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第二章
変わらないアホシュア
しおりを挟む「ディーンハルト殿下、お聞き願いたい!今、僕は彼女に蹴られそうになりました!なんて野蛮な娘なのでしょう!?この娘も出禁にするべきです!この娘はリズラ家のリリアと申しまして、この僕と婚約をーー」
「リリア、久しぶり。彼との婚約が破談になり、レストと再婚約となった、というのは本当?」
「お久しゅうございます。ディーンハルト殿下。お恥ずかしながらも、ご認識の通りですわ。この度、わたくしはレスト様と婚約を結び直しました」
「そうか、それは大変だった………」
「クソッ………!リリア!お前が出しゃばるな!女は黙って後ろにいるのが基本だろう!淑女のマナーはどうした!?」
「紳士のマナーをお忘れの方が何を仰ってるいるのでしょう?ふふ」
肩をグッ!と強く押されたせいで、少したたからを踏んでしまったが、直ぐにアホシュアに向き直る。アホシュアはやっぱりアホだった。なぜか私に突撃してくるアホシュアに言うと、アホシュアは「なんだと!!」とより激昂しているようだ。それより、肩を離して欲しい。痛いのよ。そう思っていると、ディーンハルト殿下の深いため息がついてきた。
「ホシュア。きみは何も成長しないね。それでサンロー家をゆくゆくは継ぐ予定とは、あまりにもサンロー家の将来が心配になるよ」
「ご心配なく。ディーンハルト殿下……!私はディーンハルト殿下、いえ、レオンハルト殿下の御代のためにこの身を捧げる覚悟です!」
「ああ、そう。とにかく、令嬢の肩は強く掴むものじゃない。それに、僕はきみに名を呼ぶことを許可した覚えはない。お父上から諌言されなかったかい」
「は。父からは、ディーンハルト殿下および王族殿によくお仕えするようにと………」
「子が子なら、親も親か………」
「ディーンハルト殿下?」
ディーンハルト殿下の小さなひとりごとは、どうやら独自の世界を生み出してしまっているアホシュアには聞こえなかったらしい。ディーンハルト殿下は首を振って答える。彼の亜麻色の髪がパサパサと揺れる。
「とにかく、僕はね。ここがうるさくなることが許せないんだ。移動してくれないかな。ああ、リリアはそのままここに。きみには話したいことがあったんだ」
「話したいこと………でございますか?」
「少し、ね」
「リリアが残るなら!私も残る義務があります。私は元、リリアの婚約者で、これが残るなら、無作法を働かないか監視する役目が………!」
無作法は既にあなたが働いてますわよ。
無作法のビンゴ大会でもしているのかしら?だとしたら高得点が目指せるレベルに点数が高いから、さっさとこの場から消えて欲しい。
「元婚約者、というだけでもはや何の関係もございませんから、この場から消………移動していただいて全く問題ございませんわ。お父様も申しておりましたとおり、婚約は、破棄になったのです。もはや私とア…………ホシュア様の関係は皆無!全くもって何一つ、蜘蛛糸ほどの縁もございませんの。ですから、何も気になさることはございませんわ!さぁ、お行きになって」
「リリアもそう言ってる事だし、きみはもういいよ」
「く、クソ………」
恨みがましい顔でアホシュアが見てくるが、無視だ、無視だ。きっと、ディーンハルト殿下の話とやらが聞きたいだけだろう。
なおも未練がましくこちらを見るアホシュアを見送ると、ディーンハルト殿下がぼつりと呟いた。
「………ホシュアは、王城も出禁にするか?」
「それだと………。五貴族の集まりの際、王城に来られませんわ」
「はぁ………。サンロー家の跡取りがアレって、本当に大丈夫なのか。他にいないのか?サンロー家には」
「直系はァ………ホシュア様だけのようです。わたくしたち貴族は、血筋にこだわりますから。仕方の無いことかもしれませんが」
それにしたって、アホシュアなんかを当主にした日には、その日がサンロー家の終わりだと思う。
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