぞ!僕のことが好きで恥ずかしいのはわかるけど、そんなに生意気だと誰も………」
「ホシュア、口を慎んでくれないか?もうリリアは俺の婚約者だよ」
「っ………」
「………?」
アホシュアは、なぜかレスト様に言われると黙ってしまう。まるで、そういう機械仕掛けが施されているよう。固まるアホシュアに、レスト様は座椅子から立ち上がり、私の肩にそっと触れた。
「段差があるから気をつけて」
「あ………ありがとうございます。でも、私ひとりで降りれますわ」
「そうかもしれないけど、怪我をするといけない。手を出して」
「は、い」
レスト様に手を取られて、そのまま馬車の扉が開かれる。外の青空が馬車内からでもよく見える。太陽の光が眩しくて、思わず目を細めた。
レスト様は私の手を持ったまま、少しだけ考えるように止まって、そして振り返った。座椅子に座っているのはアホシュアだけだ。
「ホシュア。先程の発言は正しくないよ。俺は、リリアを素敵な女の子だと思っているから」
「な………」
「!」
後ろから絶句する声が聞こえ、レスト様が馬車からおりる。そして、私の手を軽く引っ張って、降りるように誘導する。私は少しだけ逡巡して、先程のレスト様のようにすこし振り返って、アホシュアに告げた。
「……だそうですので、ご心配は無用ですわ。ア……ホシュア様も、お幸せになってくださいましね」
にこり。上手く、笑えたかしら?
鉄仮面だと揶揄されるほどには錆び付いた表情。意図的に笑みを作るのは今も少し苦手だ。青空の差し込む元、少しでもうまく笑えていたらいい。そう思いながら微笑むと、アホシュアの絶句する顔が見えた。
(そんなに………酷かったのかしら)
アホシュアと言えど、そこまでそんな顔をされると、流石に自分の表情筋に問題を覚える。意図的に微笑むって、難しいのね………。
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