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第二章

バカは死んでも治らない

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「っ…………!!」

流石にリズラ家当主にいわれたら何も言えないのか、アホシュアは黙ってしまった。
そのまま沈黙が流れるかと思うと、ケイト様はため息をついて部屋を出ていこうとする。

「辺境の地なんて、ごめんよ。聖女だかなんだか知らないけど、女のお守りなんて勘弁して欲しいわ。私帰る」

「ああこら、ケイト。………申し訳ありませんね、では我々はこれで」

「ブラウニー家は役目を放棄される気か?」

ブラウニー家の当主に厳しい声をかけたのはスレラン家のご当主さまだった。つまり、レスト様のお父様。睨むようにしながら、低い声でスレラン家のご当主さまは仰るが、ブラウニー家のご当主さまには何も響かないようだ。

「まさか。役目を放棄されているというのなら、ベロニー家にまず言ってください」

「我が弟は長年の引きこもりなのです。頭数に数える方が愚かとお考え下さい」

「何!?それがベロニー家の考えだと言うのか!?貴殿には五貴族という自覚があるのか!!!」

激昂したのは、私のお父様だ。
場は散々な状況だった。ケイト様はさっさと部屋を出てしまうし、ケイト様に置いていかれる形となったアホシュアももぞもぞと落ち着かない。どうやらアホシュアはケイト様がお好きらしい。
アホシュアのお母様は、そんな息子の様子に悪鬼のごとく顔となっている。そちらもそちらで恐ろしい。

結局話し合いは当主同士で決めることとなり、当主以外は先に帰城する運びとなった。

レスト様は用があるとのことなので、私は王城の庭園で待つこととなる。

(それにしても、疲れたわ。聖女様の出現に、ケイト様たちのこと………。頭が痛くなる)

庭園のベンチに座って、色とりどりの花を見ていると、遠くから荒々しい足音が響いた。静かなこの場所にそぐわない音だったものだから、つい私もそちらを見る。

(うわぁ、アホシュアだわ…………)

「おい、リリア!!」

「敬称をつけていただいてもよろしくて?私たちはもう、婚約者ではありませんのだから」

「だからなんだって言うんだ!!いいぜ、お前が望むならお前を僕の妾にしてやる」

はぁ…………????
アホシュアはアホだバカだ愚かだと散々思っていたけれど、この言葉には呆れてモノが言えなくなってしまったわ。
アホシュアは私の目の前にたつと、ふんぞり返ってこちらを見てくる。なぜ得意げなのかしら………。やはり、アホシュアの思考回路は読めない。理解したくもないけれど。

「分かってる。お前は嫉妬しただけなんだろう?僕がケイトばかり愛するから。でも、安心しろ。僕はお前も愛してる」

「はぁ……?」

あ、しまったわ。つい声に出てしまった。貴族令嬢として相応しくない声が出てしまい、ぱっと手で口を抑えた。それを見て、何を勘違いしたのかアホシュアは得意げに続ける。

「まぁ、よく見ればお前も可愛い顔しているからな。その能面顔が気に食わないが、それには目をつぶってやろう。だから、どうだ?今ならもう一度婚約を結び直してもーー」

ガスッ!!
気がついた時には、足が勝手に前に出ていた。何センチもあるピンヒールが、ちょうどアホシュアの足に刺さったようだ。

「ッ痛ぁああああ!!何するんだ凶暴女!!お前は女じゃない!!」

アホシュアにとって女じゃないのなら、是非とも再婚約などというバカ家だ事を考えないでいただきたいわ。それに相変わらずというべきか、大袈裟すぎるのよね。悶絶するほどの痛みではないでしょう。

「あら、ごめんなさいませ。足が滑りまして」

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