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第二章

敵性反応ケイト様

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王都を出て、エレベラの街。
王都すぐ隣にあり、ここはケイト様のお家、ブラウニー家の領内となる。ここをもっと西に行けば辺境の街、フィンハロンだ。
そして、そこが私たちの目的地でもある。

「ああもう、足が痛いわ。腰も痛い!ずっと馬車に座りっぱなしなんてありえない!もう、どうして私がはるばるフィンハロンなんてド田舎にいかなければならないの!?」

「そうまでして僕に会いたかったんだな……。気付かなくて済まなかった。母上も、ほら、えぇとああ言っていたけど、話してくれたらきっと」

「邪魔よゴミ虫!」

ケイト様の隣に座るアホシュアを蹴飛ばす勢いで扉に近づくと、ふとアホシュアの対面ーー私の横に座るレスト様を見た。虹色の交際がレスト様をじっと見て、それから妙に大仰に彼女は手を差し出した。

「………何?」

レスト様が温度のない声で答える。それに対し、ケイト様は堂々と言い放った。

「エスコートして下さらないかしら。降りれないわ」

「隣の婚約者殿に頼んだらどう?」

「ーー」

隣の婚約者、というとはアホシュアのことを指しているのだろう。すかさずアホシュアがキザったらしく自分の前髪をかきあげながら言った。

「ハハ、なんだ。ケイトも可愛いところがあるなぁ?僕に嫉妬して欲しくてそんなことを言っ」

「冗談じゃないわ!」

しかし、アホシュアが言葉を言い切る前に、ケイト様は大激怒。瞬間湯沸かし魔具もびっくりな勢いで怒りを爆発すると、そのままひとりで降りてしまった。ひとりで降りれたのね………。
そして、彼女は馬車をおりるとキッとこちらを振り返る。その世にも珍しい虹色の虹彩に見つめられて、思わず少しだけ息を飲んだ。

「…………」

そのままケイト様はふい、と顔を逸らし、歩いていってしまう。先に下車し、完全に空気と化していたワイン伯爵が慌てた様子でケイトさまについて行く。

(何だったのかしら………?気の所為?)

昔からケイト様とは折り合いが悪かった。表立って仲が悪いというわけではないけれど、会話をしていても噛み合わないというか、気を使う、というか。ケイト様とお話するといつも疲労するから、いつからか私は彼女と会話する時のテンプレート挨拶を用意するようになった。
主に使用するのは『そうですわね』、『そうかもしれませんわね』、『そういうこともございますね』の三つだ。これがあれば大抵の事は何とかなる。だけどケイト様は私のテンプレート挨拶も気に入らなかったのか、折につけて『あなたはお気楽そうでいいわね。悩みなんてなさそう』と、アホシュアと婚約真っ最中であり、いつ婚約破棄して貰えるか毎晩星に願いをかけていた私にそんなことを抜か……言ってきた。
その時から私は彼女が私に対して敵対要素を持ち合わせていると判断し、彼女が近づくと敵性反応アリ!と自分に唱えるようになったのだ。

そんな彼女と、いや、アホシュアがいることもだけれど………。フィンハロンまでの道のりは、あまりにも荷が重いわ………。
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