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第二章

アホシュアvsリリア

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「ふざっ、ふざけるな!!!僕に2度も無礼を働いて、タダで済むと思うな!!淑女どころか、暴力行為に出るなんてとんだ阿婆擦れだな!!」

貴方はお忘れかもしれないけれど、私はれっきとした五貴族の娘。その私に何度、無礼行為では収まらないほどのことをしたか、この方はきっと覚えていないのだわ。ご自分に都合のいい頭をおもちだものね。

「いいのか!?今なら僕との婚約を戻してやってもいい!!お前が泣いて頼むのならな!!」

「ご冗談を。死んでもごめんですわ」

「なんだと!?」

「おやおや、静かな庭園には不似合いな声が響いているね」

激昂したアホシュアが声を荒らげた時、不意にアホシュア以外の声が聞こえた。全く気が付かなかったけれど、どうやら庭園にはほかに人がいたらしい。恥ずかしいわ。こんなところで元婚約者と言い争ってるところを見られてしまったなんて。

「きみはサンロー家のホシュア殿かな。そしてそちらは、リズラ家のご令嬢だ」

「………!」

見れば、そこにはこの国の第二王子ディーンハルト王子殿下がいた。

(ど、どうしてこんな方がここに!いや、王城内だものね。会ってもおかしくないわ。だけどまさか、こんなところで会うことになるなんて………)

五貴族は幼い頃に王族に挨拶するので、もちろん私は彼らの顔を知っている。だけど、言葉を交わす機会はとても少ない。それは、五貴族内のパワーバランスを考え、どこの貴族が王族にいちばん近いか、いわば権力争いになりかねないので、意図的に距離を取っていた。

(そう言えば、昔ア………ホシュア様はディーンハルト殿下のお兄様、レオンハルト殿下の後をくっついてばかりで、レオンハルト殿下の威光を借りて悪さばかりしてるから、レオンハルト殿下に王宮内の出入りを禁じられたのよね)

王宮は、文字通り王族のための宮。王城とは少し離れていて、渡り廊下を通った先にある。私も一度くらいしか行ったことがないけれど、ア……ホシュア様は出禁なので行けるはずもない。
ディーンハルト殿下とア……ホシュア様の仲はと言うと。

「これはこれは!ディーンハルト殿下ァ!」

尻尾。尻尾が見えるわ………!
ア……ホシュア様はご両親に言い含められているのか知らないけれど、とにかく王族の方へとよくへりくだり、阿る。恐らく、王族の方がこれは黒!といえば黒になるし、白!といえば白という人だ。
もしこれが、相手がディーンハルト殿下やレオンハルト殿下でなければきっと、彼は上手く取り入れたのだろう。だけど。

「あれ?きみまだいたの。出禁なんじゃなかった?」

(ディーンハルト殿下はア……ホシュア様のこと、とてもお嫌いなのよね………)

それは昔追いかけ回されたレオンハルト殿下も同じ。アホシュア様はヒッと息を飲み、今にもふらつきそうになりながらも私を睨みつける。
いや、どうしてよ。
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