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第二章
アホシュア再臨
しおりを挟むケイト様とお母様の睨み合いを制したのは、レスト様だった。レスト様に制止をかけられたケイト様はじろじろとレスト様を見たあと、わかりやすいほどに顔を逸らした。
王族の前だというのに、あまりにも礼儀に欠いている。見ている方がひやひやするほどだ。
アホシュアは変わらず、何が楽しいのかニヤニヤしている。何を考えているか分からず少し薄気味悪い。
お母様は自分も注意されたことが納得いかないのか、顔を非常に歪めていた。
場には険悪な雰囲気が漂った。
「コホン………各々、当家同士の問題は当事者同士で話し合いを進めるように。レスト・スレランの言う通り、この場は貴殿たちの話し合いの場ではない。お分かりかな、ブラウニー家、ケイト嬢。サンロー家、ホシュア殿、マダム・テラソー」
国王陛下に諌められると、ケイト様は優雅に腰を折る。全く反省の色は見られないが、国王陛下はそれ以上何も言うつもりはないようだった。マダム・テラソーと呼びかけられたお母様はギリギリと人を殺しそうな目でケイト様を見ていて、危険極まりない。アホシュアは「僕は承知しております」と何とも間の抜けた返事をしている。これが五貴族だというのだからゾッとする。
サンロー家のご当主の方は視線をあちこちにやって、落ち着きがなく、アホシュアたちの会話に介入するつもりはなさそうだ。ブラウニー家の当主はどこか余裕そうな、高みの見物と言わんばかりの顔で彼らを見ている。
「それでは本題に入る。ケビン」
「は。………既に通達を出させていただいたとおり、辺境の街・フィンハロンにて聖女様の出現を確認致しました」
ケビンと呼ばれた男の人が紙を手にしながら、その紙面に視線を落として続ける。
「聖女様が現れたのは約三百六十四年ぶりとなります。これは、なにか災厄の訪れる前兆かも知れません」
「………という訳だ。聖女様は今、フィンハロンの土地を持つデロノパ伯に保護させている。来週中には王都にお越しいただくよう手筈を整えているがーー貴殿ら五貴族に、聖女様の護衛を頼みたい」
みなが黙って聞いていると、陛下は顎髭に触れながら続ける。
「力が最も強い今代の代表者が行くのがいいのでな。不参加のベロニー家はまず無理として、ブラウニー家、サンロー家、スレラン家、リズラ家から2人選抜して欲しいと思っている」
「急で申し訳ございませんが、この後話し合いの場を設けさせていただきます。決まりましたら私、ケビンにお知らせください」
「突然の事ですまないな。だが、聖女様が現れたのも突然の事なのだ。急を要してすまないが、本日中に頼むぞ。では、我は戻る」
国王陛下はそれだけ仰ると、赤いマントを翻させて玉座を立った。そして、畏まる私たちの前を通り、水鏡の間を退室された。
陛下が退室されて、すぐにアホシュアがお母様に尋ねた。
「お母様、フィンハロンってどこですか?」
この人、この国の地図も理解してないのかしら……?一応五貴族の、しかも29歳の貴族令息とは思えない発言である。
「辺境の地ねぇ。ここよりずっと北西よ」
「辺境!?絶対行きたくありません!!」
既に辺境の地で聖女様が見つかったことは通達されていたというのに、今頃知ったのごとく叫ぶアホシュア。う、うるさい………。声が大きいわ………。
「そうだ、リリア!!お前がいけ!」
「ア………ホシュア様に指示されるいわれはありませんの」
「何だと!?僕の言うことが聞けないのか!」
アホシュアの激昂した声に、咳払いを入れたのはお父様だった。
「ホシュア殿。リリアと貴殿の婚約関係は破棄となったのだ。口を慎んでくれないか」
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